『オシムの言葉』 木村 元彦
サッカー日本代表監督、イビツァ・オシム氏の伝記。
本屋で手にとって3時間、一気に読み終えた。
この迫力は何だろう。
イビツァ・オシム氏という人の人格ゆえか、
著者木村元彦の取材力か。
オシム氏が行なってきたこと・・・
揺るぎない信念に基づくチームづくり、
常に相手に"見ている"というメッセージを与え続けること、
声かけの絶妙なタイミング。
サッカーのみならず、全てのチームにとって重要なことだ。
「言葉は極めて重要だ、そして銃器のように危険でもある。
新聞記者は戦争を始めることが出来る。
意図を持てば世の中を危険な方向に導けるのだから。
ユーゴの戦争だってそこから始まった部分がある」
言葉の重みを知っているからこそ、
オシム氏の言葉は多くの人々に響くのだろう。
- 木村 元彦
- オシムの言葉―フィールドの向こうに人生が見える
『真実の瞬間』 ヤン カールソン
著者は、スカンジナビア航空CEO(当時)。
スカンジナビア航空をはじめ複数企業の企業再建に関わってきた。
本書では、収益を上げるための経営戦略と、
経営者の従業員に対する在り方が述べられている。
繰り返しがあり冗長さは免れないが、
本書の主張は出版から15年経た今日でも十分通用するだろう。
経営戦略では
①自社の事業を見極める。(航空事業か?旅客を安全効率的に運送する事業か?)
②顧客ターゲットを絞り(ビジネス旅行者)、ターゲットのニーズを確認する。
③顧客ニーズと市場の状況に応じて目標と経営戦略をたてる
④戦略を実施する
この順番の重要性が説かれている。
そして、顧客には一言で分かるアピールを、とも説いている。
経営者のあり方としては幾つかの言葉が印象に残った。
「人は誰も自分が必要とされているということを知り、感じなければならない。
人は誰も一人の人間として扱われたいと望んでいる。
責任を負う自由を与えれば、人は内に秘めている能力を発揮する。
情報をもたない者は責任を負うことができないが、情報を与えられれば責任を負わざるを得ない。」(p.2)
「経営幹部には、細かい、専門的な知識は必要ない。今日のリーダーに求められているのは、もっと一般的な手腕で、社内外の人間関係と集団関係及び自社の多様な業務の連係プレイを円滑にする、すぐれた経営センスと広い理解力なのである。」(p.51)
「ピラミッド機構を崩した企業では、従業員ひとりひとりの自負心を高めることが、ことさら重要である。古い階層的機構の企業では、役職、肩書、給与といった、権限に関係あるものを重視する。階層的機構内での"昇格"は多くの場合、能力ある人間を重要な職務から外して閑職につけ、給与額を上げることを意味している。きわめて有能な社員が、単なる上層部の意思決定伝達役におさまってしまうことが多い。」(P.161)
「従業員に仕事に対する真の満足感と自負心を与えるのが、企業にとっても従業員にとっても誠実な方策だと私は考えている。成果に対する適切な報奨は、明確な責務と信頼を与えることだ。」(P.161)
- ヤン カールソン, 堤 猶二
- 真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか
『仕事のヒント』 神田 昌典
本書には、仕事のヒントとなる「一言」と
「その一言にまつわる解説」が百個ほど書かれていた。
著者の主張のエッセンスを集めた本。
CDでいうBEST盤のようだ。
ヒント集でしかないので、
著者の主張を既に分かっている人向けの本だろう。
印象に残ったヒントの幾つかを。
・器をつくって、水を満たさなければ、人に与えることは出来ない。
・使命が明確でない会社の社員は、発想が湧かない。
・いままでの常識を振りかざすと、ピエロになる時代。
・自分にしかできないことに立ち向かって生きる人を、「成功者」という。
・過去にこだわり、未来に不安を感じると、エネルギーが使われる。
