愛読しているブログがある。

ボケリン・ママリンの観察日記
http://asayosan.exblog.jp/i0


アタシの学生時代の友人(アッコ)が

大阪北浜でギャラリーを営みながら

認知症で84歳の実母(ママリン)との暮らしをつづっている


18歳から実家を出て自立していたアッコと専業主婦のママリン

ほとんど空白状態だった28年間の母娘関係の壁を乗り越えて

二人はギャラリーの階下で暮している




正月の2日に「アイコ(共通の友人)も来るから新年会せーへん?」と誘ってもらった

足が丈夫で徘徊癖があるママリンが、もしも、宴会途中でお散歩に出かけたくなったら

アタシが一緒に散歩に行けばイイや(どうせ正月は運動不足だし)

と思って赤ワイン片手に北浜へ出かけた


ギャラリー階下の広いワンルームをお洒落に改装したアッコの部屋には

30年振りに会うアイコちゃんとアッコの弟くんが鍋を囲んでいた

森山良子の「30年を二時間半で」ではないが

暫くの間は、22歳からの30年間の歳月をむさぼる


「一人足りないと思わない?」とアッコが云う

「あれ?!ママリンは?」

「出てってもーてん」

「!!!!!」

「タクシーに乗ったのまでは確認したんやけど」

「探さなくていいん?」

「どないして探すのよ。迷子札は持たせているから連絡待ちや」

「!!!!!!!!!!!!(絶句)」

日記には「ママリンの徘徊」の記事が日常茶飯事に登場するが

実地体験はお初なので面食らう

「暖かい服着たはるん?」と的外れな質問をするアタシ

「いつ徘徊しても良いように常時厚着させている」とアッコ(流石である)


最近は「タクシー利用」という新たな徘徊手段を開拓したママリン

行き先は此花(旧々宅)だろうか?奈良(旧宅)だろうか?

ママリンご自身の実家の下関ということも考えられる

「下関までタクシーで帰ったら・・・いったい幾らとられるのかな?」

「運転手さんが認知症やって気が付くよ」

「でも、お正月だし・・・・もしかしたらそんなお客かて居るかも」

「あるいは知っていても、カモられたりして」

「もうエエねん。下関まででも迎えに行くから。ママリンの年金やからママリンの為に使う」

鍋の味がわからなくなってくる。

心の中で「大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫」と呪文を唱えながら

赤ワインをチビチビ飲んでいると 


やっとこさ電話が鳴った!!! キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!


「天満橋警察で保護!」

「なぁ~んや近所やんかいさ」

「姉弟でお迎えに行っておいで」

アッコと弟くんが徒歩でお迎えに行っている間

原宿でスタイリストをしているアイコちゃんの武勇伝に聞き惚れる

やっと赤ワインの味がしてくる


帰って来たママリンの温顔を肴に

「親の介護」「仕事の今後」「自分の後半生」

黒一点で孤立無援の男性(アッコ弟)のこき下ろしゴッコ

ぐだぐだと女三人の楽しい宴は夜半まで続いた

ご馳走様でした。


ママリンのお散歩相手を勤められなかったので

帰りは北浜から梅田まで歩いた

お正月で日常の喧騒が嘘のようにガランとした 

ゴーストタウンの証券街から北新地

夜の街をテクテク歩く


寒かった。

「このごろ夜の徘徊が出始めた」といっていたアッコの声が耳朶に残る。


歳月は残酷だけど

各々が自分の精一杯を生きていれば きっと道は開けるさ

なーんもでけへんけど みんなそばにいるからね



時々呑もな