新司法試験合格への道 ~そして、これからー司法修習編ー~

新司法試験合格への道 ~そして、これからー司法修習編ー~

新司法試験合格を目指す法科大学院修了生が綴った日記。

平成23年度新司法試験に合格しました。

現在司法修習中。

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集合修習もいよいよ終わりに近づきました。
久しぶりの更新です。

集合修習の期間は2か月です。この2か月という期間について、はじめは長いと思っていましたが、実際に司法研修所にきてみるととても短く感じます。
日々の講義が充実していることはもちろんですが、講義が16時35分には終わるので、その後は友人たちと飲みにいったり、フットサルしたり、麻雀したりと、本当に遊ぶ時間がたっぷりです。基本的に講義の内容がしっかりしているので、最低限の予習復習と講義での集中でなんとかなります。
最後の学生気分を味わう最高の場所だと感じました。寮生活というのも、友人と夜遅くまで飲んでそのまますぐ寝られるという点で最高です。
また、司法研修所の近くには大きな公園があり、休日にはそこでスポーツしたり、ベンチで読書したりと、とても気持ちよく過ごせました。ただ11月になってからは寒くて読書は無理でした・・・。A班の方が日が長くて暖かかったので、うらやましい。


さてさて、肝心の起案ですが、今日ですべての起案が帰ってきました。
刑裁、検察、刑弁、民裁、民弁の5科目を2回ずつ起案します。
うちの組では、刑事系は5段階(ABCDE)、民事系は3段階(ABC)の評価でした。

結果ですが、

刑裁 B B
検察 A A
刑弁 A A
民裁 A A
民弁 A A

でした。
刑裁だけAが取れず・・・。
刑裁が1回目Bだったので、2回目はAを取ろうと少し欲を出したら、ちょっと失敗してしまいました。欲を出すとダメですね。これは司法試験も二回試験も同じみたい。
普通のことを普通に書いていけばいいということだろうと思います。


ひょっとしたら、66期の修習予定者も見てくれているかもしれないので、集合修習までにやっておくべきことについて、ちょっとしたアドバイスを。

要件事実、刑事手続の知識に不安がある人は、実務修習中からちょくちょくやっておくといいかもしれません。集合修習は2か月ありますが、朝から夕方まではみっちり講義があり、講義後も遊びや飲み会の誘惑がありますので、あまり勉強できません(笑)。
要件事実と刑事手続の知識は、一朝一夕で身に付くものではありません。でも二回試験では必須です。A班であればいいですが、B班であればなおのことやっておくといいと思います。

反対に、要件事実、刑事手続の知識に不安がない人は、ほとんどなにもやらなくても大丈夫です。特に実務集合中の各起案でいい評価がもらえている人は、本当になにもやらなくていいと思います。二回試験に向けた勉強よりも、その先を見据えて、実務に必要な知識を読書で補っておくといいです。特に社会人経験のない人は、税金やら年金やら住宅ローンやら生命保険やらといった、実務にでたら知っているべきことを学ぶほうがよっぽど有益です。
私のオススメは、新星出版社から出ている「図解わかる」シリーズです。


残り少ない修習ですが、風邪を引かないように十分に注意していきたいと思います。



花もて語れ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)/小学館

¥570
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ビックコミックスピリッツで連載中のこの漫画。
普段、漫画をあまり読まない私ですが、スピリッツだけは長いこと購読しています(闇金ウシジマくんや、おやすみプンプンなどが好き)。

その中で、他の作品とは異彩を放つのが、本作品「花もて語れ」。

本作品のテーマは、すばり「朗読」。

「朗読?なんじゃそりゃ」と思われるかもしれませんが、これがとても奥が深い。
監修に朗読の専門家を迎え、実に中身のある作品になっています。

物語は、主人公の「ハナ」が朗読を通じて自分や他人を変えて行くというもの。
そのなかで紹介される朗読のテクニックは、朗読はしなくても読書はするという人にとっては、とても興味深いと思います。

娯楽性を追求する大衆小説を読む場合とは異なり、私小説や純文学を読む場合には、本作品で紹介されるような「読解」や「解釈」がなければ、作品を十分に楽しむことができないと思います。
本作品は、そのような私小説や純文学を取り上げ、主人公が朗読をする姿を通じて、朗読はもちろん読書の魅力を教えてくれるものです。

1~4巻で取り上げられる作品は、宮沢賢治の「やまなし」や、芥川龍之介の「トロツコ」など(特にこの2つの回は、圧巻の一言!)。
今月末に発売される5巻では、私の大好きな作家である太宰治の「黄金風景」が取り上げられています。