・半年後のあなたは、いまこの瞬間に決まっている。
- 神田 昌典
- 仕事のヒント
『宇宙を味方にする方程式』 小林 正観
本書を一文で要約するならば、
「心の持ち方を変えることで、運(宇宙)を味方につけましょう」ということになる。
しかし、本書は巷の成功本とは違い、
「思いを持たなければストレスは発生しない、執着しなければ苦しみは発生しない」
という視点を提供している。
この視点は以下の一文に象徴されるだろう。
『ストレスとは自分の思いどおりにならないことにある。そしてストレスを感じないためには二つの方法がある。一つは人の五倍、十倍、二十倍努力して、その思いどおりの結果を得る西洋的な解決方法。もう一つは東洋的な解決方法で、思いを持たないこと。「思い」をもたなければストレスは生じない』(p.92)
思いに執着して疲れ果てていた自分に気がついた。
非常に救われた心持がした。
以下に、気になった箇所を書き留めたい。
<親子関係について>
・子供と向き合っているということは、子供の目の前に立ちふさがっているということです。立ちふさがってあら探しをしている。
・理想的な育て方・育ち方というのは、親が楽しそうに勝手に前を歩いていって、その背中を子供が追っかけていくという形なんです。
<がんになる人、ならない人>
・自分の人生のすべての出来事を否定的に論証し、否定的に評価している人は、「生きているのがそんなにつらいんだったら早く死んでしまいましょうね」と体が反応するのです
・(否定的な言葉と思いの)結果として体が壊れ始めた人を画期的に、根底的に、もとに戻す方法があります。その方法とは、今日ただ今この場から、ありとあらゆる現象について否定的な言葉を使わないこと
<生き方について>
・悩み苦しみは思いどおりにしたいというところから全部生まれてきているものだ。執着が全部悩み苦しみのもとなんだ
・「己の長を説くことなかれ、他人の短を言うなかれ」弘法大師空海の座右の銘
・皆さんがバカだのアホだの言われた瞬間に「それを聞けば聞くほど元気になるのよね、ニッコリ」というふうに決めると全部エネルギーになる
・目の前にあることが一番大事、やるはめになったことを淡々とやる。未来に自分がどこに連れていかれるだろう、自分はどうなるのだろうなどとは考えなくていい。
・自分の使った「トイレ・流し・洗面所」はきれいにして出てくるようにすると、お金と仕事に困らなくなる
・内容が面白くなくても、内容が分からなくとも、とにかく「笑う」。「笑う」ことで免疫力が高まる。
・病気や事故は何の為に起こるかというと、何事もなく普通に過ごせている日々がどれほどありがたいことかと感謝するために存在している
- 小林 正観
- 宇宙を味方にする方程式
『プロが教える転職で成功する33のマニュアル』 坂川 山輝夫
偶然図書館で手に取った本。
転職関連本は、派遣先が変わるときでも十分に役立つ本だと常々思っていたが、
この本も役立ちそうだ。
<面接官の見方>
前の会社で何をやっていて、ウチで何が出来るのかを見ています。
何をやっていたか→他の人ではなしえなかった実績を数字で具体的に表すこと
ウチで何ができるか→今までウチが出来なかったことをアピールすると良い、期限付きで「いつまでにこういうことをする」と仕事の計画を明確に示せればいうことなし
<職務経歴書の書き方>
・キャリアの一貫性を示す。具体的なキャリア内容、自分の企画でプロジェクトや改革を進めた経験を示す。
・プライドの捨て惜しみをするな。小さなプライドを捨てよう。人に頭を下げる謙虚さをもつことだ
・仕事は他人から与えられるものではなく、トライ・アンド・エラーの中から自分で見つけ出すものだ
<転職先の選び方>
・社長の人柄、評判、考え方、社内でそれが浸透しているか、従業員の士気、教育、意思疎通、
会社の雰囲気、社員同士で挨拶をかわしているか、働く職場としてどうか、離職率は高くないか、
