3.11から

デモクラシー考 -下


「政治」をつくり直す

  草の根グループ結ぶ「緑の党」


       人類学者 中沢新一さん


 日本に「緑の党」のようなものをつくろうと思います。11月にも政治団体の届け出をするつもりです。網領の柱に脱原発を掲げ、できるだけ速やかに地震列島の原発を廃炉にしていかなければいけない。それとともに、一次産業に焦点を当てて、新しい生活様式について提案していきたいと思います。

 脱原発と生活レベルを落とすことは同じではありません。生活の質を、いささかも落とさず、前に進んでいける。それが脱原発の本当の意味ではないですか。人類全体の見本になるものをつくり出せるはずだと考えています。

 日本中には、いろんな草の根グループがあり、文化、食物の問題、市場の問題をどうしたらいいか考えてきました。そういうグループを一つに結ぶ必要があると、五年ぐらい前から思っていました。

 「3.11」が起きた。間伐材に取り組む人、里山保全運動や地域通貨などに取り組むグループが、それぞれに持っていた問題意識を共有しました。その時、僕は「ネットワークをつくるのは今しかない」と思いました。

 エネルギー問題は、何万キロワットとか費用がいくらとか、経済効率がすべてを決めていた。原発問題も、その延長線上にありました。しかしエネルギーは地球上の生命活動のすべてを支えて動かすもの。朝食を作ろうとしてガスの栓をひねる時からエネルギーにかかわっている。

 科学技術は経済成長と一体で語られてきました。これに疑問を抱くのは経済成長にブレーキをかけることだという暗黙の抑制があった。現実には経済発展の時代は終わっているのに、政治家も科学者も企業も、それを見ないようにしてきました。果たして、それでいいのか。人類はそういう問題を突きつけられています。

 先日、東京で脱原発を訴える六万人規模のデモがありました。やむにやまれぬ人たちの気持ちが結集した。1980年代に途絶えかけた行動が、よみがえってきたのは良い兆候だと思います。ただ、デモが政治家にダメージを与え、方向転換させるのに有効かどうかは、考える必要があります。だって、デモの後に野田(佳彦首相)さんは、平然と原発再稼働を言っているわけでしょう。根本的な変化を実現していく活動こそが重要ではないでしょうか。

 民主党も自民党も政治家は、数年もたてば国民の危機意識も薄れて、脱原発なんてことを言わなくなると計算しているのでしょうね。そうならないようにするのが僕たちの運動です。日本人は、しつこくないといわれていますが、今回はしつこくやらなければ。衆院が解散したら「国民の意思はあなたたちと違う」とはっきり示せるようにしたい。

 政党のような形を取ることに対しては、疑問の声もあります。それだけ政治に対する絶望があるのでしょう。政治家がやっても変わらない…と。ただ、僕たちが目指す政治とは、政党的なものを越えて非常に広い。選挙を通じて政党政治に関与し影響力を出すのも有力な選択肢ですが、深いモノの考え方、人と人の結合の仕方、自然とのかかわりを変えていくための組織化を進めたい。その意味で、僕たちの運動は政治という言葉をつくり直すのことになるかもしれません。

 日本は今チャンスをむかえているのです。日本が変わって、初めて世界が変わるモデルが示されることになります。


                     2011年10月6日(木) 東京新聞朝刊


さっき写真を載せましたが、それではケータイからは読めないのですねあせる

失礼しましたビックリマーク

誤字脱字があったらごめんなさいねニコニコ



かずみんの観たり聴いたり