本作品を読むと、取り上げられた作品も手に取って読みたくなる。
そんな魅力にあふれた作品です。


作家の本棚 (アスペクト文庫)/アスペクト

¥800
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「作家の本棚」とのタイトルのとおり、作家の本棚を紹介する本です。
本棚の写真とともに、作家の好きな本、影響を受けた本、読書に対する考え方、本の買い方などが語られています。

そのコンセプトに一目惚れして購入した本書ですが、とても面白かったです。
本自体は薄く、1時間もかからず読み終えることができますが、何度読んでも新たな発見がありそうです。作家さんの本棚にある本も気になって買ってしまいそうですね。

印象に残ったのは、作家さんと言えども「積ん読」をすることもあるのだなということと、意外に漫画も読むのだなということです。

うーん、自分も読みたい本、読むべき本は腐るほどあるけど、死ぬまでに読めるのかなぁ・・・。




1.はじめに

今回も、受験生から質問されることの多い疑問を取り上げようと思います。
「答案において法律要件をいちいちあげるべきなのか」
受験生なら、一度は考えたことのあるテーマではないでしょうか。

私も、このテーマについては、試験の数ヶ月前まで悩み続けました。
予備校や学者も、このテーマについて様々な見解を提示していますが、その内容は千差万別です。
そんなテーマについて、「いち合格者」にすぎない私の見解を述べてみようという試みです。
言うまでもありませんが、ひとつの見解として捉えてください。


2.そもそも要件を示す意味は?

法律の文章は、すべて三段論法で書きます。
三段論法について、「問題提起・規範・あてはめ」と捉えている人も多いですが、これは若干不正確な捉え方です。真の意味の三段論法は、「大前提・小前提・結論」です。

大前提【AならばBである】、小前提【aはAである】、結論【よって、aならばBである】

これが三段論法です。
法律の文章=答案は、この三段論法の組み合わせで書きます。

三段論法を正確に理解すれば、なぜ「要件を示す」ことの要否が大きな議論となっているかが自ずと理解できるでしょう。
例えば表見代理の成否が問われている問題であれば、大前提【要件①・要件②・・・ならば、表見代理の効果が生ずる】をあげ、小前提【事実Pは要件①にあたり、事実Qは要件②にあたる】=あてはめを書き、結論【本件で表見代理成立】を導くというかたちになります。
すなわち、要件を示すことは、三段論法の大前提を示すことと同じなのです。

そのため、要件をきちんとあげることの重要性が議論されているのです。


3.私見

これはあくまで私の考えですが、「書いた方がベターではあるが、必須ではない」です。

やはり厳格な意味での三段論法からすれば、要件は摘示は必要であるように思います。大前提の部分ですからね。

もっとも、論文式試験では時間的制約がものすごいので、余程の思考のスピードと筆の早さがなければ、要件を全部列挙して答案を書くことは難しいと思います。

そこで、私の考えなのですが、要件が条文通りである場合には、わざわざ要件を列挙しなくてもそれほど影響はない(要件は所与の条文に現れているので、これを答案に整理しなおすことにどれほどの点数があるかは疑わしい)、その分、他の部分を厚く書くのがいいと思います。
そのかわり、あてはめのときに、「・・・だから『(条文の文言)』(○○条○項)にあたる」と書いて、「私は要件を理解していますよ」というのを暗に示すことはやっておいたほうがいいと思います。
ただ、要件が条文の文言だけではない場合には、要件をあげるべきだと思います。そうでなければ、三段論法の大前提が示されたことになりませんからね。

予備校から出されている上位合格者の再現答案をみると、要件をすべて列挙している答案が多いですが、それは単に彼らが枚数を書ける能力があるからです。その能力が自分にあるのであれば、彼らと同様にすべての要件を書いた方がベターです。

ただ、書かなくても大丈夫ではあるし、筆が遅いのであれば書かないほうがベターであることもあると思います。
そこらへんは、自分の能力の見極めが大切かなと思います。

これは、試験に対する総論的な考え方ですが、「何が求められているか」を考え抜くことが大切です。
試験委員は、条文に明記されている要件を、いちいち「①、②・・・」と列挙させることを求めているのでしょうか。

試験委員が見たい能力はなにか、試験委員が問うているポイントはどこか。
それを突き詰めれば、このテーマの自分なりの回答を導くことができると思います。


僕は君たちに武器を配りたい/講談社

¥1,890
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※以下は、本書の内容と私見の混合したものです。個人的な備忘録と考えてくださいね。


【勉強ブームは「不安解消マーケティング」の賜物。勉強すれば大丈夫なわけがない。】
いまでは、資格、スキルは多くの人が持つものになっている。そのための勉強ブームのいう勉強では、他人の差がつかず、買いたたかれる人材=コモディティになってしまう。