接客態度、電話の態度はおかしくないか、言葉遣いや服装はどうか、伝言は伝わっているか、
組織がしっかりしているか、形骸化していないか、事務所が必要以上に豪華ではないか、
重要書類が乱雑に放置されていないか、管理は十分か、
ありきたりなポイントをみるだけでも、働く場としてふさわしいかわかる。
・自分自身の長期的なキャリアプランを実現するために会社を利用してスペシャリティを磨く、
というようなタフで主体的な発想をしたほうがいい
・異業種への転職は、一般的に27、28歳が上限とされている
・志望動機・・・「あなたのどんな能力を活かしたいのか」を相手は知りたい。
・「何故応募したのか」「自分がその企業に向いているのか」をきちんとまとめることが重要
・名文より歯切れの良い文章を。組みたてをしっかりと。エピソードで肉付けを。
<面接>
・約束時間の10分前には到着すること
・×「ええ」○「はい」
・「どうしてこの会社を応募したんですか」
「以前は知らなかったんですが、『会社四季報』で見てみたら、業種はこれこれで、最近三期間の業績もいいし、ということで」
→この程度で90点
・質問は良いほうにすりかえろ。
「本は読んだか?」「最近読んでいません、なぜなら数ヶ月前に購入したPCの練習をしているため」
・「当社の営業はきついですよ。自信はありますか?」「自信はあります」と言い切らなければいけない。
・骨身をうずめる覚悟があるか
×「御社で40まで働き、将来的に独立するのが夢です」
○「御社の発展に微力でも貢献したいと考えております」
・担当者がくるまでは、お茶や灰皿に手をつけてはいけない
<転職後>
・あいさつをしっかりする。朝夕だけでなく、いつでも。
・不明点や疑問点をしっかりと早めに聞く、詰問はNG。
・前の会社には触れないのが原則
・ノウハウ開示は惜しむな、押し付けるな
・周囲の者が真似できないほどの完成度の高い仕事をすれば、嫉妬はない
・毎日残業も残業拒否もアウト。誰か残ってくれないかといい誰も残らない日に遠慮がちに手をあげるのがベスト
・人を選ばず交際を。転社早々派閥に入るのは避ける。用事にかこつけて辞退すべき。
・転職者同士で固まると必要な情報が入ってこない
・すぐはしゃいだり、いじけたりするのは幼児性の表れ
坂川 山輝夫
『凡事徹底』 鍵山 秀三郎
johnさんの記事 を読んで再読したいと思い続けていたが、ようやく実現した。
著者はイエローハット創業者。
掃除で有名な方だが、
この本には掃除を超越した名言が散りばめられている。
印象に残ったものを以下に取り上げたい。
・成果があげられる人は無駄が少ない人。
無駄を少なくするためには、気付くこと。
気付けるようになるためには、
①微差を追求し"続ける"こと
②人を喜ばせようという意識を持つこと
が必要。
・打算があったら続かない。
・人が見捨てたものの中に宝の山がある。
・不合理を他社に押し付けず、不合理を合理化する。
・自分のやっている掃除の範囲の広さ、深さが自分の人格に比例する。
・いくらたくさんの勉強をしても、実践しないと何も役立たない
・人間の喜びで最たるものは、人に頼りにされ、人にあてにされること
・当たり前の、だれでも知ってはいるけれども、やっていないこと、に目を向けて、徹底して行なう
・義務でないことがどれだけやれるか
・枠は出来るだけ小さく使う。宴会が9時までであれば、8時45分に終わらせて場所を片付ける。
- 鍵山 秀三郎
- 凡事徹底―平凡を非凡に努める
『陰日向に咲く』 劇団ひとり
これも図書館で半年以上待った。
ご存知、ピン芸人「劇団ひとり」の処女作。最近販売部数が50万部を超えたとか。
軽く読めるストーリーで、読書が遅い自分でも200頁を2時間かからずに読み終えられた。
5つの趣の異なる短編を集めた本だが、各編の登場人物が微妙にリンクしていて面白い。
