
池田健三郎の公式ブログにようこそ!
いけだけんざぶろう=経済評論家、政策アナリスト、ビジネス・コンサルタント
経済や政治の難しいニュースや情報を、迅速に分析し、正確かつ誰にでも分かりやすく、丁寧に解説します。また、企業団体経営や地方創生、まちづくりに関する豊富な講演実績を有します。
現在、TokyoMXテレビ「堀潤 モーニングFLAG」の準レギュラー(月2回)出演中のほか、これまで、TBS「ひるおび!」(不定期)、TBS「朝ズバッ!」(毎週月曜日レギュラー)、YTV「情報ライブ ミヤネ屋」(毎週金曜日レギュラー)などのコメンテーターを担当しています。
他にも複数の企業団体の役員・顧問・アドバイザー等を務めるほか、数々の選挙において公開討論会の進行役を務めています。
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■池田健三郎の新刊『金融政策プロセス論~日銀の金融政策決定に政治・行政はどう関与したのか』(日本公法刊)ぜひお読みください!

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当面のわが国金融経済に係る10の論点
日銀時代の先輩からのお声がけに応じ、来日中の海外機関投資家の皆様の前で、表題のようなテーマで講演を行い、私見を披歴しました。
自民党総裁選の候補者5人が出そろったタイミングで、今後の想定される動きについても検討してみましたので是非ご一読ください。
1. 現在の経済状況は、さまざまなリスク要因に左右される中、さまざまな状況下で何が起こるのか、どのように展開するのか、考えられるシナリオは?
現下の日本経済は、当局による公式発表では「緩やかな回復基調にあるが、2025年1~3月期には一時的にマイナス成長となり、一部に弱い動きも見られる。個人消費がもたつく一方、企業の設備投資は拡大傾向を維持し、実質賃金は回復傾向。物価は落ち着きつつあり、日本銀行は2025年度後半からの政策金利引き上げを想定しているが、米国のトランプ関税の影響による外需の下振れが懸念材料」とされている。
もっとも、長期にわたるデフレからの「脱却」は未だ宣言されておらず、金融政策も超拡張的状態が継続中である。
その一方で、円安や不透明な国際情勢に起因する輸入物価上昇を受けた「物価高」が国民生活に影を落としており、政策当局としては「デフレ脱却ができないまま、物価高対策を強いられる」という複雑な状況となっている。
こうした中で、石破茂首相が退陣を表明したことから、政治の混乱が続いている。現状のわが国は「次の首相選び」が最大の関心事となり、新たなリーダーが決まるまでの間、あらゆる政策が停滞を余儀なくされる状況にある。したがって、今後の日本経済の動向は、新首相の下で政府がどのような金融経済政策の方向性を打ち出すかに依存するため、現時点では極めて先行き不透明で、予測困難な状況である。
もっとも、来月初に誰が新首相に選出されるにせよ、日本経済に横たわる次のようなリスク要因は当面変わらないとみられる。
(1)海外経済の動向と地政学リスク
米国の通商政策と世界経済の減速リスク:米国の関税引き上げなどの通商政策が、世界的な貿易摩擦を再燃させ、世界経済全体を下押しする可能性。これにより、日本の主要な輸出品である自動車や電子機器の需要が減少し、日本経済にも悪影響が及ぶ惧れ。
地政学リスクの高まり:ウクライナ情勢や中東情勢などの地政学的な混乱が深刻化すると、原油価格や天然ガス価格の高騰を招き、企業活動や家計に大きな制約を与える可能性。また、供給網の混乱も引き起こし、生産活動に悪影響を及ぼすリスク。
(2)物価と賃金の動向
物価高の継続と実質賃金の伸び悩み:原材料価格の高騰や円安の影響により、食料品やエネルギー価格が上昇し、物価高が継続。一方で、賃上げの動きは見られるものの、物価上昇に追いつかない場合、実質賃金が減少し、家計の購買力が低下する可能性。消費者の節約志向が強まると、個人消費が低迷し、景気の足枷となる。
賃金と物価の好循環の不確実性:人手不足を背景とした賃上げの動きが、企業の価格転嫁を促し、物価上昇に繋がる「賃金と物価の好循環」が期待されるものの、この好循環が十分に起こらない場合、あるいは地域や産業によって賃上げ格差が生じる場合、経済全体の成長ペースが鈍化するリスク。
