★213系の窓が汚い理由はキズ(傷)

JR東海の飯田線は豊橋~辰野の約195kmもある長大ローカル線だ。
全線を”通し”で営業する列車もあるが、約8時間かかる。
一気に全て乗車・撮影等する事が難しいため、3つのエリアに分ける事が出来る

◆南部=豊橋~中部天竜
◆中部=中部天竜~天竜峡
◆北部=天竜峡~辰野

飯田線名物の秘境駅集中地帯は中部。列車本数が最も少なくて、日中は2~3時間間隔となる。
2012年3月のダイヤ改正からワンマン運転を開始。中部では未実施であるが、南部と北部では313系3000番台で運用する列車は実施。JR東海の場合、列車番号に「G」が付けばワンマンなので、簡単にわかる。
一方で中部と213系5000番台で運行する列車は全て車掌乗務である。
南部や中部に行く事は多いが、北部はご無沙汰だった。

JR東海 飯田駅

↑飯田駅は長野県南部の中心都市飯田市の中心部。
JR東海の飯田支店もここにあるが、これは事務所機能だけで、飯田線の車庫機能はもっと北の伊那松島となる。

伊那バス 日野セレガ24187 飯田駅にて

↑飯田、駒ヶ根等の飯田線沿線は高速バスが多い。むしろ、こちら主体となる交通機関である。
写真に写っているのは、伊那バスの新宿行きである。

飯田線では豊橋~豊川以外TOICA等の交通系ICカードは使えない。
紙のきっぷが基本となるので、券売機で岡谷までの乗車券を買う。
飯田線では有人駅も珍しい存在で、数年前には北部のその駅を一斉に廃止して無人化。
沿線では駅で買う事自体が珍しく、飯田線に乗車したら車掌から買うか、着駅・車内精算が主体となる。

【列車番号】
219M

【時刻】
飯田9:45→岡谷12:07

【車両】
213系5000番台のH11編成


JR東海 飯田駅

↑飯田駅のホーム

JR東海 373系(F6編成)

↑373系が入れ替え作業中。10:00発の豊橋行き特急「伊那路2号」となる。
373系は「伊那路」以外にも北部の一部の普通列車にも運用されているが、辰野まで行ってしまうとダイヤ上、JR東日本の中央東線直通になってしまうため、自社管内のみの運行となっている。

JR東海 213系5000番台(H11編成)

JR東海 213系5000番台(クモハ213-5011)

JR東海 213系5000番台(クモハ213-5011)

JR東海 213系5000番台(クモハ213-5011)

↑見た感じ211系に似ているが、細かく見るとかなり違う。
ドア数は2ヶ所(前と後)しかなく、座席は転換クロスシート。車端部はロングシートとなっており、写真の黄色くなっている部分は優先座席。
213系にはワンマン設備未登載のため、整理券発行機はないが、ドアは押しボタン式の半自動で、通年それで運用。

219Mの乗務員は伊那松島まで。運輸区もここにあるため、ここで交代する事が多い。
JR東海の組織としては、東海鉄道事業本部(海鉄)の一員。海鉄の下にあるのが飯田支店で、その傘下となる。国鉄時代は静岡鉄道管理局の一員であったが、民営化後組織が変更になった。
伊那松島には車両配置がなく、単に車庫となる。
213系と313系3000番台(2両)は大垣、313系1700番台(3両)は神領と異なる。神領の車両については、中央西線での運用が皆無で、事実上の飯田線専用だ。

列車自体は岡谷行きであるが、JR東海の乗務員は会社境界である辰野で必ずJR東日本の乗務員と交代。
川岸、岡谷とたった2駅しかないので、JR東海の乗務員が”通す”方が効率良いと思うが、他社管内への「越境乗務」はいろいろと負担が大きいため、たかが2駅でも”通す”事はない。
車掌は2人乗務。1人は車内で検札、もう1人は検札に加えて運転扱い(ドア閉めの指示と放送)もあるのでかなり忙しい。ずっと動き続ける。ハードワークである。
飯田線では、ワンマン・ツーマン関係なくドアの開閉は運転士が行う。
発車の可否の最終判断は車掌の権限で、ドア閉を認めて発車して良い状況ならば、電鈴を鳴らして運転士に知らせる。