庶民視線で日常のありふれた出来事を集めており全く嫌味がなく、後味はかなり良かった。
息抜き、気分転換にお勧めしたい。
- 劇団ひとり
- 陰日向に咲く
『成功者の告白』 神田 昌典
成功の裏にある「影」の部分を題材にした本。
会社経営にあたり、各段階で突き当たる典型的問題と、その問題への解決案を提示している。
小説形式で引き込まれ、一気に読んでしまった。
個人的に特に興味を持ったのは、マネジメントの問題だった。
マネジメントを中心に、気になった文章として取り上げたい。
・経営のシステム化
「タクは仕事をシステム化しようとしたよね。ところが、もとの仕事の進め方こそが、そもそも非合理的・非効率的だった。その非効率なプロセスを自動化するために、コンピューターを導入したわけだ。すると結局、バカがやっていたことを自動化するわけだから、バカがスピードアップしてバカをやることになる。要するに最強のバカをつくりだすんだ。」p.202
・場の病
「夫婦仲が悪いと、そのバランスを元に戻そうとして子供が良い子になったり、悪い子になったりする。悪い子がいなくなると、こんどは良い子が悪い子になるって話したよね。同じことが会社でも起こっている。ある人が治れば、その役割を別の人が引き継いで、分裂しかかっている会社をなんとかまとめ上げようとする。そのコミュニティを形成しているメンバー同士でバランスを取るわけだ。」p.203
「会社が大きかったり、また会社の分裂が深刻だったりする場合には、もうひとりまとめ役が出てくることがある。これが問題社員だよ。問題社員が病気になることによって、その人のケアのために会社がまとまる。または問題社員の悪口を言い合うことによって、他の社員がまとまるんだよ。要するにスケープゴートであって、会社のために犠牲になってくれているわけだ。
そういう立場の人は、その職場のネガティブなエネルギーを受け取りやすい、感受性の強い人が多い。このような問題社員が現れる背景を知っていれば、問題社員を問題として扱うのではなく、逆にその人の感受性の強さを活かせるようになるんだ。そう、問題社員こそ、アンテナ役になってもっとも早く的確に、会社の問題を炙り出してくれる。」p.284-286
・社員の扱い方について
「社員は社長の鏡というだろう。会社には、社長の足りないところを顕在化さえるために、問題を起こすのに最適なメンバーが集まっている。だから、その働く場自体を向上させていかなければ、いつになっても同じ問題の繰り返しになるんだ」
「また、能力がないからさっさとクビを切るという文化を会社がもってしまえば、こんどは、会社が十分なボーナスをくれなければさっさと辞めるという、相手から奪う文化を会社の中に構築することにもなる。もちろんスタイルの違いだからと反論はあるだろうが、私は他人から奪うことを文化として持っている会社が、発展するとは思えないな。」p.209
「鬼の経営や軍隊式マネジメントに象徴されるような、つねに緊張感を強いられ恐怖が支配するような環境下では、脳波がベータ波になってしまう。すると大量の人間に同じ行動を取らせるという観点からは効果的だが、個々人は学習能力が低くなり、創造性が発揮しにくくなる。人間は安全な、リラックスできる環境下では、脳波がアルファー波になる。学習が効率的になり、創造力が増すんだ」p.210
「社員が辞めるときは、この会社では自分の居場所がないと感じたときだ。」p.221
「部下がいつまでたっても覚えない、というのは典型的な上司の不満だね。でも、それは当たり前のことなんだ。なぜなら、道徳や価値観のように基本的な行動様式や習慣を司る脳は大脳辺縁系と呼ばれる部分だ。この部分の回路を変更するには、分析的能力を司る大脳新皮質と異なって、とても長い時間を要することが分かっている。つまり、道徳や価値観に関することを教えるには、時間をかけて何回も言い続けなければならないということなんだ。」p.228