チェランガニ山系森林再生物語 | サバンナの風のブログ

チェランガニ山系森林再生物語

みなさま。


今回は「一民族の生活環境を取戻す」「国の重要な水源分水嶺の森林再生」

という一大構想の実現に着手することが出来るようになったお話です。


この挑戦を可能にして下さったのは、トヨタ自動車株式会社さんの

環境活動助成です。

トヨタ自動車株式会社さんありがとうございます。  

ケニア西部にチェランガニ・ヒルズと呼ばれる山系があります。

山系はほぼ南北に連なっています。ヒル・丘と呼ばれていますが

高さは3000m級です。

山系は大きな分水嶺になっています。

北西のツルカナ湖と南西のビクトリア湖に注ぎ込む両水系の分水嶺です。

ケニアの最も重要な水源の一つです。



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チェランガニ山系は山頂まで耕され国の水瓶分水嶺の役目を果たしかねています。

オール・マラクウェットで木を植え回り元の森に還そうとしています。



チェランガニ・ヒルズの東側にはアフリカ大地溝帯が走っています。

この地溝の帯がケリオ・バレーです。山系の東側斜面は急峻です。

標高1200mのケリオ・バレーの床まで1800mの落差で落ち込んでいます。

バレーの床すなわち谷底の幅は約10kmです。

バレーには蛇行するケリオ川が遠くツルカナ湖に向かって流れています。

チェランガニ・ヒルズからアロル川とエンボブット川が斜面を下りケリオ川

に合流しています。

地溝帯ですから向こう側にも断層崖の標高2100mのツゲン・ヒルズが

チェランガニ・ヒルズとほぼ平行して走っています。


チェランガニ・ヒルズと東側斜面、ケリオ・バレーの谷底のケリオ川までを

生活圏としてきた部族がいます。

マラクウェット人です。

乾燥サバンナのバレーの床面を灌漑するため400年の昔からマラクウェット・

トラデイショナル・ファローと呼ばれる灌漑水路を築き現在まで維持してきた

民族です。

行政区分にも民族名がつけられています。

マラクウェット・イーストとウエストの2県です。


道普請人とマラクウェットとは縁があるようです。

最初にバレー床を訪れたのは199812月です。

伝統灌漑がどのようにマネージされているのかの調査でした。

宿に着くなり近隣部族のポコットがマラクウェット人の家畜を奪うため侵入

して来ました。

守備する警官隊との間ですさまじい銃撃戦になりました。

ブッシュの中に三時間隠れて命拾いの経験をしました。

2009年にはケリオ・バレー床のアロル地区とサンバラット地区でマンゴーの

品種改善のお手伝いをしました。

スタッフの松本葉(かずは)もJICA専門家時代にはケリオ・バレーが活動の

フィールドでした。


今年、ケリオ・バレーのサンバラット地区で崖崩れが起き犠牲者が18人でました。

幸いマンゴー教室の生徒に被害者はいませんでした。チェランガニ・ヒルズから

ケリオ・バレーの床面までの斜面の木を伐りつくしてきたことに対する自然の

報復です。

水瓶の環境を守マラクウェット人が安心して暮らせるにはどうしたらよいか。

道普請人は地域の人の力を合わせ分水嶺の東側斜面の森林を再生しようと

いう構想に至りました。


分水嶺に木を植え水源の森を再生する挑戦者として3農民グループを想定

しました。

標高2400m地域を担当するは植林用の苗作りの経験を持つチェバラ・

スプリング・アンド・ウオター・プロテクション・グループです。

標高1200mのケリオ・バレーの床を担当するのは道普請人が育てたアロル・

マンゴー・グロワーズ・グループとサンバラット・マンゴー・グロワーズ・

グループの2農民グループです。


まず苗圃場を作って苗木を育てます。

木の種類は地域固有種と果樹です。

高くて寒い所にはアボガドとリンゴを加えます。

低くて暑い所にはマンゴーを加えます。

果樹も木ですから矛盾はありません。


チェバラ・グループはチェランガニ頂上から下に向かって木を植え降りる。

アロルとサンバラット・グループはケリオ・バレーの床から上に向かって

木を植え昇る作戦です。


挑戦者の経済性も考慮しました。

グループが育てる植林用の苗はマラクウェットの環境行政に買い取ってもらう。

植林作業は環境行政から下請けして賃金をもらう。

苗作りを始めてから約6か月後には農民グループの収入につながる稀有な

環境プロジェクト構想です。


一国の重要な水瓶の分水嶺の森林再生です。

壮大な構想です。壮大なことを難しく考えないところが道普請人の特徴です。

理事長木村亮教授の教えで困難事を単純に簡単にする道普請人独自の流儀を

進化させているからです。


助成決定を聞き農民グループは喜び勇んでいます。

農業省は武者震いをしています。

ケニア林野公社は嬉しがっています。

園芸作物開発公社は微笑を消せません。

辺境の地には官民挙げて取組める地域のみんなを元気にするプロジェクトが

めったに来てくれないからです。


トヨタさん再度ありがとうございます。

上の布陣をオール・マラクウェットに持ち込み最大限のチャレンジをさせて頂きます。


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腹が減っては大きな戦はできません。マラクウェット県都のカプソワールには鄙には稀なオーブン焼肉屋さんがあります。