【インターネットによって知識獲得コスト、教育コストが激減】
他国の安い人材(アジアの大学生のネット英会話)により、従来の人材(欧米の英会話教師)が淘汰されていく。これに限らず、ネットの普及は仕事に影響を及ぼす。
たとえば、弁護士業界では、法的知識をネットで収集することができるようになり、「弁護士による」という付加価値を何に求めるかが重要。しかし逆に、ネットは新たな事業の宝庫ということは忘れてはならない。

【コモディティになるな。スペシャリティになれ。】
スペシャリティとは、唯一の人、代わりのない人という意味。資本主義の仕組みを理解して、どんな要素がコモディティとスペシャリティを分けるのかを熟知する必要がある。
現在、司法試験合格者の激増により、司法試験合格者というだけではコモディティ、すなわち買い叩かれる存在になっている。スペシャリティになるにはどうすればよいか。3~5年後を見据えた働き方が重要になってくるのではないか。

【日本にやってきた「本当の資本主義」】
これまでの社会主義的資本主義(護送船団方式)は終わった。国際化とインターネットの整備により、容赦ない資本主義がやってきた。

【これから伸びていき、多くの人が気付いていないニッチな市場に身を投じる。】
飽和状態にある市場の企業(たとえ有名企業でも)に身を投じるな。企業の成長とともに自らも利益を得よ。
弁護士業務にも言える。これから弁護士になる若手が過払金の事件を数多くこなすのは既に飽和状態の市場に参入するのと同じ。目先の小銭稼ぎに躍起になってはならない。3~5年後を見通す先見の明、そのための社会や市場の情勢を見逃してはならない。自分が新たなムーブメントを起こすつもりで。

【資本主義で儲かるのは6パターン。しかし、そのうち「トレーダー」と「エキスパート」はその価値を急速に失いつつある。】
①トレーダー・・・商品を遠くに運んで売ることができる人
②エキスパート・・・自分の専門性を高めて高いスキルによって仕事をする人
③マーケター・・・商品に付加価値を付けて市場に合わせて売ることができる人
④イノベーター・・・まったく新しい仕組みをイノベーションできる人
⑤リーダー・・・自分が起業家となりみんなをマネージしてリーダーとして行動する人
⑥インベスター(投資家)・・・投資家として市場に参加している人
インターネット社会の到来により、①は否応なく競争にさらされる。また市場が要求するエキスパート部門が目まぐるしく入れ替わる現代においては、専門スキルを身につけても時代に取り残されてしまうおそれが大きい。
もっとも、弁護士業務をみると、②のエキスパートは一定の分野では安泰だろう。過払いなどの一過性のエキスパートには上記議論があてはまるだろうが。

【顧客の需要を満たす「マーケター」】
人々の新しいライフスタイルや新たに生まれてきた潮流を見つけられる人がマーケター。かすかな動きを感じられる感度の良さと、なぜそういう動きが生じたのかを正確に推理できる分析力が大切。
ストーリーやブランドで付加価値を作り出し、他の製品との「差異」をいかに生み出すか。この「差異」がコモディティ化に対抗する手段。
弁護士業務で言えば、「なぜウチの事務所でなければいけないか」という差異。

【ユニクロ・・・マーケターの成功例】
ファッションの細分化されすぎたマーケットを「マス向け」と「それ以外」とに分けて、徹底的に前者をターゲットとした。マスが求めているものは、実は「着ていても恥ずかしくなくて、かつ安いこと」であることに気がついたのである。さらに、イメージの向上、すなわち、「安い=ダサい」から「恥ずかしくなくて安い=効率的・合理的・洗練」に変えた。これはCMからも狙いがわかる。

【弁護士におけるマーケター】
自分で仕事を作る、市場を作る、成功報酬ベースの仕事をする、たくさんの部下を自分で管理するというところに「付加価値」が生まれる。すなわち、新しいビジネスを作り出せる能力があるかどうかが大切である。そこで求められるのは、マーケティング的な能力であり、投資家としてのリスクをとれるかどうかであり、下で働く人々をリーダーとしてまとめる力があるかどうかである。
ちなみに、過払い金ブームのあとは、未払い残業手当を請求することが新たなマーケットになるであろうと言われているらしい。
ここでマーケットを考えるにも、その効率性というものには着目すべきように思う。すなわち費用対効果である。未払い残業手当請求は、過払いと同様、投下労力が極端に小さくて済み、リターンはそれほど多くなくても数をこなすことで、大きな稼ぎを得ることができる。
マーケットがあっても、そのペイがいいものかどうかは要注意である。