(3)円安の進行
輸入コストのさらなる上昇:円安が一段と進行すると、原材料やエネルギー、食料品などの輸入コストがさらに膨らみ、企業収益を圧迫するとともに、消費者物価のさらなる上昇に繋がる懸念。これにより、家計負担が増大し、個人消費の抑制要因に。
企業間の格差拡大:円安は、輸出企業にとっては収益増の恩恵をもたらす一方、輸入に依存する企業にとってはコスト増というデメリットとなるため、円安の進行が企業間の収益格差を拡大させ、日本経済の全体的なバランスを損なう可能性。
(4)国内の構造的課題
人口減少と高齢化:日本の総人口は減少を続け、高齢化も進行。これにより労働力不足が深刻化し、経済の供給能力が制約される可能性。また、社会保障費の増加により財政が悪化し、長期的な経済成長の足枷となるリスクも。
労働生産性の停滞:人口減少による労働投入量の減少を補うためには、一人当たりの生産性を向上させる必要があるものの、日本の労働生産性は伸び悩みが続いており、改善が進まない場合、中長期的な経済成長が困難化。
2. 現在の経済状況は政治的動向に強く影響されると考えられるが、政治が経済に与える影響は何か?
今週から事実上の自民党総裁選挙がスタートしている。自民党はわが国の国会における最多数議席を要する与党であり、自民党総裁に選出されることは、議院内閣制のわが国の政治システムにおいては、国会で首相に選出される可能性が高いことを意味する(もっとも、衆議院では野党が多数を占めているため、必ずしも新たな自民党総裁が首相に選出されない可能性も排除できない)。
現状はまだ自民党内は候補者絞り込みプロセスの最終局面にあり、正式な選挙運動期間には突入していないが、概ね5名の候補者(茂木もと自民党幹事長、高市もと経済安保担当大臣、小泉農水大臣、林官房長官、小林もと経済安保担当大臣)で固まったとの報道がある。
このうち現時点において高市氏と小泉氏の2名が世論調査では有力とみられているものの、まだ不確定要素が多く、誰も確たることは言えない。今後、各候補者がどのような具体的政策を打ち出すかに注目が集まっている。
私は、石破・現首相の前任の岸田文雄・前首相が自民党総裁選に立候補した際のアドバイザーを務めたが、その時の経験から、「日本の政治リーダーは、衆議院議員任期が実質2年程度しかなく頻繁に選挙が実施される実情から、中長期の経済政策を打ち出すことが難しく、大衆迎合、すなわち低所得者層の受けを狙った短期的かつ効果の薄い“バラまき型”の給付政策を打ち出さざるを得ない」ことを目の当たりにした。
経済面からみると、自民党総裁選における最大の注目点は、財政・金融政策であり、これは「財政拡張」を声高に叫ぶか、あるいは「財政拡張は言わずに別の政策を強調する」かの二者択一に近い。
上述の有力候補者たちに当て嵌めれば、高市氏は安倍元総理のアベノミクスの継承者として「財政拡張」を主張する可能性が高い一方、加藤財務大臣(財務官僚出身)が選対本部長を務める小泉氏や、岸田前首相(「貯蓄から投資へ」の民間資金誘導策を重視していた)の流れをくむ林氏は、「財政拡張」には積極的に言及しない可能性がある。
前者は、「積極財政」と称する財政拡張を掲げ、今次の物価高局面への対策として、国民(とくに低所得者層)への給付や減税など、財政支出増により有権者の支持を得ようとするものである。この政策傾向は、後述する「アベノミクス」を継承したものであり、既に世界最悪の水準にまで悪化した、わが国の公的債務の増嵩を踏まえると、中長期的視野からは長期国債の市場消化困難化(長期金利高騰)やインフレ抑制のための利上げ困難化の要因となるなど問題の多い政策と指摘されている。
後者は、これとは逆に給付や減税といった財政収支を悪化させる手法には極力触れずに、規制緩和や重点投資分野へのテコ入れ、研究開発投資促進などの政策により、成長力を高めようと訴求するものであるが、物価高騰による生活苦に喘ぐ低所得者層のインパクトは弱くなりがちであり、総裁選の有権者の心を掴めるか否かはわからない。
いずれにせよ、各々の自民党総裁候補が、どちら寄りの政策を打ち出すかは、今週から来週にかけて次第に明らかになっていくとみられる。
3. インフレ、賃金、金利と関連した日本の資産価格の動向について、今後どのように変化していくのか?
