裸の会長:日経新聞 インタビュー 領空侵犯より | ☆今宵、夜のカフェテラスで

裸の会長:日経新聞 インタビュー 領空侵犯より

(今回のブログはいつもとは趣が違います。とにかく長いし、読んで
楽しい話でもないので、いつも覗いてくれている方はごめんなさい)


領空侵犯


昨日のお昼休みにサンドイッチを食べながら日本経済新聞
(平成19年11月19日朝刊)を読んできたら、トンデモナイ
記事を発見しました。思わず口に挟んだパンを落としそうに
なりましたよ。


問題の記事は「領空侵犯」というインタビューで、各界の著名人
の方に、自分の分野とは違うさまざまな問題について提言してもらい、
専門家とはひと味違う切り口で語ってもらう企画です。


19日の発表者はスポーツメーカーMIZUNOの水野会長。


まずはその記事の全文を頑張って打ち込みました。


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インタビュー 領空侵犯


『地方移住で社会を平準化』 環境対策に若者「下放」を


                   ミズノ会長 水野正人氏


-環境対策として都会から地方への若者の「下放」を提案している
そうですね。


「都心部に居住する若い人のうち半分程度を都会から地方に、郷里が
あるならばそこに帰す『下放政策』を日本でもやればよいと思います。
中国の文化大革命時の下放は都市部の知識青年を農村に強制移住させ
ました。日本ではもう少し穏健にし、三年程度の年限を区切って若者
を送り込みます。各年齢ごとで田舎にいく人の選抜は誕生日が偶数か
奇数かで決めるという手もあるでしょう」


「お盆や正月の既成ラッシュはすさまじい交通渋滞を招き、前に進め
ないクルマは高速道路で排ガスをまきちらします。一時的なピークを
乗り切るために施設の拡張投資をするのは資源の浪費。下放で田舎に
住む人が増えれば、帰省の必要な人が減り、負荷は平準化できます。
都心部の人口が減ればヒートアイランド現象も緩和します」


-国や企業はどう行動すればよいのでしょう。


「国は税制面での優遇措置を講じることです。人手不足に悩む農家を
助けたら助成金を出すといった工夫もできます。田舎暮らしになじむ
機会が増え、定着する人が出てくればしめたもの。医療機関だって
学校だって一定の人口ボリュームが必要です。ある程度の人数が
そろわないと社会は構成できません」


「ウチの会社では社員を大体三年ごとに異動させ、経験と実績を勘案
しながら三十五-四十歳で適正なポストに落ち着かせるというのが
標準的なコースです。下放もその1コマと考えればどうでしょう。
移民の国の米国は新世界にこぎ出すチャレンジ精神を受け継いでいます。
同様の効果が期待できます」


-ボーイスカウトのモットーである「備えよ常に」の精神に基づく
お考えとか。


「子供のころ参加していたボーイスカウトでは常に余裕を持って行動
するようたたき込まれ、社会人になってからも『備えよ常に』の実践
を心がけてきました。ですが最近の環境問題は残念ながらこの段階を
過ぎ、必死でやらないと手遅れになる危機的な状況に至ったと思います。
最近、中国大陸からの越境汚染で、国内で光化学スモックが発生して
いるのも心配です。


「元プロテニスプレーヤーの松岡修造さんから、北京で光化学スモック
の被害にあい試合を棄権した時の苦しさを聞いたことがあります。
ストローで呼吸しながらテニスの試合をするものだと言っていました。
そういう苦しみを次世代の子供たちには経験させたくありません」


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インタビューの後半は論理のすり替えというか、まったく関係ない
ので無視してもよかったのですが、まぁフェアに書いときました。


僕がこれを読んで最初の感想は、「正気ですか?」(ケンコバ風)

です。


まったくもって理解できません。なぜ「中高年」でも「高齢者」でも
なく「若者」が地方に下放しなければならないのか?


そして、なぜそれが環境対策に繋がるのか?


これを読むと「私(ミズノ会長)が都会に住むのに、人が多すぎて
邪魔だから、ろくに仕事もできなくて税金も払っていない若者は
田舎にでも行け」と言っているようものでしょ?


それ以前に、この方は基本中の基本が分かっていないのでは。
日本国憲法では、居住・移転の自由(22条1項)と職業選択の自由
(22条1項)がきちんと保証されています。


それとも「ニート」は公共の福祉に反しているとでもいうの?


行きたくない人を無理やり田舎へ連れて行って何をやらせるので
しょうか?強制的に人に何かをやらせて、それで根本的な問題が
解決すると思っているのでしょうか?


つくづくこの方は自分の会社の社員とかで、人に何かを「やらせる」
ことに慣れているでしょうね。


けれど、自分ではない他の人(大抵の場合、経済的・社会的な弱者)
に無理やり何かをやらせて、それで平準化する社会なんて僕はクソ
だと思うけど。


それよりまずはアンタ、自分がやれよって感じです。



あと、僕は会長のインタビューの始めの


『三年程度の年限を区切って若者を送り込みます。各年齢ごとで
田舎にいく人の選抜は誕生日が偶数か奇数かで決めるという手も
あるでしょう』


というくだりを読んですぐにある小説を連想しました。


映画にもなった「バトル・ロワイヤル」という小説です。


物語の舞台は極東の全体主義国家「大東亜共和国」

(もちろんモデルは日本)


この架空の国では、BR法という法律によって4万3千ある全国の
中学3年生のクラスから、無作為に選んだ50クラスの生徒に、
最後の一人になるまでクラス内で殺し合いをさせます。


会長が主張することって、これと同じことだってなぜわからない
のかな?


そもそもこの発言に人間的な温かみはまったくないですね。
根底には人間を人でなく物として見ている感があります。



ミズノといえば老舗のスポーツメーカーのはずです。イチローも
松井もこちらの製品のバットを愛用していると聞きました。作家の
村上春樹もミズノ製のランニングシューズを買ったと最新の著書に
書いてありました。


そんなメーカーのトップが、こんな独善的な主張をしているなんて
正直信じられません。
(ちなみに日本オリンピック委員会(JOC)の副会長でもあります)


平気で中国の文化大革命のことを引き合いに出すなんて、デリカシー
以前に常識が問われます。


こんな程度の低い発言はせめてミズノの社内新聞でやれって感じです。


けど、ミズノの広報はなぜこのインタビュー掲載を止めなかったの
ですかね。本業とは関係ない会長個人のインタビューとはいえ、
会社の看板を背負って新聞に載っているわけでしょ。


別に株価にまで影響するとは言いませんが、少なくとも僕はミズノと
いう会社の印象が大分変わりました。水野一族の会社で、社内の

風通しはあまりよくないイメージです。


そもそも、この会長さんは自分のこの主張を、ずっとあちこちで話して
きたのでしょ。なんで誰も「それはちょっと違うよ」って注意して
あげなかったの?


社内でも社外でも、この方は「裸の王様」なんだと思いました。


それとも実は僕のほうがアホで、この主張が正論だという世の中に
変貌してきているの?


ほかの方はどう考えているのか知ろうと、わざわざ日経ネットPLUSに
登録までして、今回のテーマのフォーラムを見てさらにびっくり!


なんと稲田朋美という現役の衆議院議員は、


『若者に「徴農制」を』


という主張をしているではないですか。これでニート問題も解決だって。


「正気ですか?」(ケンコバ風・二度目)


ねぇ、ホント日本は大丈夫なの? ちょっと怖くなりました。


いつかこういう方々によって、この国自体が「領空侵犯」して
バトルロワイヤル化しないように、時々は見張っておいたほうが
いいです。