「NEWS23」岸井成格氏による安保法制に関する報道の論理的検証-3(衆院審議) | マスメディア報道のメソドロジー

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マスメディア報道の論理的誤謬(ごびゅう:logical fallacy)の分析と情報リテラシーの向上をメインのアジェンダに、できる限りココロをなくして記事を書いていきたいと思っています(笑)

News23



「NEWS23」岸井成格氏による安保法制に関する報道の論理的検証の第3回は、衆議院選挙から安保法案の衆議院可決に至る報道を対象として公平性の検証を行っていきたいと思います。

 [第1回 閣議決定]
 [第2回 衆院選挙]
 [第3回 衆院審議]
 [第4回 参院審議]
 [第5回 総集編]

 [安保法制の概要と論点] ←法案の内容の確認にご利用ください。

さて、公共の電波を取り扱うテレビメディアがその報道を通じて本来行うべき責務は、国民が自ら考えて法律の正否を判断するために必要な客観的情報を整理した上で多角的に提供することであると考えます。しかしながら、極めて残念なことに、2015年の安保法案の国会審議において、一部マスメディアは、放送法の精神を逸脱し、国民への情報提供というよりは情報操作と言えるような一方的に法案反対を訴える報道を繰り返しました。その報道内容と言えば、安保法案の概要すら十分に説明することなしに、一方的な意見を持つキャスターと御用コメンテイターが、ひたすら個人的見解に訴える論証、感情に訴える論証、権威に訴える論証などの論理的誤謬を多用して、法案の賛成勢力の悪魔化と反対勢力の英雄化を行い、人格論証により安保法制を否定するというブラック・プロパガンダを展開しました。このブラック・プロパガンダの結果として、一部の学者・著名人・学生・主婦等が、従来から存在する反対活動家のデモに加わって、感情的な反対運動を展開し、その状況をキャスターが再帰的に報道して自らの正当性を主張すると同時に反対運動を積極的に広報するという【循環論証】の輪が発生しました。安保法制という国の行方を大きく作用するような重要な問題に対して、このマスメディア・学者・著名人・デモ隊等の複合体が行った主張は、法案の本質に触れるものはほとんどなく、ひたすらコンテクストを根拠にしたヘイト表現を含む反対連呼に終始しました。このようなバックグラウンドを踏まえた上で「News23」の報道を検証して行きます。

なお、前回と同じように、必要最小限の映像を参照して動画を作成しました。動画を新規ウィンドウで開いていただき、下記の文書と併せて参考にしていただければと思います。

[Youtube動画を開く]



それでは、具体的事案について時系列順に示していきたいと思います。


2015/03/05 集団的自衛権 "新事態"とは?

膳場キャスター
新たな概念ということですけれども、なんかわかりづらいですね。

岸井キャスター
(1)わかる人っていないんじゃないですかね。集団的自衛権の新3要件とあるんですけれども、やってる議論をずっと聞いていますと、本当に(2)言葉の遊びなんですね。もう本当に(3)憲法九条を骨抜きにしていくという目的があって、そのために言葉で誤魔化して国民の目をそらそうとしているとしかどうしても思えないんですね

(1)平易さよりも正確性を優先する法律の条文案に対してマスメディアが「わかりづらい」と批判するのは、マスメディアの本来の存在意義を忘れた不誠実な態度です。もし「News23」がプロフェッショナルなメディアであるのならば、当然その意味をつまびらかにして伝達する必要があります。この「新事態」に対して、岸井氏は内容ではなく、わかりづらいことの批判に終始しています。これは、言説を理解できないと主張することで論点を換える【無知に訴える論証 feigning ignorance / appeal to stupidity】という誤謬です。なお、この条文案のどこがわかりにくいのか私にはわかりません。
(2)岸井氏は、「言葉遊び」という言葉で言葉遊びをしています。これは、論敵の言説のネガティヴに感じられる一面に着目して悪のレッテルを貼り、論敵の人格や言説の品格を否定する【レッテル貼り labelling】であると同時に、論敵の人格を貶める情報を流布することで対人論証を行う【毒の混入 poisoning the well】です。毒をひとたび混入した場合、すべての条文が言葉遊びに見えてくるという心理的効果があります。なお、この条文案のどこが言葉遊びなのか私にはわかりません。
(3)「~しているとしかどうしても思えない」は岸井氏がイディオムのように非常に頻繁に使用する【視点狭小 limited perspective】の思い込みです。了見が不当に狭い単なる主観的憶測によって、自説からの乖離を認めていないに過ぎません。「憲法九条を骨抜きにしていくという目的があって、そのために言葉で誤魔化して国民の目をそらそうとしている」というのは、強権統治者が不正を行うと同時に証拠を隠していると主張する【陰謀論 conspiracy theory】の類であり、個人的憶測を事実と混同する"I am not ABE"の古賀茂明氏の言説と大差ないと言えます。