【イノベーター・・・起業家】
自分が働いている業界について、どんな構造でビジネスが動いており、金とモノの流れがどうなっていて、キーパーソンは誰で、何が効率化を妨げているか、徹底的に研究することが大切である。
落ち込んでいる業界にこそ、イノベーションのチャンスが眠っていると考える。その事業の根本に人間の根源的な欲求があるとすれば、問題はその欲求がなくなったことにはなく、既存の業界が提供するサービスがその欲求に応えられなくなっていることにあるからである。
「仮想敵」のいるマーケットを狙う必要がある。仮想敵のいないマーケットは需要がない。その「仮想敵」とは、イノベーションにより完全に競合することはない相手である。簡単にいえば、既存の業界のスキマ産業(ものすごくいい意味での)を狙い、主要産業に成長させるマーケットリーダーになるということか。そのためには、将来その会社を叩き潰すためにその会社に就職するというような考えも有効。そこに属することで、足りない点、勝てる点を探すことができる。

【イノベーションの発想方法・・・新結合・TTP・常識の反対】
イノベーションといっても、全くの新しいものを生み出す必要はない。既存のものを組み合わせ(「新結合」「TTP=徹底的にパクる」)、新たなニーズを掘り起こす
その業界で「常識」とされていることを書き出し、ことどとくその「反対」を検討する。

【リーダーに必要なこと】
駄馬を使いこなすマネジメント力。良馬は世の中にわずかしかいない。大半は駄馬。それをいかにやる気にさせ、働かせ、結果を出させるか。アメとムチ。
また、クレイジーであること。アホの勢いがなければ、リーダー=道を切り開くものにはなれない。
昨日「ノー」と言ったことを今日「イエス」と言える柔軟な思考。考えを目的のために変えることに抵抗がないこと。
クレイジーさがなく、リーダーに向かない人はパートナーになればいい。優れたリーダーには、優れたパートナーがいるものである。

【投資家としての生き方】
リスクがとれる範囲のハイリスク・ハイリターンを選べ。他人にリスクを任せる生き方=サラリーマンをするな。
資本家に使われるものになるな。資本家になれ。
人をいまの価値で判断しない。将来を見通して、対応することが大切。苦境にある人ほど、投資のチャンスと思え。





暑い日が続きますね。
受験生の方々は、暑さに負けずにこの夏を有効活用してくださいね。


さて、今回は「あてはめ」についてのお話です。


1.問題点の整理

いまでも、受験生の方と話していると、こういう声を聞くことが多いです。
「あてはめがうまくできないんです。」
「自分としては、常識的にあてはめをしているつもりなんだけど、周りに『無理な評価じゃない?』と言われてしまいます。」

この「無理な評価」という言葉、よく耳にしませんか。答練や模試の添削で、このような指摘をされたことはありませんか。
今回は「あてはめ」のなかでも、この「無理な評価」について考えてみたいと思います。

こういった悩みを持つ受験生の方々の話を詳しく聞くと、「無理な評価」と注意される場合には、2つのパターンがあると思います。
まず、①評価の対象とすべき事実を上手く拾いきれずに、自分の結論に都合のいい事実だけを拾ってしまうパターン。
もう1つは、②評価の対象とすべき事実は概ね拾うことができているが、そこからの評価が相場観から乖離しているパターン。

まずは、自分がどちらのパターンなのかを見極める必要があります。
どちらのパターンかによって、当然、その対策も異なるからです。


2.パターン①について

パターン①の場合は、勉強が足りていないか、意識が足りていないかのどちらかだと思います。
拾うべき事実というのは、基本書や裁判例からも読み取れるものですので、勉強をしっかりしていれば、「視点」というものは必ずや身に付くと思います。
もっとも、「視点」を持っていても、自分に不利な事実には目をつぶるという意識だと、答案で不利な事実に触れられず、結果として「無理な評価」とされてしまいます。大事なことは、「不利な事実にも目を向けて、それを含めて評価をする」ということ、また、「自分の意見は二の次で、採点者へのアピールを第一に考える」ということです。