賃金については、これまで春闘における高率のベア実現などを受け、大企業が先行する形で上昇をみてきた一方、ウェイトの高い中小零細企業への波及は限定的であった。もっとも、今年度に入り政府による最低賃金(都道府県別に決定)の上方改定も漸く実現したことから、今後は人手不足の影響とも相俟って、全般的な上昇が見込まれる。
これに加え、財政拡張による公的債務の増嵩を受けた円安と、外部環境に起因するインフレが継続すれば、理論的には日銀による利上げは不可避となるものの、上述の政治状況により日銀は直ちに大幅な政策金利の引き上げに踏み切ることは難しい。
日銀は、物価上昇が継続する限りは世論から利上げ圧力を受け続けることとなろうが、日銀自身の債務超過懸念(保有国債の下落に伴う含み損の拡大と、利上げに伴う日銀当座預金への付利負担の急増による)から、利上げ発動余地は限られるため、日銀は 様々な理由をつけて「利上げを遅らせる」術を模索せざるを得ないと思料。
以上を踏まえると、今後、十分なインフレ抑制策が機能する可能性は高くないと考えており、当面、実物資産(不動産を含む)の価格は、総じてインフレを織り込む形で上昇していかざるを得ないと見込んでいる。
4. 日本の成長牽引産業は時間の経過とともにどのように変化していくのか?
政治情勢を踏まえた産業政策の動向に左右される部分が大きいとみられることから、新たな政府の方針を見極める必要があると考えている。本来であれば、財政支出を伴わない規制政策(緩和)等による成長の後押しが求められるが、自民党総裁候補からの具体的な政策項目の提示は今後を待たなければならない。
5. 今後、日本の経済状況の変化に照らして投資対象をどのように捉えるべきか(不動産等も含めて)?
上述の通り、日銀は十分なインフレ抑制を行うことは難しいと判断されるため、今後の投資対象は日本のインフレ進行を織り込んだ形で選定されるべきであり、加えて、政治情勢に依存するとはいえ既に世界最悪水準まで肥大化した公的債務の増嵩を踏まえると、個別要因に伴う細かな振れはあるにせよ、基調的には財政・金融に対する信認低下を映じた円安継続とみるマーケット関係者が多い点にも留意すべきであろう。
6. 世界通貨システムにおいて、日本銀行はどのような役割を果たしているか?
新興国の台頭に伴うG7諸国のプレゼンス低下(GDPシェアの低下)と軌を一にする形で、世界経済に占める日本の影響は徐々に低下しているものの、その中央銀行である日銀は依然として、G7の一角を占める世界の主要な中銀の1つであることに変わりはない。
しかしながら、「インフレを抑制し、信用秩序を維持する」という世界共通ミッションを担う中央銀行としての日銀は今、極めて厳しい状況に立たされていると認識している。
すなわち、現状の日銀をみると、インフレ抑制という観点においては、その機能を発揮できていない。むしろ、日本は長期にわたるデフレの継続を映じて、財政出動と金融緩和を継続してきており、物価上昇が日本国民の生活を脅かすに至っている現状においてもなお、日銀は国債の買入による金融緩和を継続しており、インフレを助長する金融政策が実施されている。
7. 日本の歴史的経験に基づき、政治はどの分野で金融政策の実施に影響を与えるか?
