リューバさんのキッチンへ。ロシアお正月のおもてなし料理を習う。 | ルワンダのおうちから。

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ロンドン→半年の東南アジア放浪旅→プラハ→またまた旅→ハーグ→インドネシア周遊→タシュケント→キガリ、と海外生活10年弱を終えて、2011年、東京に帰って来ました。毎日のお料理と、ぷつぷつの思いの記録。

お部屋の一角にしつらえられたコーナーには、かわいい器とサモワール。ロシアのホフロマ塗り。

つめたい北風の吹く日。迎えてくれた暖かい部屋で、差し出されたのは、スビーチェニ(Сбитень)という、はちみつとシナモン、クローブ、生姜、ローリエ、薔薇の実などを煮出した、熱い飲みもの。
はじめまして、とにっこりして、久しぶりのロシア語でおしゃべり。
これも楽しみだったんだ。


この日は、リューバさんのロシアのお正月のおもてなしお料理教室。
リューバさんには、まだ小さな赤ちゃんがいて(マリーナちゃん)、今日はなんだかご機嫌斜め。ままにだっこをしたまま、不思議そうにやってくる生徒の私たちを見ていた。


リューバさんは、もう9年日本にいらして、とてもうつくしい日本語を話す。
丁寧にレシピの説明をしてくださった後、早速お料理に。
その合間に、マリーナちゃんと、何度か目が合う。
私は実は赤ちゃんがとっても得意なのだ。
頃合いを見計らって、おいで、て腕を差し出したら、だっこに来てくれる。
甘い、赤ちゃんの匂い。
きゅんとなる。


お料理は、まずはケーキの仕込みから。
「修道院の小屋」という名前のケーキ。
ヨーグルトを入れた柔らかめの生地に、プルーンを巻いて、細長い棒状の柔らかめのクッキーのようなものをたくさん焼く。
焼きあがったら、屋根の形に積み上げて、たっぷりのサワークリーム(スメタナ)を塗るのだ。
でも日本は、サワークリームは高いでしょ、といってリューバさんは、自家製のスメタナの作り方を教えてくださる。生クリームとヨーグルト、それにケフィールの菌で、自分で発酵させるのだ。
スメタナは大好き。きっとうちでも作ってみたい。


次にとりかかったのは、私の大好きなお料理、селёдка под шубой「毛皮のコートを着たにしん」。セリョートカ(塩漬けにしん)は、本当にロシアらしい食べもの。酢漬けのにしんとも違うし、オランダの生にしん、ハーリングとも少し違う。
セリョートカとサーラ(豚肉の脂肪の塩漬け)があれば、いくらでもウォッカが飲めちゃう、ロシアらしい前菜になる。


残念ながら、東京ではあまり生にしんが手にはいらないのに、リューバさんが苦心して手に入れて、ちゃんと塩漬けのマリネのしかたも教えてくれる。それになんと、ロシア産の秘蔵のセリョートカも用意して下さっていた。


ゆでたじゃがいもの上に、丁寧に骨をとってみじん切りにしたセリョートカを重ねる。
こういうふうに、ケーキみたいにどんどんレイヤーに重ねてゆく、手の込んだお料理。
材料は、ゆでたじゃがいも、人参、セリョートカ、玉ねぎ、ビーツ(スビョークラ)。


こんな風に、それぞれの層に、マヨネーズを挟んで(にしんの段はなし)、段々に重ねてゆく。
スビョークラの赤がうつくしい。
一番上のレイヤーは、スビョークラの赤を敷き詰めて。


ロシアに出張に行った折に、何度も食べたことのあるサラダだったけれど、自分で作ってみたのは初めて。リューバさんのレシピは、マヨネーズが少なめなので、さっぱりしていて、カロリーも安心。でも、しばらく冷蔵庫で寝かせると、しっとりとマヨネーズが馴染んで、とてもおいしくなる。


これに、ハラジェッツ(холодец)という、ロシアのお正月料理の煮こごりを添えて、前菜に。
ハラジェッツは、豚足や鶏の手羽、牛肉などを8時間位煮込んで作る、手の込んだお料理。
これはあらかじめリューバさんが作っておいてくださって、作り方を丁寧に説明してくれたもの。自然のゼラチン質で、ふるふるにかたまったゼリーと、しっとりとした煮こまれたお肉、たっぷりのディルがロシアらしい香りを添えた、おいしいひとしな。
でも、豚足が怖いので、自分では作れないかもしれない・・・。


それにメインは、豚肉とプルーンの煮込み(свинина тушёная счерносливом)。トマトとプルーンで柔らかく煮込んだ豚肉が、ほろほろでとてもおいしい。
こつは、プルーンの半分はお肉と一緒に煮込んで、残りの半分は食感を残すために最後に加えること。
優しい甘さとトマトの酸味、ごはんにとても合って、これは彼もきっと気にいると思うので、作ってあげたいお料理。


お肉を煮込んでいる間に、保存食のキャベツのマリネの作り方も教えてもらう。
大きな壜に、キャベツなdの野菜とりんごを入れて、マリネ液を注いで、自然に発酵させるというもの。Living foodだよね。これもぜひ作りたい。


昔、ポーランドのお友達の家に行った時に、夏に一年分のピクルスを作っていた。
ウズベキスタンでも、トマトの煮たのや、果物のコンポートを夏の間に貯めておく。
夏のお仕事。
そんな豊かな暮らしを、垣間見たような気持ちになる。


丁寧にひとしなずつ作り方を教えてくれるリューバ先生。
テーブルセッティングも、素敵に整えてくれる。


ナプキンも、ホフロマ塗りみたいな、うつくしい色合い。
スビョークラの鮮やかな色あい、こっくりとした豚肉のプルーン煮込みの色、ピクルスの色とりどり。


いただいたワインは、グルジアのもの。
少し甘くて、懐かしいコーカサスの香り。
お食事の時間は、他の生徒さんで、ウズベキスタン旅行に行ったことがある方、ロシア語を学習中の方、ロシアやコーカサスのお料理に造詣の深い方、いろいろな方がいらして、お話をうかがうのが楽しい。


お昼寝から起きてきたマリーナちゃんも加わって、賑やかなテーブルに。
この頃には、すっかり私にも慣れてくれて、まただっこ。


お食事が済んだら、ケーキの仕上げを。


スメタナがしっとりと染みて、柔らかな口当たり。
ほんのちょっと酸味があるので、さっぱりといくらでも食べられる。
おいしいお茶もいただいて、そろそろおいとまの時間。


丁寧に教えてくださったので、時間も5時をまわって、大充実の一日に。


いつも食べるばかりだったロシア料理を、丁寧に習うことができて、とても貴重な経験だった。
それぞれの家庭で、受け継いできたお家の味を習えるこの機会は、とても素敵。
次回もまた参加したいな。