本格的な野菜栽培のシーズン真っ最中です。
路地野菜では、果菜類の定植の時期ですね。
ナス科の野菜では、定植する苗はだいたい花芽がついているくらいの大きさとなっていることと思います。
これに対して、トウモロコシとかエダマメとかは、定植時点では茎葉のみで、ある程度大きくなった後に花芽ができて実がなります。
茎葉が大きくなる過程は栄養成長期、花芽が出来始めてからは生殖成長期と呼ばれます。
トウモロコシやエダマメは、栄養成長期と生殖成長期がはっきり分かれています。
ナスとかウリとかは、栄養成長と生殖成長が同時に起こります。
今回のテーマは、よりよい栽培管理の一環として、栄養成長と生殖成長を上手い具合にコントロールできないか、考えていきたいと思います。
その前に、まずは生殖成長に至る過程を、詳しく見てみましょう。
まず、多くの植物は発芽した時点から、既に花芽を形成させようとしているそうです。
しかし、そんな時から花をつけてタネを作ろうとしても、蓄えている栄養分が少な過ぎてまともなタネはできません。
そこで、これを抑える遺伝子が働いて、栄養成長に持って行かせています。
この遺伝子は成長とともに弱まってきて、ある時期が来ると、花芽を作り始めます。
花芽は、葉で作られた植物ホルモンが茎の成長点まで移動して、そこで作られます。
ただし、この植物ホルモンは明確に特定されたものではなく、詳細はまだ明らかになっていません。
生殖成長に移行する条件は、現象としては色々なことが影響していることが分かっています。
まず最も有名なのは、日の当たる長さです。
植物の種類によって異なりますが、ホウレン草やレタス等は日が長くなるのを感知して花芽ができます。
長日植物といいます。
逆に、キュウリ、イチゴ等は短日植物といって、日が短くなると花芽が出ます。
トマトやナスは、日長には関係なく花芽がでます(中性植物といいます)。
なお、日長というのは正確でなく、実際には夜の長さです。
植物に人工的に光をあててみたところ、光をあてる時間の長さは関係なく、あてていない時間の長さで花芽が出るかどうかがきまっていたそうです。
暗い時間帯の途中で、光をあてて中断させると花芽が出るのが妨害されます。
さらに、光と言っても特に赤い光が重要です。
上述の暗闇の中断に有効なのが赤い光です。
この赤い光を無力化する光もあるのですが、ここまで来ると話がややこしくなりますので省略します。
あと、温度も重要です。
キャベツやタマネギ等は、低温に反応して花芽が出来ます。
バーナリゼーションと言います。
秋撒き小麦などは、吸水した種とか発芽したばかりの段階で低温に合わせることにより、常温に戻した後に花芽ができやすくなります。
他には、アブラナ科の植物も有名ですね。
冬の低温を経験させると、その後、春に気温が上がってくるとトウ立ちしてきます。
ただし、低温にあってもその直後に高温にさらすとバーナリゼーションの効果を打ち消すことができます。
ディバーナリゼーションと言って、ハウスで白菜等の春どり栽培するときなどに利用します。
さらに、花芽が形成されるのと、その花芽が生育する条件は必ずしも同じではありません。
春菊は、上述した通り、日が長くなると花芽が出来ますが、温度が高くならないと花芽が成長しません。
話は、相当ややこしくなりますね。
温度は、その年によって異常気象とか色んな要因があるので、植物のほうも色んな条件に対応できるようになっているのですね。
参考にした本
小柴共一 神谷勇治 勝見允行編 植物ホルモンの分子細胞生物学
講談社サイエンティフィック
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