買い支えられた上昇が剥げ落ちる展開へ 国内企業の決算は本当に良いのか? | シカゴファンドの投資戦略

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外資系証券、外資系銀行で長年、辣腕ディラー、トレーダ、ファンドマネジャーとして活躍。日経225先物、オプション、e-ワラント、為替、国内外株、債券、商品先物などの動きを分析し投資を行っている。http://blog.livedoor.jp/chicago555/

19日の米株式相場は、良好な米住宅指標に支えられて8営業日続伸し、ダウ工業株30種平均は前日終値比25.96ドル高の1万8559.01ドルと、6営業日連続で史上最高値を更新した。ナスダック総合指数は19.41ポイント安の5036.37で引けた。ダウの8営業日続伸は2013年3月上旬以来、約3年4カ月ぶり。出来高は前日比1418万株増の7億5495万株。米商務省が朝方発表した6月の住宅着工件数は、季節調整後の年換算で118万9000戸と前月比4.8%増加。先行指標である住宅着工許可件数も115万3000戸と1.5%増え、米景気の堅調ぶりを裏付ける内容となった。この日発表された主要企業の4~6月期決算はまちまちだった。医薬品・健康関連用品大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は減益決算だったが、16年通期の売上高と1株当たり利益見通しの上方修正を材料に買われた。逆に、有料動画配信サービス世界最大手のネットフリックスは増収増益だったものの、会員数の伸びの鈍化が嫌気され、大きく売り込まれた。また、国際通貨基金(IMF)がこの日発表した世界経済見通しで、16、17年の世界全体の成長率が下方修正されたことが相場の重しとなった。市場では「予想を上回る強い数値が出た住宅着工件数がダウを下支えた。ただ、8営業日連続で上昇し、高値警戒感も出ている」との指摘が聞かれた。 
外国為替市場
でドルが上昇。約6週間ぶりの高 水準に上昇した。米国で発表される経済データの内容から米国の拡大が 示唆され、減速する世界各国と米国との間に差が見られた。19日公表されたIMFの世界経済見通し(WEO)によると、今年 の世界GDP成長率見通しは3.1%と、4月時点の3.2% から引き下げ、2015年と同じ水準とされた。IMFは英国とEUの当局 者の新たな貿易交渉が行き詰まれば、英国はリセッションに陥ると警告した。
IMFチーフエコノミストは米国の雇用は経済成長を示唆していると述べた。
米国債相場
は4日ぶりに上昇。企業決算が失望を誘い低成長 が続くとの懸念から、逃避資産の需要が高まった。前日に最高値を更新した株式相場がこの日は下げ、10年債利回りは 約3週間ぶり高水準から低下した。6月の米住宅着工件数は予想を上回 る伸びを示したが、5月は下方修正された。
金先物相場は続伸。銀先物は過去8カ月余りで 最長の4営業日続落となった。シティグループは銀の投資需要が今年下 期に失速する可能性があると指摘した。
原油先物市場ではWTI先物が続落し、約2カ月ぶり安値。ドルの堅 調を嫌気した。
20日に米エネルギー情報局(EIA)が発表する週間統 計では、原油の潤沢な在庫水準が示される見通し。
欧州株式相
は下落。決算シーズンが本格化する中、指標の ストックス欧州600指数は前日付けた3週間ぶり高値から反落した。鉱 業株の下げが目立った。ストックス600指数は前日比0.4%安の337.32で終了。一時は1%下 げた。欧州中央銀行(ECB)の定例政策委員会を21日に控え、この日の出来高は30日平均を33%下回った。
