20.窓、深き部屋より①
まーちゃんは、わたしが作ったキャラ、『ゆりこ』がどうにも気になるようだった。
約束どおりの、大雑把な自己紹介がおわると、まーちゃんはどうしてもゆりこと会いたそうだった。
「ほんとうのゆりこをみてみたい。」というのである。
このまま、まーちゃんとは、会いネタにもっていかず、雑談だけの関係を続けたいがどうすべきか?
ちょっと頭をひねった。
(こういうことにしてみるか…。)
と、わたしはカタカタとキーを打ちはじめた。
ゆりこ(只野) → まーちゃん(635pt) 「『会いたい』って言ってくれる人がいるの、正直にうれしい。でもね、そうできない理由があるの」
まーちゃん(600pt) → ゆりこ(只野) 「何?理由って、どうして今まで黙っていたの?僕にはいえないこと?」
ゆりこ(只野) → まーちゃん(600pt) 「うん…はなすと私のことが嫌になって、もうメールもらえないんじゃないかと思うと、それが怖くて…」
まーちゃん(565pt) → ゆりこ(只野) 「メールやめたりしないって約束するよ!だから、よかったら話して!」
ゆりこ(只野) → まーちゃん(565pt) 「実はわたし…今の医学で治るかどうかわからない病気なの…絶対安静って、病院の個室にずっと住まわされたままなんだ…」
まーちゃん(530pt) → ゆりこ(只野) 「ええ?本当だったらショックだよこの先、ずっとなの?治るみこみはないの?僕に何かできることない?」
ゆりこ(只野) → まーちゃん(530pt) 「今まで、わたしって家族の足手まといだったの…一人で身のまわりのことも完全にできないし、入院の費用もかかる…わたしなんか必要な人間じゃないんじゃないかって…」
まーちゃん(495pt) → ゆりこ(只野) 「そんなことないよ!僕には必要だよ!たぶん家族もみんな不要だなんて思ってないよ!」
ゆりこ(只野) → まーちゃん(495pt) 「ありがとう。わたしを励ますためにそう言ってくれるんだね?でもね、最近の家族はみんな冷たいの。もう誰のために生きてるのか、生きてる意味とかわからなくなってきちゃってたの…」
まーちゃん(425pt) → ゆりこ(只野) 「苦しんでいるのは自分だけじゃないとか、戦って生きてるっていってたのそういう事情があったんだね…ごめんね、そんなことも知らなかったんだね。どう言ってあげればいいのか…」
ゆりこ(只野) → まーちゃん(425pt) 「いままでどおり、わたしの話相手になってくれる?元気になったら…わたし、まーちゃんの所へ行きたい」
まーちゃん(320pt) → ゆりこ(只野) 「うん、少し涙が出てきて…二人でなおそうね!ゆりこがあきらめても、僕は決してあきらめないから…」
いい奴だ…
こうして、ゆりこは不治の病で病院でひとり静かに…
…という設定になった。