草木染の毛糸屋さん -251ページ目

奈良、展示会めぐり(その1)

2014年10月26日(日) 正倉院展(東館)

この時期、奈良に行ってきましたといえば、おおかたの想像どおり、正倉院展です。ちょうど観光バスが着いた時刻と重なったのか、入場制限の待ち行列は公称40分でした。人ごみのピークと重なったみたいです。中に入ってからも、今年の目玉である【鳥毛立女屏風】の前はヤマタノオロチか長崎クンチかというような、とぐろ巻き行列で、1時間くらい待ったような… なので、たった67点の展示を見るのに3時間もかかりました。【鳥毛立女屏風】のところ以外は、待たなくても、じっくり見れました。今年も、お宝満載でした。




記念絵葉書がまさしく今年の正倉院展のダイジェストだったので、だいぶ日にちはたったけれど、それを見ると、思い出すことができます。


伎楽面崑崙(コンロン)。 伎楽は音楽に合わせて舞いながら演じられる仮面劇。崑崙はインドシナやマレー半島のこと。そこからやってきた男は獣のような尖った耳、大きな歯牙、暗褐色に塗られた顔で、つぶらな瞳だけど、赤鬼のようだ。伎楽では、呉の女性に言い寄って、力士に懲らしめられる役どころとのことだが、この容貌は、平らな顔人である極東人からみた浅黒い肌と彫りの深い目鼻立ちの東南アジア人の姿でもあるのだろうと思った。



桑木げんかん。桑の木で作られた四弦の楽器。東大寺の法要に使われたらしい。丸い胴の中央に、松ノ木の下で囲碁に興じる人たちが描かれている。これを展示しているコーナーの近くにいくと、この楽器(琵琶の祖先?)の、鈍い音が流れている。


のう御礼履。聖武天皇が752年の大仏開眼の再に履いたとされている。左右は同じ形。外側は赤に染めた牛革、内側は柔らかい鹿革。つま先が反り返っている。左右に花の形をした輝石の飾りがはめ込まれている。脱げないのかな? 歩きにくそうである。

先年、ソウルに行ったとき、韓服を着て、韓流歴史劇の女性たちが履いている靴を履いて、韓屋が並ぶ一角を歩いたけれど、靴が脱げそうで、そろりそろりと歩いた。

聖武天皇も、儀式だから、そろりそろりと歩いたのかな。

鹿革は柔らかいのね。王様がトンイに贈った靴も確か鹿革、刺繍を施した鹿革だったと思う。ネイティブ・アメリカンのモカシンも鹿革だったよね。
のう御礼履を収める靴箱も赤漆の見事な作品でした。

これらをたっぷり堪能した後、鳥毛立女屏風の待ち行列に参加しました。列が進むにつれて、屏風絵が目にはいるけど、あまり見ないようにしていました。
6扇1セットのうち4扇が展示され(残り2扇は東京へ出陳中)、これは第4扇。いずれも、木下にたたずむ、頬がふっくらした天平美人が描かれていて、女性の顔と手が彩色されている。で、彩色されていないところ(衣服や木など)は、ヤマドリの羽毛などが貼ってあったとのころ。それで、鳥毛立女という名前がつけられたのね。

こういう構図とふっくら美人の絵は中国に例があるけれど、貼られていた羽毛の材料から、この屏風は日本製と見なされている。こういう風に羽毛を貼り付けるアイデアは大陸渡来なのか、日本独自なのか、どっちなんでしょう?

