創業時の資金調達で新たな潮流 | 明日を創る100人の起業家

創業時の資金調達で新たな潮流

ここ数年、シリコンバレーを初めとしたスタートアップ業界では大分一般化したそうなのですが、ベンチャー企業が資金調達をする際に、特にエンジェル投資家から資金調達を得るようなシードラウンドでは「Convertible Notes」という形態で資金調達を行っているらしいです。


「notes」自体は直訳すると中期債や手形ということになりますが、この場合は転換ローンといったところでしょうか。


転換社債(Convertible Bond)に近いですが社債という有価証券ではなく、あくまで契約の世界である貸付という形を取っています。


日本でも金融機関が転換社債や新株予約権付社債を引き受けたり、貸付とセットで新株予約権を引き受けたりするケースも出てきていますが、どうやらこのConvertible NotesはVCというよりはあくまでエンジェル投資家がエクイティ的に貸付をしているという実態のようです。


背景としては、通常エンジェル投資家が投資をする際には、投資対象となるベンチャー企業は実績も何も無い状態で、企業価値(バリュエーション)は決して高くありません。

逆に高くするとエンジェル投資家も投資する気が起きなくなってしまいます。


また、例えば創業間もないタイミングに1億円のバリュエーションで 3,000万円の投資をエンジェルから受けてしまうと、早いタイミングから30%の持分を放出しなければいけません。

さらにこの後事業が進んでベンチャーキャピタルから出資を受けようと思うと経営者の持分も大幅に希薄化してしまうし、またVCからしてみても資本政策上エンジェルインベスターのシェアがアンバランスになってしまう傾向があります。


これが結局ベンチャー企業の資金調達のネックになったり揉め事の原因になったりすることが90年代に米国で数多く起こりました。


これらの問題を回避するために利用されるようになったのが「Convertible Notes」


簡単に説明すると、例えば前回同様3,000万円をエンジェルがベンチャー企業に貸付を行い、契約上一定の条件を満たすとその貸付がとある条件に応じた転換価格で株式に転換するというスキームです。


ここで一定の条件とはSeries Aラウンドとしてのベンチャーキャピタルからの初めての出資が転換のトリガーとなり、転換価格はそのVCから出資を受けるときのバリュエーション若しくはそれよりある程度有利な条件といったところでしょう(そうでなければエンジェルの取ったリスクが報われない)。


つまり、例えば3億円のバリュエーションでベンチャーキャピタルが出資をすることになると、転換価格がそれと等価とするとエンジェルの出資分は10%となり、創業時に1億円のバリュエーションで新株発行を通じてエンジェル投資を受け入れる場合に比べると創業者の持株比率が大幅に上昇します。


ベンチャーキャピタルが投資をする時のバリュエーションは、その会社の事業の進捗度合いに左右されます。

従って、例えばバリュエーションが1.5億円にしかならなければエンジェルの持分は20%になるわけです。

起業家とエンジェルとのシェアの関係がフェアだ、というのがこのスキームが一般化したのだと思います。

貸付なので、融資先が潰れれば当然戻ってきません。

が、それは株式で出資をしても同じことですし、確かに資本政策上は非常に便利なツールだと思います。

議決権に当たるものをどういう形で確保しているのかは分かりませんが、エンジェル投資が盛んで、かつエンジェル投資家の造詣と経験値が高いアメリカでこそ発達してきたスキームであると言えるでしょう。


果たして日本でワークするのでしょうか。
もう少し研究してみたいと思います。