勉強を怠らず、また意識をしっかり持てば、パターン①は必ずや脱出できます。


3.パターン②について

これはあくまでも自分のこれまでの経験ですが、②のタイプの人は、あてはめが下手というよりも、実はあてはめにかかる「規範」の理解が不足していることが多いです。

簡単な例をあげますと、窃盗罪における「占有」について、犯人の行為時に、被害者に財物(仮にかばんとする)の占有が認められるかが問題となるケースがあると思います。かばんを公園のベンチに置き忘れたとか、デパートのベンチに置き忘れたとかいうよくあるケースです。
この場合、拾うべき事実(被害者が置き忘れた場所の性質、財物の性質、置き忘れた場所と被害者の距離、置き忘れてからの時間など)については、判例を読んだり、基本書や予備校本でも学ぶことができます。
しかし、「占有」の定義、窃盗罪において「占有」が要件とされる意味、「占有」の判断基準といった、「占有」の規範についての理解があいまいですと、事実の持つ意味を適切に評価することができません。「占有」の定義を知っている、覚えているだけでは、「占有」の有無のあてはめが上手くできず、結果として無理矢理なあてはめになってしまうのです。

②のパターンに陥っている方は、無理なあてはめになる場合と、一般的な受験生と同様のあてはめができる場合とがあると思います。後者の場合は「規範」の理解もしっかりできていると思いますが、前者の場合には「規範」の理解が甘いのです。
もしそうであれば、裁判例やあてはめに特化した予備校本をいくら読んでも、それと同じような事実の問題しか対応できず、特殊な事案(司法試験はそういうのが大好きです)に対応できません。
勉強に使用する教材はなんであれ、それぞれの論点で出てくる「規範」の深い理解をすることに努めることが、あてはめで無理な評価をしないためには、遠回りなようで近道だと思います。

もし原因が規範の理解不足でなければ、あとは相場観がズレているということですので、裁判例を読み漁るしかないと思います。ただ、少ないですが私の経験上では、そのような方はいなかったです。


1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉後編 (新潮文庫)/新潮社

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「混じりけのない純粋な気持ちというのは、それはそれで危険なものです。生身の人間がそんなものを抱えて生きていくのは、並大抵のことではありません。ですからあなたはその気持ちを、気球に碇をつけるみたいにしっかりと地面につなぎ止めておく必要があります。(お金は)そのためのものです。」〈老婦人が報酬としての金銭を青豆に初めて交付したときの言葉〉

うーん・・・。仕事とボランティア、善意を考えるについて重い言葉だと思う。


「私が歩いて近づいてきたからこそ、それを目にした人々はあわてて食事を中断し、家から逃げ出していったんじゃないか。そして私がそこにいる限り、その人たちは戻ってくることができないんじゃないか。しかしそれにもかかわらず、私は小屋の中で彼らの帰りをじっと待ち続けていなくてはならない。そう考えるととても怖い。救いってものがないじゃない。」〈天吾のガールフレンドが自分の見る夢について語った言葉〉

話の筋と関係があるかはわからないけど、すごく印象的。


1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)/新潮社

¥620
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言わずと知れた村上春樹の新作の文庫版です。
読みたい本が多すぎて、ずっと読めずにいましたが、刑事裁判修習になって時間の余裕ができたため、手に取ることができました。
刑事裁判修習がヒマというわけではなくて、定時を過ぎると記録も借りられなくて帰るしかないんですよね。
さて、今回は読書と並行して、印象に残った言葉を書いていきたいと思います。


「見かけにだまされないように。現実というのは常にひとつきりです。」〈青豆を乗せたタクシーの運転手の言葉〉

普段と違うことをすると、そのあと、風景がいつもとなんとなく違って見える、でも、現実はいつもひとつだけだ、という趣旨の言葉。
なんとなく、この感覚は経験がある。自分の「気持ち」によって、見るものの意味・価値・評価が変わってきて、それが自分の「気持ち」に倍増して帰ってくる感じ。
そういうことを、この運転手が言っているのか、よくわかんないけど。


「どんなに才能に恵まれていても腹一杯飯を食えるとは限らないが、優れた勘が具わっていれば食いっぱぐれる心配はないってことだよ」〈天吾にワードプロセッサーを買わせる小松の言葉〉

才能と勘。パンのためなら、優れた才能の方が役に立つ。でも、何かを生み出せるのは、きっと才能。


温室の中の空気は温かく湿り気を持ち、植物の匂いがもったりと満ちていた。そして多くの蝶が、初めも終わりもない意識の流れを区切る束の間の句読点のように、あちこちに見え隠れしていた。〈青豆が女主人と面会した麻布の「柳屋敷」の温室についての描写〉

すごい表現。


「こわがることはない。いつものニチヨウじゃないから」〈電車の中で不安になる天吾の手を軽く握りながらふかえりが言った言葉〉

冒頭のタクシー運転手の言葉と関係あるのか。


ユートピアなんていうものは、どこの世界にも存在しない。錬金術や永久運動がどこにもないのと同じだよ。タカシマのやっていることは、私に言わせればだが、何も考えないロボットを作り出すことだ。人の頭から、自分でものを考える回線を取り外してしまう。〈共産主義的なコミューンである「タカシマ」について戎野が言った言葉〉