しかし、この屏風、羽毛があるとないとでは別物だと思うんですけど。玉虫が剥落した玉虫厨子から往時の美しさ・妖しさを想像するのが困難である以上に、これの羽毛がある状態を想像するのは難しい。絵はコピーでいいから、羽毛貼りバージョンを見てみたい。

それはそれとして、樹木などの繊細なラインと美しく残った顔を最前列で見るためだけでも、並ぶ価値があると思います。


屏風の先に、梵網経(ぼんもうきょう)が展示されている。その文字の美しいこと! はあ、ため息が出る。経の表紙絵は、現代でも通じるステキなデザインでしたよ。


これで東館はおしまい。今年一番の目玉とされていた鳥毛立女屏風を見終えたので、余裕をもって西館に向う。

小物を2点 (2014新作発表会)

今週末、清水五条のギャラリーあじきで展示するhanaさんの作品、最後に、フェアアイル模様の小物を2点紹介しましょう。


ネックウォーマー

帽子にもヘアバンドにもなります。


ローズマリーの深い灰緑に、明るいトーンの模様と暗いトーンのボーダーを編み込んでいます。うるさくなりがちなフェアアイルですが、暗いトーンが明るいトーンを引き締めて、大人の雰囲気です。


帽子




余り毛糸を上手に使って、描いたフェアアイル模様。


ABCクラフトでの【100色の毛糸展】のあと、半端毛糸を15色くらいと地色になりそうな毛糸を4色、ど~んとお渡しして、アイデアの浮かぶままに編んでもらっていました。半端毛糸を、いかにも処理しましたという風に見せずに使って、完成した小物たちです。


実は、あと2点、完成しているという連絡をもらっているのですが、ガラケーに写真を送ってもらっただけで、実物は当日のお楽しみなんです。展示会初日(8日)に写真を撮ったら、掲載しますね。

ミズヒキソウ

これも敦賀のYmちゃんからの贈りもの。


花が上からは赤く、下からは白くみえる。細い枝にぽつぽつと咲いた紅白の花がお祝いの水引を思わせるところから、ついた名前だそうです。


煮出した液は花びらの色を反映して赤っぽいけれど、「染めたら、そうは問屋がおろさないのが草木染の楽しいところ」と割り切って、でも、興味は捨てられず、アルミ媒染してみました。


やっぱ、濃い目のベージュというべきかな。濃い目になったのは、ある程度、濃い染液が取れたからなのか、そういうことは関係ないのか、わかりません。けど、この子、光の加減で、若干ピンクがかって見えることもあるのよね。だから、配色によっては、ピンクベージュっぽく使えるかもしれません。

ボレロ(2014新作発表会)

毎回しつこいとお思いのかたも多いかとは思いますが、はじめての方もいらっしゃると思うので、しつこく書きます。今週末、清水五条のギャラリーあじきで行なう展示会で展示即売します。
ボレロ。メリヤス編みとゴム編みのシンプルなデザイン。hanaさんのデザインは、ラインが美しいシンプルなデザインが多いように思います。

五分まではいかないかな、くらいの、袖ですが、これがあるとないとではだいぶ保温力が違いますし、水仕事の邪魔にもならない。さっと羽織れて、便利です。


横から見ると、ラインの美しさがよくわかります。いつものことながら、編地がきれい、はぎもきれい、始末もきれい。


こちらは、コーヒーの生豆を、中華なべで焙煎してから、挽いて、染めたもの。昨日アップしたコーヒー生豆のベストは生豆のまま。コーヒー豆どうしで、重ねて着用しても、おしゃれですね。


おなじ植物でも、染めのときに媒染を変えたり、染めに使う部位を変えたり、今回のように材料の状態を変えたりすると、ぜんぜん違う色がでます。ぜんぜん違うのですが、色あわせすると、ベストマッチなんだな、これが。違和感なくぴたっとおさまるのです。

ユーカリ

ユーカリのオレンジは人気がありますね。昨シーズンは敦賀のYmちゃんにおねだりしてど~んとダンボールにいっぱい送ってもらいましたが、とうに使い切り、地元のいろはべーかりーさんにいただいたユーカリも、100色展に出す前に、お客さまから「確保依頼」が入ってしまいました。