★短距離乗車が目立つ。飯田・駒ヶ根から岡谷までの”通し”は少数派

飯田から乗ったお客は意外と少ない。空席も目立つ。
飯田市内の桜町、上郷と乗車が続く。
無人駅なので、車掌から乗車券を購入するお客が多い。
山の上の高い所を通るため、見晴らしが良い。
飯田からわずか12分で着いた下市田でまとまった下車。意外と短距離利用が目立つ。
以下、このような短距離利用が目立ち、私の周りに居たお客が車掌から購入した乗車券の金額は、240円や320円等の20km未満がほとんど。

市田は長野県高森町の中心部。街の中心部として果たすべきロケーションだが、人は少なくさびしい。趣がある駅で駅長室もあったが、今や駅長が勤務している事はない。
下平でアピタ等の商業施設。出るとリンゴ畑が広がる信州らしい車窓になった。

飯田線 上片桐~伊那田島

↑上片桐~伊那田島
上片桐付近で人の動きが止まった。乗り降りするお客が極端に減少。

飯田線 伊那田島駅

↑伊那田島は高原の雰囲気で、空気がひんやりとしていた。リンゴ畑がホームの目の前にある。

飯田線 伊那本郷~飯島(オメガカーブ)

↑伊那本郷~飯島

ここからが飯田線北部の特徴が見えてくる。
それは、登り+急曲線。
オメガカーブは飯田線北部の”名物”で、「C」の字のような線形だ。
曲線半径もキツく、”きしむ”音も車輪が聞こえてくる。とてもでないが速度向上は出来るわけがなく、30~40km/hが良い所だ。

JR東海 七久保駅

↑七久保では、飯田行き210Mと交換。(写真は以前撮影したものを使用)
車両はJR東日本の211系3000番台、N331編成。車端部を除きロングシート。列車自体は長野から直通してきており、飯田まで”通す”お客は皆無だと思われるが、それでも約5時間かかるのはなかなかしんどい。

ところで、七久保発車後車掌から乗車券を購入したお客がこんな指摘をした。
「窓汚いね。洗車していないの?」とさりげなく言った。
すると車掌は、「これ汚れではないんですわ。木の枝がぶつかって出来るキズ(傷)なんですわ。洗車は昨日も一生懸命専門の部門がやったんですけど、もう取れないんですよ。窓を新しく変えるとお金がかかるのでなかなか出来ないんですよ」と答えた。

確かに窓が汚いと感じたが、細かく見るとキズが目立った。
これは他の213系でもそうだし、静岡地区の211系でも同じである。
後者については1編成だけ最近窓ガラスを新しく変えたが、編成全てを変えるとなるとかなりのコストになるのは容易に想像できる。
213系・211系は決して長くは走らないだろうから、新たな設備投資したくない本音も見えてくる。

飯田線 飯島~田切

↑飯島~田切
国道153号をオーバーパスすると田切駅。

飯田線 駒ヶ根駅

↑駒ヶ根駅では、313系(R102編成)・213系(H4編成)の車両留置が見られた。
以前は有人駅であったが、この駅も無人となった。まとまった人の動きがあるものの、駅できっぷが買えないデメリットは不便そのものだ。

大田切の駅近くには自動車教習所があり、ここに行く人が3人乗降。国道153号線と並走。この辺からが長野県宮田村になる。
次の宮田までは下り坂でスピードアップした。
宮田では544M豊橋行き(313系1700番台B153編成)と交換。
3両でお客は20人以下で、かなり少ない。
下島は丘の上にある駅で、ロードサイド店も多いため乗降が目立つ。
伊那市はやはり駅の規模が大きく、10人前後の乗降があった。
伊那北も伊那市と対をなす駅。新しいビジネスホテルが2~3軒あり、20人位の乗降があった。伊那市よりも多い。

