先日から実家に小鳥たちを連れて帰省していたのだが、


外の方が気持ち良いし、母が餌が飛び散るのを気にするため


父が外に出してやろう、と言って庭に鳥かごを出していた。


photo:01

私は猫やイタチが来るのではないかと反対したのだが、父がずっと見ておくから大丈夫だという。



実際、縁側のすぐ前で、父が日がな一日座っている特等席からよく見える場所に鳥かごを置き、庭で育てたベビーリーフを与えたりして、目を細めながら小鳥たちを見ていた。


父は昔から生き物が好きで、小学生の私に初めて十姉妹を与えてくれたのも父だった。

私にとってその一羽の十姉妹との出会いが、小鳥の魅力にはまるきっかけだった。


photo:02

写真では見えないが、奥が縁側で室内から鳥たちの様子はよく見える。


(最後に撮ったテンの写真。)



外は暖かいし日差しもきつくない、ちょうど良い気温なので鳥たちも気持ちよいかもしれないと思っていた。


私も交代したりして見ていたのだが二、三時間ほど経って、私は頭痛がするので薬を飲んで二階へ上がり、横になっていた。




すると突然、父が大きな声で私を呼んだ。




以下は父に聞いた話である。

父がうとうとしていると、突然ガタンッという音がした。

外に目をやると、テンのかごが倒れていて、足元に野良猫が居た。


父が駆け寄ると猫は逃げ、テンは目の前を飛んで行った。





私たちはしばらくテンを探し回ったが、どこにも居ない。



父は「とんだ大失態をしてしもうた・・・」と言葉少なだ。




今回私が実家に帰ったのは、9年近く癌の治療をしている父が最後の抗がん剤治療をするために入院する、というので心配で様子を見にきたのだった。


最後の、というのはもうこれ以上体に抗がん剤を使うことが出来ない量に達するということである。


髪の毛もすっかり抜け落ちて、影も薄くなってしまった父や、そのお世話をする母を手伝うために私は来たのだ。



二日後に入院する父を、私は責めることなど出来なかった。





テンはおそらく、身動きできずに物陰にひそんでいるのだろう。


明日も外に向けて茶太郎やキキの声を聞かせながら、もう少し探してみるつもりである。