パイレーツ・オブ・ハロウィン(9)最終回 | 今村和代オフィシャルブログ「カラフルライフ~オレンジ色の雲のように~」Powered by Ameba

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「キーッキッキッキー!」
「ハバネロ!こっちだ!」

生きていた。

アルフレッドとハバネロは、あの大嵐の中、奇跡的に助かったのだ。
一度は、海に沈んだかと思ったが、かろうじて流木にひっかかり、丸一日漂流した。

気を失ったまま漂流していたところで、海賊船「ジョロキア号」に助けられたのである。すぐは、記憶喪失で自分の素性も思い出せなかった。アルフレッドの発言から、どうも「辛口の中に極上の甘さがある」と気づいた甲板係のダンクが、からかって「ハーティー坊や」と呼んだ。他の連中も面白がって「ハーティー坊や」と呼ぶ様になった。この船は、辛口の野郎ばかりだったが、どこか、ひと味違う辛さだった・・・それは、全てこの船の長「ブレア船長」の人柄に影響されるものだった。

記憶が戻ってから10年が経った。

「アルフレッド!船長がお呼びだぜ!」
「ああ。今行く」

ブレア船長は、強面ではあるが、アルと同じで、優しい眼をしている人物だった。

「お前は、キャンディーランドに戻る気はあるのか?」ブレア船長が、訪ねた。
「・・・なぜです?」

アルフレッドは、急な話しに驚いた。

「あと数時間もすれば、キャンディーランドの真横を通る。あそこは、甘過ぎて、私の船員どもは、降りることは出来ない.わかるだろう?降りた途端に、住民の甘さに耐えられなくなって、半日といられない。だが、私は対応できる。戻るなら私が送り届けてやるぞ」
「・・・」
「どうした?この10年で、手紙を飛ばしたのは何度だ。お前の両親は、心配しているんじゃないのか?」

ブレア船長は、アルフレッドと同じ様な境遇で、海賊の船長になったのだった。
一番辛口の島で産まれたのに『甘口』だった彼は、島から追い出され泣く泣く一人海に出たのだ。やはり、同じ様な境遇の船長のいる船に救われたのだった。『辛口寄りのアル』に比べて『完全に甘口のブレア』が、どれほど辛い思いをして、今あるのか・・・計り知れない苦労があったであろう。

「船長がそういうなら、会うよ」
「お前は、成長した。もう、大丈夫だろう。自信を持て」

その数時間後、「ジョロキア号」が、キャンディーランドに近づいた。

「いかだをおろせ~!!!」
「ちっ!暇つぶしの種が無くなっちまうな」ダンクが言った。
「これ以上は、近づけねぇ。俺たちには甘過ぎて、脳みそが腐っちまうからな。へへへ。ハーティー・・・いや、アル!ハバネロ!せいぜい脳みそ腐らせて生きやがれよ!」と、一番かわいがってくれたキートンが言った。
「眼から臭そうな汗が出てるぜ、キートン!勘弁しろよ!!はははは!」アルは、笑った。

母船から、船長とアルフレッドとハバネロだけでキャンディーランドまで、小舟を漕いで行った.
10年振りのキャンディーランド。変わらなかった。

「海賊だ!海賊だ!!・・・アル?アルフレッドだ!!!」

キャンディーランドの皆は、すぐにアルに気づいた。
それから、家までの道のりには、船長とアルとハバネロを先頭に行列が出来た.
その騒ぎで、ハニーバンチ一家には、早くもアルの帰りが知らされており、全員家の外で、今か今かとアルの姿を待った。

「アルフレッド!!!」
10年経って、ようやくハニーバンチ一家が揃ったのだ。

それから、一家は、呼吸を忘れていないかと心配に成る程、今までの話しを一気にした。

そして、日も暮れかかる頃、船長が別れの挨拶をした。
「アル、もう心配ない。お前は、一人前だ。私は、失礼する。私がいる場所ではないのでね」
「息子が大変お世話になりました。何か、お礼をさせてください。何が良いでしょう」
と父・ロナルドが言ったその時。
「船長、待ってください。・・・俺は、船に戻るよ。父さん、母さん」
家族は、驚いた。外で様子を伺っていた、島の皆も。

「本気なの?アルフレッド・・・そんなに、優しい眼をして海賊なんて・・・」キャシーは、もう涙を止める事が出来ないでいた。

「本気だ。俺は、海賊になる。この海を平和に保つブレア船長の様な海賊に!」

もう、キャンディーランドの誰も、アルフレッドを止める事は出来なかった。

「行かせてやろう!!」ロナルドと外で聞いていたドクターチョコレートハーツが同時に叫んだ。
(チョコレートハーツは、アルの記憶が戻り最初の手紙が来た時に、その手紙を読みながら失神した。
その後は、胸の痛みもすっかり治まり、今では往診に明け暮れる毎日である)

アルフレッドは、家族とドクターチョコレートハーツに勢い良く抱きついて「ありがとう」
と言った。島の皆にも「ありがとう!!」と叫んだ。
そこにいた全員が、泣き崩れた。あのアルが、自分たちに「ありがとう」と言ってくれた事に、逆に感謝した。

キャンディーランドでの再会を果たし、島を離れてから5年、ブレア船長のもとで海の全てを学んだアルは、とうとう自分の船を持ち「スウィートハロウィン号」と名付けた。船員達からは、当時のあだ名をとって「ハーティー船長」と呼ばれる様になった。

「ジョロキア号」の「ブレア船長」と「スウィートハロウィン号」の「ハーティ船長」
真逆の島で、ほぼ逆の性格で産まれた二人。

『この美しい世界を守る』と云う事への『プライド』は、同等であった。

その後「ジェロキア号」と「スウィートハロウィン号」は、数々の悪党や怪物から、あらゆる島とその海を救い、悪い海賊共から奪った宝石類は、貧しい島に配り、自分たちは、宝島を探しては『金塊』を掘り起こし、善人からは何一つ奪わずに暮らした。

「スウィートハロウィン号」の「ハーティ船長」の話しは、300年経っても世界各地で語り継がれている・・・そして『選ばれし者』の宿命なのか・・・ハロウィン産まれのハーティ船長は、ある日、不思議な力を得て姿形ちは変わったが、優しい眼だけは変わらずに、今でも人前に現れるという・・・

ハロウィンの夜に現れる伝説の海賊『パイレーツ・オブ・ハロウィン=ハーティー船長』・・・

今年は、あなたの前に現れましたか?

終(っちゃたドクロ

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*長らくお付き合い頂き誠にありがとうございました。最終回が長くてごめんなさいにひひ

コメントのお返し

ちか☆おーのっ 様
どうもありがとう。何とかまとめてみました.
どんどん、頭でストーリーが展開されちゃって、中だるみしそうだったので、どうやって、端折ろうかと悩んで、こうなりました。絵本には~考えてみます(=⌒▽⌒=)絵を付けるのも楽しいかもねぇ。

pawx3727cds2000 様
嬉しいご意見ありがとうございます。
残念がってくれてる方も多いので、また思いついたら番外編でも書いてみようかと思ってます。
思いついたらですけどねべーっだ!

Flowergirl-K 様
ねねちゃんですねぇ。でも、出し惜しみしようかなぁ。なんてねぇにひひ