共産主義の失敗を見れば、そうだね。


「解釈の余地があるところには、常に政治力や利権が介入する余地が生まれる。」〈カルトが宗教法人格を取得するために政治権力を利用することについて戎野が言った言葉〉

解釈の余地があるところっていう表現がいい。なるほどなと思う。



それをお金で買いますか――市場主義の限界/早川書房

¥2,200
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「これからの『正義』の話をしよう」が大ベストセラーとなった、マイケル・サンデル教授の新刊です。「これから~」が、「正義」とは何かを考える総論的なものであったとすれば、本書は「お金で買うべきではないもの」という「市場主義の限界」があるという提言のもとで「正義」を考える各論的なものです。一般相対性理論よりも特殊相対性理論が理解しやすいように、また刑法総論よりも刑法各論のほうが飲み込みやすいように、「これから~」よりも本書のほうが理解しやすいのではないかと思います。

本書では、ラッシュアワー時の特別レーンへの割込み、代理母による妊娠代行サービス、主治医の携帯番号サービス(主治医に直通し、待たずに診察を受けられる)、議会傍聴席の確保のための行列並びなどを例にあげ、これまではお金で売買されてこなかったものについて価格を付け、それを市場に引きずり込むことが、果たして「正義」にかなっているのかを考察しています。

ベンサムの功利主義、すなわち「最大多数の最大幸福」の原理からすれば、このような市場化は「正義」といえるのでしょう。なぜなら、市場化は売り手と買い手の満足度を最大化するものであり、結果として「最大多数の最大幸福」を実現することになるからです。代理母による妊娠代行サービスを例にすれば、代理母はお金という利益を、代理母を依頼する夫婦は自分たちと血のつながった子供という利益を共に手にするわけで、両者が幸福になる妊娠代行サービスは、何ら咎められることはないことであり、「正義」であると考えられるのです。

しかし、サンデル教授は、このような功利主義の考えに反対します。このような市場化には、「不平等・不公正」、「腐敗・堕落」という2つの反論が想定できるとします。
妊娠代行サービスを例にすれば、前者の反論は次のようになります。すなわち、代理母となる女性は金銭的に困窮しており、真に自由意思に基づいて代理母となることを決定しているとはいえない可能性があることから、正義とはいえないと考えられます。
後者の反論は、妊娠代行サービスは、「妊娠」という神聖なもの、人間の尊厳を貶め、腐敗させ、それにより「妊娠」というものを堕落させることになるというのです。

サンデル教授は、後者の反論を大きく取り上げ、「『善』が傷付く」という言葉でこれを表現しています。この考えは、上記の様々な市場化の具体例を見たときに私たちが感じる、なんとなくの「違和感」を顕在化させ、我々を問題に直面させます。

近年、日本の社会に感じるのは、「みんながよければいいじゃん」というスタンスで、このような「道徳的」な問題を回避するという「思考の放棄」が多くなってきているのではないかということです。
単純な功利主義は、物事をスパッと切ることのできる鋭利さで、ともすれば魅力的な考え方です。しかし、市場主義への流入に対する我々のなんとなくの「違和感」については、功利主義では説明ができません。

我々は、損得だけで「正義」を考えることができるのか。

壮大なテーマに挑む、哲学的な内容ですが、いまの日本に必要な提言をしてくれる書籍であると思います。
今回は、単語カードを使った勉強方法について述べたいと思います。

単語カードを使った勉強方法については、過去記事の「未修者の合格への道~その3~」で少し述べましたが、メッセージにて数件「もっと詳しいやり方を知りたい」とのお声をいただきましたので、独立した記事を書くことにしました。


1.単語カードとは?

みなさんも、高校受験、大学受験において、英単語などを覚えるために「単語カード」を利用したことがあるかもしれません。
「単語カード」の基本的な使い方としては、裏面に覚えたい項目を書き、表面にそれに対応する質問を書くというものです。
例えば、刑法における「実行行為」の定義を覚えたいとします。その場合、表面には「実行行為の定義」と書きます。そして、裏面には「構成要件に該当し、法益侵害を発生させる現実的危険性を有する行為」と書きます。そして、表を見て、その質問に答えられるか、すなわち「実行行為の定義」を覚えたかどうかを確かめます。これを繰り返すことで、知識の定着を図っていくという方法です。