日銀は法律上、政府(政治)から独立し、政策委員会を構成する9人(総裁、2名の副総裁、6人の審議委員)の合議によって金融政策を決定することとなっている。
しかし現実には、上記9名の人事は国会の議決により決定されるため、与党が衆参両院で安定多数を有していれば、与党の意思を反映した人事が決定される筋合いにあるため、政治から完全に独立した存在ではありえない。
また、日銀執行部は随時、国会の委員会等に招致され参考人として委員会で答弁に立ったり、議員からの要請に応じて個別に説明を行ったりしなければならず、日々、政治圧力に晒されていることは否定できない。
以上から、政治は日銀の金融政策に対し、国会同意人事や国会開会中の質疑等を通して、相当程度の影響力を有すると一般的には捉えられている。
また、一般的に財政政策と金融政策は「車の両輪」であるとされ、その整合性・連関性が重視される。このため、政治が財政政策をつかさどる財務省に影響を与えることがあれば、財務省から日銀に波及することは当然であり、そのルートからも政治は金融政策に影響を及ぼし得るものと解すべきである。
8. 日本銀行と財務省の協力関係はどのようなものであり、どのような示唆、経験及び教訓が得られるか?
上述の通り、財政政策と金融政策は「車の両輪」であるとされ、その整合性・連関性が重視されるため、財務省と日銀は日常的に様々なレベルにおいて緊密な情報交換・意思疎通を図っている。
このため、両者間におけるコンフリクトが表面化することはないものの、そもそも「財政は、政治を数値化したもの」である以上、政府の一角をなす財政当局(財務省)が政治圧力をもろに受けやすい傾向があることは否定しがたい。
近年においては、安倍晋三首相が2012年からアベノミクスの「三本の矢」として掲げた経済政策の3つの柱の中に、「①大胆な金融緩和」および「②機動的な財政出動」が提示された事例が記憶に新しい。この含意は、経済対策として財政出動を図ることはどの政権においても実行されてきたのに対し、金融政策と政治の関係が激変したことである。
すなわち、安倍政権以前においては、中央銀行の独立性に鑑み、「金融政策は日銀の専管事項であるから、政府としての言及は控える」との原則が貫かれていたところ、安倍政権がいとも簡単に当該原則を破棄したということであり、今日かえりみるに、これが重要な転換点となった。
財務省に対し「政府の方針に唯々諾々と従って財政規律の大幅緩和を図る」ことが要求されるのと並行して、日銀の金融政策への圧力もかつてないほどに強まり、結果的に大幅な金融緩和の実施を余儀なくされ、今日において修復不能な状態(インフレ抑制のための利上げの困難化)を招来させたことは重要な論点である。
9. 日本銀行が大量の国債を購入した後、債券市場の取引は薄らいできた。この過程において、中央銀行はどのような対策を講じて対応したか?
日本銀行が大量の国債を購入し、市場での取引が薄れると、日銀はより市場に配慮した対応を迫られる。具体的には、以下のような対策を講じてきた。
(1)指値オペの導入
大量の国債購入により、市場参加者が国債を売りにくくなり、国債の流通量が減った。これにより、日銀が目標とする長期金利を市場が形成しにくくなる状況が生じた。この問題に対応するため、日銀は「指値オペ(国債買い入れオペレーション)」を導入した。
指値オペとは、日銀があらかじめ指定した利回り(金利)で、市場から無制限に国債を買い入れる仕組みである。これにより、市場の長期金利が指定された水準を上回ることを防ぎ、金利の安定化を図った。市場の取引が細っても、このオペによって事実上、日銀が金利をコントロールできるようになった。
(2)変動指値オペの導入
さらに、特定の利回り水準で無制限に買い入れる指値オペだけでは、金利の急激な変動には対応しきれない場合がある。そこで、日銀は「変動指値オペ」も導入した。これは、特定の利回り水準での買い入れに加えて、市場の状況に応じて金利水準を柔軟に変更しながら買い入れを行うものである。これにより、市場の流動性が低い中でも、金利をより機動的に操作できるようになった。
これらの対策は、市場の機能が低下する中で、日銀が金融政策を円滑に運営するために不可欠なものだった。特に指値オペの導入は、市場の取引量が減少しても長期金利をコントロールし続けるための、新たな枠組みとなった。
10. 円はキャリートレード通貨として、大量の資本流出が発生し、金融政策の波及効果が顕著である。この現象についてはどのように見るべきか?
