「それでは時間です これより審査員による審査を
行いますので選手は待機線まで下がってお待ちください!」
選手達が一斉に待機線まで下がると審査員がモデル達の近くへ
行き審査を開始した・・・・・・
そして審査員長の露崎瑠稀亜と副員長である妻の夕莉菜が美月の前に立った瞬間、
美月は一目見た瞬間にずっと逢いたいと思っていた本当の両親だと気付いた・・・
露崎夫婦の方も何時も夢に出現する
娘にそっくりだった為、驚いてしまった・・・・・・・
3人は何も言わずにただ見つめ合った・・・・・
お互いに通じ合う物があったのであろう、
此の家族に言葉は必要なかった・・・・・
例え 言葉にしても周りの人間に理解出来まい!
3人は同じ美容師と言う仕事を選んだ事が強い確信へと変わって行った・・・・・・
だが今は審査の途中で有る為、私語は許されない
コンテストが終了した後で連絡を取ろうとお互いに眼で合図をして頷いた。
そして審査が終わり別室で7名の審査員による話し合いが行われる事となった。
「美月 ありがとう 君のお陰で全力を尽くす事ができたよ!」
「優斗 聞いて ううん なんでもない」
「どうしたんだい 言ってご覧」
「うん 実は」
美月が本当の両親の事を話そうとした時、
美容室アグスタの店長やスタッフ達がやって来た・・・・・・
「優斗 良くやったな 優勝間違いなしだぜ!」
「オイオイ それはまだ気が早いってもんだぜ」
「そんな事はないぜ、観客達も絶賛していたからね」
「本当ですか?店長」
「ああ それに予選大会より更にスタイルの完成度が上がってるからね」
「そうよ 優勝間違いなし」
「皆 応援ありがとう 皆のサポートがあったから此処まで来れたんだ、本当にありがとう!」
その時、会場にアナウンスが流れた。
「皆様、審査が終了致しました、間も無く授賞式を始めますので
選手とモデルは会場に御集り下さい」
「それじゃぁ皆、行って来るな、美月 行こう」
「はい!」
そして暫くすると審査員達が戻ると同時に優勝トロフィーや賞状が運び込まれ
進行係が挨拶をして審査員の紹介を行い愈々授賞式が始まった。
先ず努力賞3名が発表され審査員長の露崎瑠稀亜が賞状を手渡した、
次に第3位入賞者が発表され準優勝と続き、残るは優勝のみとなり
会場は固唾を飲んで発表の瞬間を待った・・・・・
「お願いします 優斗を優勝させてください」
美月は心の中で強く願った!
「それでは関東大会優勝者を発表致します、優勝者は一条 優斗選手!」
その瞬間、店長の白岩を始めスタッフの拓也、翔太、孝史、麗華、聖美、
瑠美子、亜紀、久美、玲菜達は大喜びで歓声を送った!
そして優斗と美月の2人は抱き合って喜び一緒に壇上へ登り
審査員長の露崎瑠稀亜から優勝トロフィーと賞状を受け取った。
「優勝おめでとう!全国大会も期待していますよ」
「ありがとうございます!頑張ります」
そして露崎瑠稀亜は美月に声を掛けながらさり気無く名刺を手渡した。
「後で連絡を下さい」
「わかりました」
「優斗選手 優勝おめでとうございます
全国大会に向かって更に磨きを掛けて頑張って下さい」
パチパチパチパチパチパチパチパチ・・・・・・
「優斗 おめでとう」「優斗よくやった」「優斗カッコイイ」「優斗最高」
こうして優斗は関東大会で優勝し全国大会に向け練習を重ねた!
「優斗 お願いがあるの」
「何だい 美月 改まって?」
「実は私の両親に会って欲しいの」
「両親って お父さんが帰って来たのかい?」
「ううん あいつは私の父親じゃ無い 本当の両親に会って欲しいの」
「本当の両親?」
優斗はもしかすると美月は養子で他に両親がいるのではと早合点した。
「アァ 解った それじゃぁ今度の火曜日でどうだい?」
「ありがとう 優斗」
こうして優斗と美月は露崎瑠稀亜と妻の夕莉菜が経営するルビアージュ本店を訪れた。
美容室ルビアージュは日本全国に900店の店舗を構える日本1大きな
美容室で全店の売り上げは年間45億円にも及ぶ巨大な美容室であり
アジア大会を主催しているのもルビアージュなのである!
「オイオイ 美月 此処はルビアージュじゃないか?」
「いいから 来て」
2人は1階の受付に足を運んだ。
「すみません 錦織と申しますが露崎瑠稀亜と言う人と3時に約束しているんですけど」
美月がそう言うと受付嬢が怪訝そうな顔付で2人の様子を窺いながら
確認の為、社長室へ電話を入れた・・・・・
「露崎社長 錦織とオッシャル方が御見えですが、
はい はい 解りました、お通し致します」
電話を切った受付嬢の表情は一転し愛想笑いを浮かべながら「ご案内申し上げます」
と畏まった様子で受付から出て来ると2人をエレベーターへ案内した。
そしてエレベーターに乗ると受付嬢は30階のボタンを押した。
するとエレベーターは音も無くスーと上昇を開始し5階を過ぎた辺りから
外の景色が見える様になり 目の前に東京タワーが現れた!