と、いうわけで、Ymちゃんからの宝箱の中にユーカリを見つけたときは、やった!って思いました。この鮮やかなオレンジを、ギャラリーあじきに訪れる人たちに見てもらいたいなあって思っていたので。


鮮やかなのにけばけばしくない、ユーカリさんの品格でしょうか。そして、お約束のように、必ず、ムラになります。このムラがあるから、けばくならないのかも。

ミニフリルマフラー

2014年10月のてしごとカフェ兼内覧会のときに、毛糸を選んでいったSさん。当初は鎖編みを多用した細長いマフラーを編むとおっしゃっていたのですが、やってみたら、あんまり可愛くなかったのか、予定変更してミニマフラーになりました。
紫芋と抹茶と生クリーム、みたいな、美味しそうな配色(ちゃかしてるのじゃありません、美味しそうな配色って、編むとステキなんですよ)。2枚のモチーフを輪になるようにして、そこに、フリルに編んだ反対端を通して留めるデザイン。
配色糸のバランスをわざと不均衡にすることで面白い効果を出しています。


予定外の作品になったので、毛糸が余ってしまいましたが、同色の毛糸を買い足して、こんどは3色の円形モチーフをつないで、長めのストールマフラーを編むそうです。



かのこベスト

これも、今週末のギャラリーあじきでの展示に出品します。かのこ編みのベスト。

かのこ編みのベスト自体は、たぶん、編み物の本にも載っていると思います(アイデアとしては見たことがあるので)が、なんといっても素朴で可愛い。丈はチョイ長めです。


しかし、hanaさんの真骨頂は、肩口や襟ぐりの始末にあります。小さい写真だとわかりにくいので、できれば拡大してみていただきたいのですが、すごく凝った始末をしています。三つ編みの連続模様みたいな編み目です。

hanaさんはこの始末のしかたをYoutubeで見つけたそうで、たしかドイツの女性がやっていたのを取り入れたとか。

コーヒーの生豆で染めた毛糸を使ってます。この毛糸、おそらく、2度と出ません。たまたまFhさん宅で放置されていたコーヒー生豆をいただいたので、それを染めたのですが、焙煎していないコーヒー豆自体、そうそう手に入るものじゃありませんから。

かのこ編みのでこぼこが不思議な陰影をかもし出しています。

栗の煮汁

秋になると渋皮煮を何度か作るFmさんから、今年も、栗を下茹でした汁をもらいました。渋皮煮も分けていただきました(とっても美味しかった!)。

栗の茹で汁の真赤な液を、今までは、アルミ媒染で染めていたのですが、ふと思い立って、鉄で媒染織したら、グレーっぽくなるかなというこちらの予想を簡単に裏切って、可愛い可愛い赤紫になりました。

いただいた茹で汁の残り半分で、今日、アルミ媒染をしてみたのですが、乾かすのに時間がかかって、今週末のギャラリーあじきの展示に間に合いそうもありません。媒染違いの糸を2本並べたほうがよいと思いますが、染めた毛糸はできるだけ、持っていきたいので、こちらの1本だけでブログアップします。
巨峰のアルミ媒染を思わせる淡い赤紫系。


実は、打ち合わせのために、あじき路地にお邪魔したときに、染織の話になって、あじき路地のお母さんが栗の煮汁で染める話にとても興味を示されたんです。それで、この美しい色をどうしてもお見せしたいと思って、急遽、染めた次第。


栗のイガだと、鉄媒染はグレーに染まったのですが、こちらは全然違う色。同じ樹木でも部位によって色素の反応が大きく異なるんですね。

いよいよ次の週末は、ギャラリーあじきです。

今度の週末(11月8日~9日)は、京都の五条のギャラリーあじきで展示会&ニットカフェをします。

はじめての場所で、しかも、あの【あじき路地】のギャラリーということで、どきどきとわくわくがない交ぜになった気持ちです。

ありがたいことに、あじき路地のHP に、わたしたちの展示会のお知らせを掲載してくれましたので、ご覧になってください。


覚えていらっしゃいますか?