2015/03/18 国会の事前承認が「基本」 自公 安保法制整備で実質合意

膳場キャスター
気になるのは合意文章。抽象的ですし、難解。具体的なイメージがわかないんですよね。

岸井キャスター
これね~、私、(1)意図的な悪文ではないかと言っているくらいなんですけれども・・・(中略)。この安全政策の本当の問題というのは、自衛隊が(2)いつでもどこでも海外で、場合によっては戦闘地域で武力行使ができる。(3)そういう可能性も否定していないということなんですよ。

(1)岸井氏は「意図的な悪文」なる主観的な評価型言葉の【レッテル貼】を行って与党を悪魔化しています。自説に都合よく、他者の意図を勝手に語るのは、【代弁の虚偽 mind projection fallacy / unwarranted projection】という誤謬です。なお、この合意文章のどこが意図的な悪文なのか私にはわかりません。
(2)対応措置の行使要件を一切語ることなしに、安保法制全体をひとくくりにして「いつでもどこへでも」と事実を歪めているのは、【都合のよい歪曲 card stacking / arrant distortion / one-sided argument】という誤謬です。ニュースキャスターの発言としては極めて不適切な無責任発言であると言えます。
(3)岸井氏は、可能性があることと可能であることを混同して推論する【可能性に訴える論証 appeal to probability / appeal to possibility】という誤謬を犯しています。岸井氏がどの法律のどの事態をもって「戦闘地域で武力行使ができる」と言っているかはまったく不明です。基本的に、ある事象の生起が理論上可能であっても、その事象を生起させるために必要な外部環境が成立する可能性がない場合にはその事象が生起する可能性もありません。理論における可能性を外部環境で不可能に制御できることは科学的常識であり、安保法制でも例えば非核三原則により核兵器のロジスティックを不可能にしています。

2015/04/14 徹底解明 ”安保法制” 再開 与党協議「歯止め」で対立

岸井キャスター
積極的平和主義もそうですけれどね、そういう印象である悪い戦争というイメージとか臭いを消そうという努力を今している

「イメージを消そうという努力をしている」と言うのであれば、証拠となる具体的な事実を提示すべきであり、証拠を提示しない限り、他者の意思を勝手に代弁している【代弁の虚偽】に過ぎないと言えます。もはやニュースではなく2サスの域に達しています(笑)。

2015/05/04 連休明け国会議論へ 憲法集会各地で 改憲に批判も

岸井キャスター
この「事態」という言葉ですね。法案の名前にもありますけれども、法案の中身にはいろいろなところにいろいろな○○事態、○○事態と。これね、(1)どんなに専門的知識を持っていたり、経験のある人でもなかなか具体的イメージがわきにくい問題なんですよね。(2)結論から言いますと、今回の法制によって、地域や時間の制約、あるいは(3)国連の決議の制約などを全部外してしまったんですよね。つまり、(4)いつでもどこへでも米軍などのいるところへ自衛隊が出せるようになると、こういうことなんですよね。

