翌日、吉岡は藤倉に電話をかける。
あれから、何時間経ったかわからない。
しかし一行に出る気配がない。
仕方なく、店長のところに様子を見に行く。
店長と岸田はすでに炊き出しの準備を始めていた。
吉岡「藤倉と連絡がとれないので、店の様子を見てきます」
店長「わかった」
吉岡は藤倉の古着屋に向かった。
そこには、いつもと変わらない藤倉の店があった。
中に入ってみるが誰もいない。
「藤倉のやつ何処行ったんだ」
吉岡が心配していると、藤倉から電話がかかってきた。
藤倉「もしもし?」
吉岡「お前、どこ居るん?」
藤倉は、隣町の小学校に避難していた。
藤倉「こっちは大丈夫だから、落ち着いたらそっちに行く」
吉岡は返事をしてから電話を切った。
とりあえず声が聞けただけで安心した。
1週間後もテレビは震災の報道ばかり。
被害状況が明らかになっていくにつれ、憂鬱になる日々。
くだらないことで笑いたい。そんなことを思うようになった。
ある日、吉岡の携帯が鳴った。
画面を見るとそこにな「成沢」と表示されていた。
成沢は吉岡の専門学校時代の同級生。
吉岡が就職で悩んでいたころ、相談していた相手。そして以前、炊き出しを手伝ってくれた夫婦が経営している喫茶店に一緒に行った友人だった。
吉岡「おう」
成沢「地震、大丈夫か?」
吉岡「こっちは大丈夫。家も壊れてないし」
成沢「そうか」
吉岡「・・・久しぶりやな」
成沢「そうやな。こんなときにアレやけど、あのドラマ面白かったわ」
吉岡「あ~、アレか。そうかな?俺はあの人がいまいちやったけど」
そんな会話が数分続いた。
成沢「じゃあ、また」
吉岡「おう」
こんな会話でいいと思う。ちょっと様子を気にしつつ、関係ない話で盛り上がる。
暗い気持ちが紛れる。
変に気を使いすぎられるのも、こっちが余計に面倒くさい。
避難所に戻ろうとすると、そこに藤倉がやってきた。