私が使用していた単語カードは、これです。
マルマン 単語カード (105×54mm) ニーモシネ 無地 100枚 W190 10セット/マルマン

¥2,625
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この単語カードの良さは、そのサイズです。
たとえば、何かの法律要件を覚えたいだとか、判例の規範を覚えたいと思ったときには、結構な分量の文章を裏面に書き込まなければなりません。そのため、英単語用の単語カードでは、若干小さすぎる面があります。
他方、あまりに大きい単語カードでは、電車の中など、片手しか使えないような場面での利用が困難になってしまいます。
そこで、たどり着いたちょうど良いサイズが、このマルマンの単語カードです。


2.単語カードの作成について

私は、未修者コースで法科大学院に入学したため、すべての科目で「基本科目」の授業がありました。私は、その授業と並行して、すべての科目について「単語カード」を作成していました。
すべての基本科目の授業が終わったのは、2年の前期でしたが、それまでに私は、100枚綴りのこの単語カードを20セット以上使用しています。

このように膨大な数の単語カードを使用した理由は、私がほとんどすべての科目について「初学者であったこと」にありますが、初学者についてなぜ単語カードが重要なのかという点については、後記の「4.初学者における単語カードの重要性」に譲ります。
また、単に単語カードを使用して勉強をするだけでは、「暗記」だけの勉強になってしまい、合格は遠くなってしまいます。その弊害を取り除くためには、単語カードの作成にあたって注意すべき点があるのですが、それも、後記の「5.『暗記』に終わらないための単語カードの使用方法」に譲ります。

単語カードの作成は、とにかく目についた定義、要件、規範、論理(論証とは違う)など、すべてについて行うべきです。特に初学者は、「何が大切なのか」、「何が重要なのか」、「何を覚える必要があるのか」の判断ができませんから、手当たり次第やるべきです。司法試験に何が必要で何が不必要であったかは、後になれば分かります。もちろん、単なる「作業」にしてはいけませんから、その点は注意が必要です。単語カードを作成して覚えることは、それ自体が目的ではなく、司法試験合格という目的のための手段の1つだということを常に意識し続けることが大切です。


3.単語カードの使用について

単語カードの使用方法についてです。
私は、基本科目の授業と並行して複数の科目の単語カードを作成していました。そのため、全科目を1つのリングで単語帳にまとめ、行き帰りの電車の中や、寝る前など、ちょっとした時間を見つけては読んで記憶するようにしていました。
1週目はその週に予習したことを暗記し、2週目は1週目の復習と2週目に予習したことを暗記し、3週目は1・2週目の復習と3週目に予習したことを暗記し・・・というように、何度も繰り返して単語カードを使用しました。
当然、週を重ねるにつれて分量は増えていきますが、その分、既に完全に覚えてしまったカードも多くありますので、全カードを一回しした後は、記憶ができていなかったカードと当該週のカードに絞ってまわしていました。ただ、毎週1回は全カードを一回しすべきです。一度覚えたと思ったことでも、時間が経つと忘れてしまうものですから、毎週チェックを入れることが大切です。

このようにして単語カードを使用しながら前期を過ごし、その後の長期休暇をむかえます。そこで、一度単語カードのリングを外してバラし、科目別に整理します。長期休暇は、科目別に単語カードをまわすことにしていました。これは、科目別にすることで前期の当該科目の復習が短時間に何回もできますし、週ごとに分断されていた科目の知識がまとめられ、知識同士の結びつきや関連性に気がつくことができるからです。

後期からは、また前期と同様に、単語カードの作成と暗記を行っていきます。そして後期のあとの長期休暇で、これまでの1年間の単語カードを科目別にまわします。

これを2年前期まで繰り返しますが、その頃には、ほぼすべてのカードを覚えてしまっているはずです。そうしたら、もう単語カードは要りません。
「2年後期以降も継続しなければ、覚えたことは忘れてしまうのではないか。せっかく覚えたのにもったいないのではないか。」と思われる方もいるかもしれません。しかし、司法試験合格のために覚えておくべき知識というのは、それ以後の勉強でも繰り返しでてきますので、あえて単語カードによる復習を行わなくても、その知識が低下することはありません。他方で、それ以降の勉強で出てこない知識というのは、司法試験には不要なものですから、忘れたとしてもかまいません。
実際、私は2年の後期以降は、この単語カードを一切しようしていません。それは、その勉強方法が無駄だったからではなく、その役目を果たしたからです。


4.初学者における単語カードの重要性について

初学者が法科大学院における3年間の学習で合格するためには、単語カードによる勉強方法はとても有効です。厳密に言えば、単語カードを使う必要はないのですが、同じような発想の勉強方法は必須だと思います。