上述のような政治状況を踏まえると、日銀は大幅な政策金利の引き上げに踏み切ることは難しい。
金融政策の方向性としては、「物価上昇が継続する限りは、徐々に利上げを続ける」とのメッセージを発し続けざるを得ないものの、日銀自身の実質的な債務超過懸念(保有国債の下落に伴う含み損の拡大と、利上げに伴う当座預金への付利負担の急増による)から、現実の利上げ措置の発動余地は限られる。
日銀は自身の実質的な債務超過による市場の信認低下(日銀券=円の暴落)を回避しつつも、インフレ・ファイターとして利上げを辞さないポーズをとり続けるという茨の道を進むこととなろう。
以上
「保守」の政治思想とは?
参議院選挙の投開票日まであと5日となりました。
これまでの選挙戦をみていて、日本の政治家は、本当に「保守」の意味が分かっているのか、はなはだ疑問に思いましたので、以下に、ファクトチェックのAIとして一定の評価がある”Felo”(出典もかなり正確に提示してくれる)を用いた定義をご紹介しておきます。
これを読んで、いわゆる「保守」の政治家たちの主張が本物かどうか、しっかり見究めたいものでございます。
質問:
いわゆる「保守」思想について、政治学・経済学双方からみた本来の定義を、出典を明示しつつ記せ。
回答:
保守思想について、政治学と経済学の観点からその本来の定義を探ると、以下のような特徴が浮かび上がります。
・政治学的観点からの保守思想
保守主義は、伝統的な価値観、制度、社会構造の保存を重視する政治的イデオロギーです。エドマンド・バークの思想がその基盤となっており、彼は『フランス革命の省察』において、急進的な変革に対する懐疑を表明しました。バークは、社会は歴史的に形成されたものであり、急激な変化は混乱を招くと考えました。彼の見解によれば、保守主義は「人間の不完全性」を認識し、過去の経験から得た知恵を尊重することが重要です。
保守主義者は、社会の安定と秩序を重視し、急進的な改革に対しては慎重な姿勢を取ります。彼らは、伝統的な制度や慣習が長い歴史の中で試練に耐えてきた結果であると考え、これを守ることが社会全体の利益につながると信じています。
・経済学的観点からの保守思想
経済的保守主義は、政府の経済介入を最小限に抑え、自由市場の原則を重視する立場です。経済的保守主義者は、個人の自由と財産権を守ることが経済成長に不可欠であると考え、政府の役割は限られるべきだと主張します。これにより、経済の効率性と競争力が保たれるとされます。
経済的保守主義は、財政責任や市場の自由を重視し、過度な規制や政府の介入を避けることが基本的な考え方です。これにより、個人や企業が自由に活動できる環境を整えることが、経済の健全な発展につながるとされています。
・結論
保守思想は、政治学的には伝統と安定を重視し、急進的な変革に対して懐疑的な立場を取ります。一方、経済学的には自由市場と政府の介入の最小化を支持し、個人の自由と財産権を守ることが重要視されます。これらの観点から、保守主義は社会の持続可能な発展を目指す思想体系として位置づけられています。
衆院選2024 東京5区 ネット公開討論会
今夜20時半から開催予定の衆議院東京5区のネット公開討論会で討論のファシリテーターを務めます。
主催の東京青年会議所の皆さんお疲れ様です。
政党公認候補者全員に参加依頼したものの、今朝時点で前職2名が欠席と聞き驚いています。
公開討論会に出られない理由とは何でしょう?