北殿で1412M天竜峡行きと交換。313系3000番台のR101編成で、ワンマン表示が出ていた。各BOX席に2~3人が着席しており、混雑している印象。
地域差もあるだろうが、2両では混雑、3両ではガラガラと言うのが飯田線北部の輸送実態で、数年前に乗った時もこんな感じであった。

飯田線 伊那松島駅

↑伊那松島で乗務員が交代。辰野までのわずかな区間だけが交代乗務員の担当範囲となる。長野県箕輪町の中心部で、乗降も多い。

飯田線 沢~羽場

↑沢~羽場

飯田線 羽場~伊那新町

↑羽場~伊那新町

飯田線はこの区間山沿いを通る。国道153号線等の人が集まるエリアはやや離れる。それでも各駅3~4人程度の乗降が見られた。
飯田線内で見ると、混雑状況はほぼ一定で、伊那大島~七久保でやや空くが、それ以外ではコンスタントにお客がいた。
JR東日本に入った辰野でも乗降が多い。信濃川島方面行き列車は1時間以上ないため、辰野駅周辺が目的地である。

★313系1700番台にも乗る

【列車番号】
216M

【時刻】
岡谷13:35→飯田15:49

【車両】
313系1700番台のB152編成

JR東海 313系1700番台B152編成

↑岡谷からは313系1700番台にも乗る。
列車自体は松本発であるが、元々は長野発。篠ノ井線の松本~長野に入線する唯一の313系でもあった。
そもそも、長野~飯田をJRで行く人はかなり少なく、クルマか高速バスが主体。約3時間程度に対して、JRは飯田線で速度向上出来ないため、5時間程度はかかる。

JR東海 313系1700番台クモハ313-1702

↑座席は転換クロス。車端部はロングシート。ドア付近のみはボックス構造になる。
岡谷駅の配線上、スイッチバックとなるのだが、座席向きを変えずに乗っているお客が実に多かった。使い方が不明なのか?面倒なのか?理由はわからない。

辰野でJR東海に乗務員を交代。216Mでは飯田までの”通し”乗務であった。
下車が主体で乗車が少ない。あくまでも昼間、人の流れは岡谷方面が中心で、反対列車はかなり座席が埋まっていた。
伊那松島でさらに車掌が乗ってきた。
「駒ヶ根まで乗車券販売専門の車掌が車内を回る」との事。
恐らく、駒ヶ根始発の562M(15:08発)に乗務するための送り込みであろう。
しかし、途中駅から乗車のお客自体が少ないため、この車掌に声がかかる事自体が少ない。
際立った駅のみの乗車が主体で、伊那市で4~5人、下島で2人、駒ヶ根で10人程度、七久保以南で各駅で1~2人ずつの乗車が続いた。

車内の様子を見ると、車端部がロングシートになっている事自体、他の313系の転換クロス車と大きな変化はない。
もちろんドア上のLED表示機には、次駅名も表示。路線図を見ると、名古屋地区のものとなっており、飯田線や長野地区各線のそれが記されていない。不親切である。
貼りにくいとは思うが、JR東日本長野支社のそれは飯田線や中央西線も記されているので、これを貼れば解決するだろう。JR東日本のロゴさえ消せば問題ないように思うが。

午前中来た道を戻るだけであるが、改めて見てみると、キツい坂+急曲線が目立つ。カーブの先にホームが見えるほどで、その駅もカーブの途中と線形的には極めて厳しい。
この路線に速達性の高い列車はむしろ不要とも思ってしまった。
スマホのGoogleMapsを見ていると、飯田駅周辺は横一直線で静岡市の井川地区。つまり、緯度が同じ。
しかし、直線的に行く事が出来る道路はなく、険しい山間部。
近いようで遠いのが飯田線の北部なのである。



↑飯田では、豊橋行きの特急「伊那路4号」と接続が可能であった。
お客は皆無に等しかった。

JR東日本 211系3000番台N331編成飯田にて

↑午前中七久保ですれ違った、JR東日本の211系も。
行先は上諏訪であったが、ロングシートで約3時間はなかなかしんどい。
しんどいのではあるが、飯田線でJR東日本の車両に乗ってみるのも面白いと思った。時刻的にはやや厳しいが、機会があればやってみたい。