本日の東京株式市場は下落の展開が見込まれる。昨日の米株式市場ではS&P500種株価指数が過去最高値から下落。企業決算が強弱まちまちな内容だったことから、相場の一段の上昇 に慎重な見方が広がった。同指数はこの日、2014年以降で最も狭いレンジで推移した。相場はこのところ最高値更新が続いていたが、この日はやや向かい 風に苦しむ展開となった。ネットフリックスは契約者の伸びが期待外れ だったことを嫌気し大幅安。フィリップ・モリス・インターナショナル は利益が市場予想を下回ったことを受けて売られた。ミスクラー・ファイナンシャル・グループの国際株式担当マネジングディレクターは「相場が最高値 に達し、その後は慎重な動きとなっている」と指摘。「経済指標や企業 決算の発表は続いているが、取引環境は低調だ。英国の欧州連合 (EU)離脱が決定、また7、8月は通常商いが薄い、加えて指数が高 い水準にある状況では投資家は次の買い材料を探し求める。こうした状 況が相まって現在の環境を生み出している」と指摘した。本日の東京市場
買い材料のない中、IMFによる世界経済の減速見通し、取り立てて材料のない中での連騰の剥げ落ち、国内企業決算への警戒などから売り先行の展開が予想される。ダウの一服感に注意したほうがいい。企業業績が織り込まれつつあり一転、急落場面も想定できる。国際通貨基金(IMF)は世界経済の成長が今年は上向くとの見通しを取り下げた。英国のEU離脱決定に言及し、投資家や企業の信頼感が揺らげば 打撃はさらに深刻になりかねないと警告した。米国ではネットフリックスやフィリップ・モリス・インターナショナルの決算が市場予想を下回り、相場の一段の上昇に慎重な見方が広がった。世界情勢不安やテロなど不確実性の高まりは、投資家の不安感を呼びかねない。地政学リスクには、英国の欧州連合(EU)離脱決定も含まれる。株式市場は何ら解決していないこれらの問題を無視しているが、いつものように「その時は」あっけなく始まることを、頭の片隅に入れておいた方がよさそうだ。今月下旬から始める国内2016年4-6月期(1Q)の決算発表に関して、想定為替レートを円相場より円安水準で設定している企業が多いため、「為替ののりしろ」が期待できない中で迎える決算発表となると指摘されている。 例年であれば余程のことがない限り1Qから通期見通しを見直すことはないが、場合によっては想定為替レートの見直しと同時に業績予想を下方修正する企業が出てくる可能性は否定できないとしている。日本格付研究所(JCR)は19日、「シングルAマイナス」としているソフトバンクグループの長期発行体格付けを「クレジット・モニター」に指定し、格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げたと発表した。証券会社の決算はボロボロだ。岩井コスモホールディングスは19日、2016年4~6月期の連結純利益が前年同期比55%減の6億1400万円だったと発表した。株式相場が低迷し、個人の株取引が減少。手数料収入が落ち込んだ。一般事業会社の売上高に相当する営業収益は28%減の38億円だった。中小では、藍沢の4~6月期、純利益80%減となった。藍沢証券は19日、2016年4~6月期の連結純利益が前年同期比80%減の1億6600万円になったと発表した。株式相場の変動が激しく、期間中は模様眺めムードが強かった。主な顧客である個人投資家の売買が低迷し、委託手数料収入が落ち込んだ。一般事業会社の売上高にあたる営業収益は35%減の25億円、営業損益は1億1900万円の赤字(前年同期は7億4400万円の黒字)だった。
19日のマザーズ先物9月物の清算値は941.5だった。現物株で構成するマザーズ指数の19日終値は941.65と続落し、先物の清算値はこれを下回った。先物のチャートをみると、創薬ベンチャーでマザーズ上場のそーせいの株価が下げ渋った14時10分すぎに先物も底堅くなった。マザーズで時価総額が上位にあり指数への影響が大きい銘柄と連動する傾向があった。19日は「売買が非常に低調だった」(シニアマーケットアナリスト)という。取引枚数は日経平均先物が4万3963枚、東証株価指数(TOPIX)が3万7878枚で、マザーズ先物は1ケタ小さい数字だった。取引が成立した「約定回数」でみるとマザーズ先物は1293件で、日経平均の1万件やTOPIXの1万1708件に遠く及ばない。投資家の関心が大型株に向かったため、マザーズ先物は「事前の期待ほど売買が盛り上がらなかった」とみられる。