(1)岸井氏は「具体的イメージがわきにくい」という曖昧な第三者の個人的印象を事実と混同しています。「具体的イメージがわきにくい」のであれば、なぜイメージがわきにくいのか、イメージがわきにくいことはなぜ問題なのかを報道すべきです。
(2)「結論から言いますと」と宣言して結論を言った場合、その根拠を後に示すのが普通ですが、岸井氏は極めて疑義が多い"結論"だけ述べて、その根拠を示すことはありませんでした。つまり、岸井氏は根拠なく"結論"を述べているということです。なお、この"結論"については、以降も根拠が示されることなく、あたかも明証された事実であるかのように、岸井氏が繰り返し主張することになります。
(3)「全部外した」という岸井氏の結論は完全な誤報です。まず、集団安全保障のフレームワークにおける国際平和支援法による自衛隊の派遣には国連決議が必要です。一方、集団的自衛権行使のフレームワークにおける重要影響事態法においては、改正前の周辺事態法から国連決議が必要ではなかったので今回の法制で外したわけではありません。もちろんその武力行使(後方支援)にあたっては、「重要影響事態」という行使要件が存在します。
(4)ハードルの高い行使要件が存在するにもかかわらず「いつでもどこへでも米軍などのいるところへ自衛隊が出せるようになる」と言うのは、事実を歪める【都合のよい歪曲】です。可能性があることと可能であることを混同して推論している【可能性に訴える論証】であるともいえます。さらに言えば、このように、自説に好都合な誤情報を繰り返し与えることで事実を歪めるのは【誤情報の繰り返し repeating misinformation】というプロパガンダの手法です。【アジェンダセッティング理論 agenda-setting theory】という学説によって、メディアが頻繁に取り上げる情報を視聴者が過大評価する傾向があることが知られています。岸井氏の根拠なき誤報の繰り返しは、国民の理解を理不尽に損ねる暴挙と言えます。

2015/05/20 在職日数戦後6位 安倍首相 党首討論 安保法制で論戦

岸井キャスター
安倍総理は安全保障環境がいっそう厳しさを増しているということを非常に強く強調しているんですけれども、その根拠が、北朝鮮のミサイルとか、あるいは日本人のテロでの犠牲、それから少なくともスクランブルですかね、そういうことを例示されたんですけれど、そういう例示された内容というのは、いわゆる少なくとも(1)集団的自衛権行使の根拠になってないんですよね。どうも今回の法制の本質、それから政権政府の本音、この辺がまだまだ不透明なままだなという疑問が非常にあるんですよね。(中略)岸元総理の、あえて言えば、見果てぬ夢だったものですね。自主憲法の制定、対等な日米同盟の関係の構築、そして自虐史観からの脱却。これは戦争、良い戦争だとか、悪い戦争だとか、いろいろな議論があるんですけれども、そういう問題があったと。これは、安倍総理がずっと掲げてきた戦後レジームからの脱却というのと完全に一致する。ですから、(2)「これをお祖父さんの代わりに自分が今やるぞ」という気持ちなのではないでしょうかね

(1)先述したように、北朝鮮のミサイルおよび中国のスクランブルが集団的自衛権の根拠になっていないというのは、まったく意味がわかりません。いずれの脅威も同盟国の米国と共通の脅威であり、この脅威に対して集団防御体制を共有することで両国の戦略行動の抑止を期待できるわけですから、これは紛れもない集団的自衛権の根拠です。まさしく議論の本質を理解していない論者が確信的に偽説を語る【知識を伴わない確信的話術 certainty argument by uninformed opinion】というプロパガンダの手法を用いていると言えます。
(2)安倍首相が岸元首相の孫であるという出自を根拠にして人物を攻撃する状況対人論証は【出自に訴える論証 appeal to origin / genetic fallacy】と呼ばれる差別発言です。いわゆるヘイトスピーチと本質的に何ら変わるものではありません。さらに、検証不可能な物語風の仮説を主張の根拠にしているのは【もっともらしい物語 just-so story】と呼ばれる立証不能論証です。憶測で他者の意思を勝手に代弁している点では、これも【代弁の虚偽】であると言えます。