単語カードによる勉強が初学者にとって重要である理由は、司法試験及び日々の勉強においては、「基礎的知識の正確な理解」が何よりも大切であるからという点にあります。
司法試験はもちろん、日々の勉強においても、直面した問題を解決するためには、思考力だけはなく、その前提となる「基礎的知識の正確な理解」が必要不可欠です。

簡単な例をあげます。刑法でよくある問題ですが、他人の身体に塩を振りかける行為が刑法208条の「暴行」にあたるかという問題に直面したとします。受験生の方は当然その判例の帰結を知識として「知っている」わけですが、ここではそれを知らないものとして考えてください。
この行為が「暴行」にあたるか、を考えるにあたっては、まず、「暴行」の正確な定義を知っていなければなりません。ここが不正確であれば、論述も不正確になるに違いありません。
そして、「暴行」の定義を知っていたとしても、その定義の中の「有形力」という概念を理解していなければ、他人の身体に塩を振りかける行為が「有形力」の行使にあたるかどうかの判断ができません。
他にも、およそ塩を身体に振りかける行為からは他人の身体を傷害することはないと考えられますが、そのような場合でも、当該行為を「暴行」といえるかという点は、暴行罪の保護法益、処罰趣旨、傷害罪との関係などから考える必要があります。
そうすると、この例題を考えるにあたっては、①「暴行」の正確な定義を知っていること、②「有形力」の概念を理解していること、③暴行罪の保護法益等を知っていること、が必要であると考えられます。これが、問題の解決のためには「基礎的知識の正確な理解」が必要だということです。決して、この論点(塩を振りかける行為は「暴行」あたるかという論点)の論証を「覚えている」ことではありません。そのような勉強方法では、発展的な問題、すなわち司法試験には対応しきれません。「基礎的知識」は、思考をするための前提だと考えてください。

さて、上記①~③のうち、①については、単語カードで確実に押えておく必要があります。①がすべての思考の出発点ですので、これを知らなければ、そもそも戦いの舞台にすら立てないことになります。そのため、①のような「基礎的知識」を完全に覚えるために、単語カードというツールは、初学者にとってとても重要なものと言えるのです。

また、③についても、現場での法解釈のために知っておくべき(記憶しておくべき)事項です。法解釈の1つの典型的な方法は、その条文の趣旨(刑法で言えば保護法益)から考えるというものです。その方法をとるために、条文の趣旨(保護法益)はできる限り覚えておくといいと思います。そのため、①だけでなく③についても、単語カードとしておくといいでしょう。

②については、5で述べる「『暗記』に終わらないための単語カードの使用方法」に関わりますので、そちらに譲ります。


5.「暗記」に終わらないための単語カードの使用方法

ここまで、単語カードを使用して「基礎的知識」を「覚える」ことを述べてきました。しかし、「覚える」だけでは、いわゆる「暗記型」の勉強となってしまいます。

司法試験において「暗記型」の勉強がいけないと言われる理由には様々なものがあると思いますが、一例をあげると、「概念を『知っている』だけで『理解』していないため、事実のあてはめができない」というものがあると思います。
そのため、単語カードを使った勉強をする際に気をつけなければいけないことは、「暗記」だけでなく「理解」をする必要があるということです。

先ほど4であげた例のうち、②「有形力」という概念の理解が必要であるというのが、ここで私が述べたいことです。
「有形力」とは何か。それを、「暴行」の定義を覚える前に、必ず考えなければならないのです。それを怠れば、まさしく「門前の小僧、習わぬ経を読む」状態になってしまいます。私の恩師は、理解の伴わない暗記を「お経」と皮肉を込めて呼んでいましたが、言い得て妙です。
「有形力」の概念が分からなければ、たとえば送風機で他人の身体に強風を当てる行為が「暴行」にあたるのか、ライトで強度の光を他人の顔に当てる行為が「暴行」にあたるかなど、いままで考えなかった未知の問題に対処できないのです。
法律の勉強で最も大切といっても過言ではないのは、この「理解」です。

私は、机で基本書を読んでカードを作成するときは、「理解」をするために、「考える時間」とすることを目指しました。一方で、電車はそれを「覚える時間」にあて、「記憶」をしようとしていました。
このように、単語カードを使った勉強はもちろん、普段の勉強も、「理解」と「記憶」を分けて考える必要があるのです。

単語カードを使用することは、「基礎的知識」を記憶するために有効なツールですが、それは「正確な理解」を前提としなければ、司法試験ではまったく使うことのできない武器にしかならないことを忘れないで欲しいと思います。

いずれにせよ、司法試験合格に必要な「基礎的知識の正確な理解」を得るために、単語カードを使用した勉強方法は効率的、かつ、効果的なものです。私は、この勉強方法を強く勧めます。

以 上