衆院選2024 神奈川13区公開討論会
2024年10月12日(土)19時から綾瀬市オーエンス文化会館で行われた「衆院選神奈川13区公開討論会」の動画です。わたくしがコーディネーターを務めました。以下のアドレスから閲覧可能でございます。
https://www.youtube.com/watch?v=DC4gLXAdNl0

インフレ下で実質債務超過に陥った日銀は金融政策の転換を図れるのか
「足許の物価上昇は、経済回復から需要が旺盛になることで起こる『良いインフレ』ではなく、パレスチ=イスラエル戦争やロシア=ウクライナ戦争による生産・供給体制の変動等に為替円安が加わった外部要因を端緒とする『悪いインフレ』」であり、「デフレ下と同様、財政出動や金融緩和継続等により引き続き景気の下支えが必要」といった意見は引き続き根強い。
しかし筆者は、従前のような金融緩和策はいよいよ持続可能性が危ぶまれつつあると考える。
1990年代からの長きに亘るデフレに対応すべく、政府は公共投資等の財政出動を続け、その原資調達の為に発行された国債を大量に日本銀行が買入れる(いったん市場を介する形で財政法第4条に対する脱法的な)「財政ファイナンス」を実施すると共に、国債の暴落(長期金利高騰)防止の為、その無制限買入れ体制を維持してきた。
これらの金融政策の副作用として、中央銀行である日銀の信認維持に対するリスクが本格的に取り沙汰されるようになったのも昨年からである。
本年11月28日に発表された日銀の4-9月期決算によると、9月末時点の日銀の純資産は5.48兆円で、保有国債評価額は、簿価586兆8,781億円に対し、時価は国債価格下落=長期金利上昇(9月末で0.7%台)を映じて576兆3,780億円で、差し引いた「含み損」は▲10兆5,000億円(今年3月末時点の▲1,571億円から大幅に拡大)となり、これだけで純資産額を吹き飛ばし、さらに▲5兆円もの時価ベースでの実質債務超過に転落したとみられるのである。
政府・日銀は「保有国債は満期まで保有するため、会計ルール上も時価評価不要で含み損発生に伴う懸念はない」と原則論を謳うが、事はそう簡単ではない。
中央銀行とはいえ市場参加者のひとりであり一銀行である。
G7の中央銀行とて市場での取引相手が将来も資金を無条件で円滑に融通し続けてくれる保証はなく(時価ベースでの信用判定が基本の国際金融市場での信認喪失リスク)、「債務超過は計算上のものに過ぎぬ」と嘯いてはおれない。
因みに米国の中央銀行であるFRBも実質の債務超過状態にあり、「米国が大丈夫なのだから日銀も同様」との楽観論もみられるが、両者の「債務超過」は性質が全く異なる。
すなわちFRBは厳しい政府の財政規律を背景にバランスシートは小さく、金融引き締めに伴う利払い増に起因する債務超過はあくまで一時的であり、将来の短期的な通貨発行益で十分にカバーできるもの。
これに対し日銀のそれは一時的とは言えないばかりか、桁違いに肥大化したバランスシートを背景に、とても当面の通貨発行益で賄いきれるものではない。
また、国債の発行体(政府)サイドも、GDPの1.2倍超の公的債務残高水準が世界的に問題視されてきた経緯を踏まえ、将来的な格付け引下げ可能性もあり、その場合は信認低下を受けた金利上昇リスクが高まる(日銀による価格維持が困難化)。
さらに問題は資産の部の劣化懸念にとどまらない。
肥大化した日銀のバランスシートは、金利上昇時においては、負債の部(2023年9月末では銀行券120兆円[利払いなし]、当座預金が547兆円[3区分で利払いあり])に起因しての利払い負担が重くなる。
すなわち、負債の8割超を占める当座預金547兆円は、基礎残高(金利0.1%)・マクロ加算残高(同0%)・政策金利残高(同▲0.1%)の3区別からなり、金利引き上げ局面では当然、利払い支出が増える。他方で、既発行国債の利子収入は不変ゆえに差引の収支は悪化する。
今後の金利の帰趨は総合判断で決まるので、現状では確定的なことは言えないが、仮に当座預金3区部の全てで金利が1%ポイント上昇すれば、計算上、日銀収支は年間5.47兆円(547兆円の1%)悪化し、これだけで既に上記の純資産5.48兆円をほぼ帳消しにする規模となる。
以上から、日銀自身は、インフレの高進が続いて金融緩和の規模縮小や引締めへの転換が必要な事態となれば、金利上昇の煽りを受け、国債価格下落(長期金利上昇)による含み損発生と当座預金金利引き上げに伴う利払い負担増という、資産の部・負債の部両者から生ずる収支悪化(国際金融市場での信認喪失リスク)を被ることが不可避の情勢。
このため、「金融政策を転換したくてもできない」というのが日銀の本音かもしれない。
2024年の金融政策の舵取りはこれまでにない困難が伴うことは疑う余地なきところであろう。