2015/05/26 安保法制 国会審議入り どうなる?自衛隊のリスク

岸井キャスター
安全保障環境の激変というのを安保法制見直しの最大の理由にしているんですね。それはそれでいいんですけれども、それだけ聞くと国民も「ああ、それなら仕方がないのかな」と思ってしまうけれども、そういう環境の変化って具体的に何で、もしそうであるならば、なぜ自衛隊が世界各地に展開しなければならないのか。あるいはそれがなぜ集団的自衛権行使につながるのか。その点について全く答えてないんですよね。

もう一度言いますが(笑)、「環境の変化」というのは具体的に北朝鮮と中国のエスカレートする軍拡です。この軍拡によって増強された軍事力は、軍拡を行っていない日本と同盟国を標的にする共通の脅威であり、軍事リソースを統合することで軍拡なしに即座に防衛力を増強することができる「集団的自衛権の行使」を選択する紛れもない根拠となっています。岸井氏がこの世界共通の自明な根拠を理解していないのは深刻な知識不足であると言えます。次に「自衛隊が世界各地に展開」というのはブラックプロパガンダであり、国民の利益を考えた場合に「日本領土及び周辺の公海に限定することで生じるセキュリティーホールの除去という見方が本質的であると考えます。国民の大部分が強い厭戦感を持つ民主主義社会の日本において、もし「いつでもどこでも」のような蓋然性のない存立事態や重要影響事態で自衛隊が派遣された場合、政権は即座に内部から崩壊して政権交代すると同時に、その後二度と政権復帰できないことは自明です。政権がこのような勝ち目のない賭けに出る蓋然性は極めて低く、「いつでもどこへでも」が生じると予測している岸井氏の想像力の低さこそ異常であると考えます。一方で、岸井氏の主張とは正反対に、政府与党は集団的自衛権行使と集団安全保障参加の目的について明確に説明しています[例]。その政府与党の説明を説明とも思っていないところを見ると、岸井氏の国語力の低さは深刻なものであると言えます。

2015/05/27 安保法制 本格論戦スタート 野党追及 首相の“答え”は…

岸井キャスター
松野代表が「なぜそんなに急ぐのですか。法改正をやるのですか。」と国民の素朴な疑問をぶつけたんです。それに対して安倍総理は、南シナ海とか東シナ海で起こっている中において、「しっかりとした軍事バランスを保っていく」あるいは「平和と安定を維持していく上で抑止力を効かせる」、そういう言い方をしているんですね。(1)これは一見、わかりやすく聞こえるんですよ。だけど、完全に論理の飛躍があるんですよね。事実上の憲法改正である集団的自衛権行使に何で踏み切ったのかという、そういう説明には全くなっていないんですよ。

膳場キャスター
これはある種の中国脅威論・・・

岸井キャスター
そうなんです。これはまた別の問題が起こるんですけれども、中国による脅威で、それに対する抑止であるならば、(2)まず日米安保条約を我々持っていますから、それの運用強化というのがある。それから、何よりも(3)個別的自衛権とグレイゾーンの法整備で対応できるんですよ。これは与党の中の協議でもそういった話があったということなんですね。それを一歩踏み込んで、(4)自衛隊を世界いたるところに派遣するという必要はないんですね。