「美月 凄い景色だな?」
「ねえ 優斗見て 東京タワーの向こう側に東京スカイツリ―が見えるは」
「本当だ 凄いな!」
そしてエレベーターは30秒もしないうちに30階まで上昇し停止した!
「どうぞ こちらでございます」
受付嬢の案内で赤絨毯の敷き詰められた廊下を一番奥まで進み
突きあたりの大きなドアをノックし「社長 お連れ致しました」
と声を掛けると「どうぞ!」と言う声がして受付嬢がドアを開けた!
するとそこはまるで天空の城の様に豪華な調度品が設えてあり
正面は一面大きな窓になっている為、東京の街並みが手に取る様に解る
そして何よりも真正面に鎮座する東京タワーが素晴らしかった!
「いやぁー 良く来てくれたね」
「待っていましたよ 美月さん」
「彼方達は此の前の審査員」
優斗には何がなんだか解らなかった、美月は両親に会わせると言ったのに
何故審査員に?しかも美容室ルビアージュの社長である。
「優斗君 関東大会優勝おめでとう」
「はい ありがとうございます、て言うか
どう言う事なのか俺には解らないんですけど・・・・・・」
「そうね 説明しても信じて貰えるか解らないけど、
私達でさえ 信じられないんですもの」
夕莉菜が困った顔でそう言うと 私が説明するはと美月が言った。
「皆 聞いて 私には前世の記憶があるの・・・・
私の前世での名前は怜奈、そしてお父さんが秋山 恍太、
お母さんの名前は麻都香、私達は遊園地に行った帰りに事故に遭って死んだの、
その時の事故で火傷した痣が私の肩に残っているは、多分お父さんも
お母さんも火傷した痣があるんじゃないかしら?」
露崎夫妻は美月の言葉に驚きを隠せなかった、
確かに夫妻にも火傷した痣が背中や腕に残っているのだ。
「そう その通りよ、私達も良く同じ夢を見た、
それは可愛い女の子が生まれ元気に成長して行く夢だったは・・・
その娘が美月さんにそっくりなの・・・・・
だけど どう言う訳か私達に女の子は授からなかった!
お互いに検査するも、まったく異常は無く子供が出来ない
方が不思議なくらいだと医師からも言われた・・・・・・
その後も 結婚して17年も経つのに一向に子供に恵まれず
私達は子供を作る事を諦めて一代決心の末 仕事に専念する事にした、
その甲斐あって仕事は順調で店を此処まで大きくする事が出来たの!」
黙って聞いていた優斗が呆気に取られて口を挟んだ。
「チョッと待って 今の話を整理すると美月と露崎夫妻は前世で親子だった、
本来 現世でも美月は露崎夫妻の娘として生まれて来る筈だったって事になるよね
そんな・・・そんな事があり得るのか?信じられない」
「優斗 信じられないかも知れないけど私はまだ沢山お父さんと
お母さんの癖まで知っているのよ、お父さんはコーヒーを飲む時
カップの取っ手を持たずに親指と薬指でカップを掴んで飲むの!
お母さんは何かに集中する時、必ず耳に髪の毛を掛けるわ」
「こいつは驚いた その通りだよ なあ 夕莉菜」
「ええ 本当に 驚いたは その通りよ!」
「チョッと待って 今の話が本当で前世で本当に親子だったとしても
現世では他に両親がいるんですよ、美月には!
戸籍上3人が親子だと役所が認める筈がありませんよ・・・・」
「ええ そうね 優斗さん 彼方は冷静ね 彼方の言う通り
戸籍上3人が親子だと役所が認める筈がないはね、
でも そんな事はどうでも良いのよ 私達さえ親子だと認識できれば」
「ああ 妻の言う通りだよ 私達家族が現世で出会えた事が重要なんだ」
「それじゃぁ3人は家族だと言う名乗りは上げない積り何ですか?」
優斗の言葉に3人は同時に頷いた。
「オイオイ 息までぴったり合ってるぜ、この3人、
こいつは本物かも知れないな・・・・で 是からどうするんですか?」
「どうもしないさ 私達は此の儘 たまに会って食事を楽しんだりするだけさ
ただ 何れは此のルビアージュを総べて美月に相続させるがね!」
「嘘 凄げぇー 此の会社を全部?いったい財産はどれ位あるんだろう」
「ざっと 500億と言う所だ!」
「嘘ォ~ ごっ ごっ 500億ぅ~ 凄げぇーマジカ」
「私達は本気でそう思っているよ ずっと夢にまで見た娘なんだ」
「でも 一応DNA鑑定とかした方がいいんじゃ?」
「優斗君、DNA鑑定など必要ない 我々には感じるんだよ 親子で有ると」
「お父さん お母さん!」
「美月!」
こうして3人は抱き合って喜び離れていた時間を埋めるかの様に話に夢中になった。
続く・・・・・・・