10月のてしごとカフェ兼内覧会で【ハヤブサ珈琲】の焙煎仕立てコーヒー豆をお客さまに試飲していただいたという記事を載せました。試飲していただいたコーヒーは、あじき路地のお母さん(大家さん)の息子さんが焙煎しているもので、ギャラリーあじきで週末と祝日に販売しています。

ニットカフェでは、息子さんとお母さんのご好意により、そのコーヒーとお母さんお手製のお菓子をお出しできることになりました。

わたしたちの展示同様、こちらもご期待ください。


出会いの喜びと手づくりの喜びを、二重三重に味わえる二日間にしたいと思っています。

2014年11月の梅小路に出店しました

2014年11月1日(土)

11時くらいまで雨が断続的に降り続いていました。今年初めての梅小路でしたが、今月は京野菜フェスティバルの開催と重なって、わたしたちはいつもの場所ではなく、芝生広場の隅っこ(水族館の前)でした。芝生だから土の地面よりは大分ましだったと思うけれど、いつもの場所ならコンクリだったのにな。

(写真、ありません。準備のとき、雨だったし、そのあとはもちろん、忘れてた)


雨の中、出店準備をしていたら、ある出店者さんが「あっ、量り売りの毛糸屋さんですよね。あとで見に来ます」。ん? そういえば、見覚えがある。去年も買ってくれたアクセサリの人でした。通路を挟んで隣になった泉州から来たというアクセサリ屋さんも毛糸を仕入れにきてくれました。量り売りなので、少量ずついろんな色が揃えられるのを喜んでくれました。1年に1回か2回しか出店しないのに、覚えてくれている人がいるのは、嬉しいです。


さすが京都というか、雨にもかかわらず、午前中は観光客が思ったよりたくさん来てくれました。北海道室蘭から来たという4人組は、「関空に着いたら、あったかくて、びっくりした!」「こっち、雪降ってないし」。大騒ぎの彼女たちがそれぞれ購入した毛糸を持って立ち去るのと入れ替わりにやってきたのは福岡から来たという女性。「今朝、新幹線で来たんですけど、新大阪についたら、寒くて…」。家に帰ったら毛糸物が欲しいという北国の人と関西に着たら寒くて編み物したくなったという西国の人。日本も広いもんだ~。名古屋から来たというグループが2組。紅葉狩りには少し早いこの時期の京都でも、集客力あるんですねぇ。

海外からのお客さまもぽつぽついらっしゃいました。日本語も英語もあんまりわからないという人も。台湾から来た若い女性とは英語で話していましたが、ある毛糸を指差して「何で染めたのか?」と聞かれたときは、【赤紫蘇】って英語でなんていうんだ?と悩んでいたら、彼女がi-padを取り出して、日本語で入力してくれと言うので、赤紫蘇と入れたら、紅なんとかと変換されて、お互いに納得したのでした。2週間の予定で、日本に遊びに来たそうです。2週間いたら、紅葉も見れるかも。台湾は熱帯から亜熱帯だから、紅葉は珍しいんじゃないかな。


地元京都の人からは、百万遍はめっちゃ混むし、ここは百万遍と同じ店がでるからこっちがいいという声をちらほら聞きました。母娘が別々にわたしのブースにやってきて、各々買い物してくれて(もちろんわたしは親子だなんて知らなかった)、あとで、「えっ、お母さんも草木染の毛糸屋さんで買うたん?」「なに、あんたも?」という会話をしたというちょっと面白い話も聞きました。

2年くらい前に出店したときは、梅小路の手づくり市は地元の人が犬の散歩に通るところっていうイメージで、積極的に出店したい場所ではなかったのだけど、いつの間にかずいぶん様子が変わってきてるんですね。

出店サイドとしてはありがたい変化です。

足元が悪い中、手づくり市にお越しくださったみなさん、ありがとうございました。