(1)岸井氏が「わかりやすく聞こえる」と言うのはなぜかと言えば、実際わかりやすいからです(笑)。経済の発展に伴って軍事費を増加させると同時に、実際に領土拡張を行っている中国は、戦略投射能力を有する明らかな脅威です。この無謀な脅威に対して、軍拡競争をすることなく、その野望を即座にしかも平和裏に打ち砕く一つの有力な方法として挙げられるのが、自国防衛のために米国攻撃に対して集団的自衛権を行使する用意があることを明確に宣言することです。この宣言によって、米軍の防御力は一瞬のうちに格段に強固なものとなり、戦争抑止に大きく貢献することになります。抑止力増大を論理の飛躍とする岸井氏の論理こそが極めて異常であり、視聴者をミスリードする【都合のよい歪曲】あるいは議論の本質を理解していない論者が確信的に偽説を語る【知識を伴わない確信的話術】のいずれかであると考えられます。ニュースキャスターが自説と合致しない言説に不当な評価を与えるのは情報操作に繋がりかねない危険な行為といえます。
(2)先述したように、日米安保条約というものは、暗黙の集団的自衛権の行使であると言えます。横須賀や沖縄の米軍基地の役割は、少なくともロジスティックの観点では、同盟国の米軍に対する後方支援以外の何物でもありません。つまり、岸井氏の反論は、集団的自衛権を概念上認めている日米安保条約を根拠に集団的自衛権に反論していると言えます。このように、ある概念を反証しようとする言説にその概念が真であるという前提が含まれることを【概念の盗用 stolen concept fallacy】と言います。
(3)岸井氏は、集団的自衛権で抑止しようとする中国の脅威を「個別的自衛権とグレイゾーンの法整備で対応できる」としています。これはまさしく【根拠のない名案 glittering generality】であるといえます。まず、個別自衛権は既に行使しているため、先に述べたような多大なる予算を毎年計上して軍拡をしない限り抑止にはつながりません。また、グレーゾーンの法整備で抑止可能なのは武装中国漁船であり、まったく次元の異なる安全保障であると言えます。
(4)岸井氏は【誤情報の繰り返し】を継続しています。

2015/06/01 「イスラム国」掃討作戦への支援 自衛隊派遣「法律的にあり得る」

岸井キャスター
法理論上あり得るということですと、今は政策上しませんけれども、将来はできますということに道を開くことになるんですね。イスラム国対応だけでなくて、他の問題にも全部通じる最大の問題点だと私は思いますね。

これも可能性があることと可能であることを混同して主張する【可能性に訴える論証】です。先述したように、ある事象の生起が理論上可能であっても、その事象を生起させるために必要な外部環境が成立する可能性がない場合にはその事象が生起する可能性はありません。例えば、イスラム国掃討作戦への参加は、集団安全保障における「国際平和共同対処事態」に該当するかが論点になりますが、イスラム国掃討作戦には、国際平和共同対処事態の大前提となる国連決議がないばかりか、日本が主体的かつ積極的に寄与する必要もないことは自明なので、協力しないということになります。もちろん、イスラム国が日本に対して直接の武力攻撃を行う可能性は著しく低いので、集団的自衛権行使における「重要影響事態」にもあたりません。理論における可能性を外部環境で不可能に制御できることは科学的常識であり、このために各種事態が定義されています。また、大前提として、日本は間接民主主義国であるので、国民にとって望ましくない政策の採択が懸念される場合には、選挙で争点化して国民の信を問えばよいことです。ちなみに、岸井氏が徹底的に批判している自民党は、イスラム国掃討作戦への支援をしないことを安倍総裁が国会で明言しているので、岸井氏の懸念を払拭するのに適した投票先であると言えます。

2015/06/04 衆院憲法審査会 参考人全員が「安保法制は違憲」

膳場キャスター
国会で審議中の新たな安保法制について、(1)与党が推薦した参考人も含めて全員が憲法違反との考えを示しました

岸井キャスター
今日のね、(2)学者さんの一つの良心、常識を示したと思うんですよね。(中略)これで(3)強行採決をこの国会でやるということは私は無理になったと思いますね。

(1)まるで、参考人の意見に多数決を適用するのが妥当であるような報道です。非常に誤解されやすいことですが、専門家や国民に意見を聴取することの目的は、多様な意見を聴取して参考にすることであり、サンプル調査によって多数決を行うことではありません。国会においても、参考人の扱いは「意見を聞くことがある(衆議院規則第八十五条の二)」程度であり、政党が恣意的に選ぶことができる参考人の多数意見をもって結論とするようなことがあったら、それこそ民主主義の崩壊です。まさにミスリードの報道であると言えます。
(2)「良心」という個人の価値観による主観的評価を内包した【評価型言葉 evaluating word】で、「学者」を善とする倫理観を視聴者に植え付けるのは、戦前の朝日新聞や毎日新聞が戦争宣伝に多用した極めて危険な行為です。「学者」の意見は善でも悪でもありません。
(3)論理の飛躍を伴った根拠のないプロパガンダです。岸井氏は、憲法の解釈変更については憲法を軽視するものとして批判しますが、憲法で明確に規定されている国会決議のルールについては「強行採決」なる言葉で【レッテル貼】して批判しています。これこそ究極の【ダブルスタンダード double standard / doublethink】であり、【都合のよい歪曲】による憲法軽視に他なりません。岸井氏が主張していることは、3人の参考人の多数票は、民意を反映している国会議員の多数票よりも優先されるべきであるということです。

2015/06/05 憲法学者の「違憲判断」の波紋 ”法の番人”歴代内閣法制局長官も問題視

岸井キャスター
長谷部さんたちが憲法違反と明言したことで雰囲気がガラッと変わったんですよね。国会が「憲法違反とされる法律を通すんですか。そんなことが許されるんですか。」という議論になってくるわけですね。

岸井氏は、参考人意見を根拠にして「憲法違反とされる法律」と【標語化 slogans / style over substance】しています。すなわち、本質的な議論を阻害する簡潔で明瞭なスローガンを記憶・音読させて視聴者の思考を停止させることで自説に導いています。

2015/06/09 安倍首相「憲法違反」に反論 安保法制 採決シナリオ練り直し

岸井キャスター
それで、現場で命を落とすだけではなくて、イラク戦争・アフガン戦争などいろいろなことがあって、(1)自殺が56人も帰国した後、出てるんですよね。政府としては「因果関係ははっきりしていない。特定できない。」と言っていますけれど、やっぱり原因をはっきりと明確にすべきだと私は思いますね。(中略)だけど、(2)この国会で採決は、そして成立を強行するということだけは、私は許されないのではないかと思いますね。

(1)岸井氏は、自殺者56人という大きな数によって視聴者を圧倒することで自説を宣伝する【大きな数に訴える論証 appeal to large numbers】を行っている可能性があります。[実際の統計]によれば、イラク派遣の自衛官の自殺率は、一般成人男性と同程度であるとされています。このように、コンテクストを欠いた統計値を用いて主張するのは【統計の誤用 misuse of statistics / statistics without context】という誤謬です。
(2)岸井氏は、ここでも合理的根拠を提示することなしに「法案成立は許されない」と主張しています。これは【思考停止論証 just because fallacy】という誤謬です。

2015/06/10 ”憲法違反”めぐり国会激論 中谷防衛相 発言撤回

岸井キャスター
次は安保法制の法案を巡って、多くの憲法学者が集団的自衛権の行使を憲法違反だと指摘している問題です。

膳場キャスター
おとといお伝えした法案に反対する憲法研究者の数は、その後さらに増え、(1)217人にのぼっています

岸井キャスター
(2)私の判断でいうと、政府が根拠としている砂川判決についても、72年の政府見解についても根拠になりえない。もう政府や与党が言っている論理は破綻してきたなという感じがするんですよね。(中略)国会で今、憲法違反になるかもしれない法律を論議しているということですから、(3)今国会の空気がガラッと変わってきましたね

膳場キャスター
(4)ちなみに、こうした中、去年に続いてノーベル委員会が憲法9条をノーベル平和賞の候補としました。授賞の発表は10月9日に予定されています。

(1)「News23」のスタジオでは、法案に反対する憲法研究者の数が217人であることを示すために、大型ボードに一人一人の名前を書き込むと同時に、前面に「憲法違反」なる巨大なサイズの文字をレイアウトするという過剰な演出を行っています。これぞまさに、視聴者にショッキングな印象付けるために過剰な演出を行う【イエロージャーナリズム yellow journalism】であると言えます。217人という大きな数を提示して視聴者を圧倒することで印象操作をする【大きな数に訴える論証】を行うにあたっての用意周到な小道具であると言えます。
(2)岸井氏は合理的根拠ではなく主観的確信を根拠に主張する【個人的確信に訴える論証 personal assurance】を展開しています。
(3)岸井氏は合理的根拠ではなく個人的印象を根拠に主張する【個人的直感に訴える論証 appeal to intuition / truthiness】を展開しています。
(4)膳場氏は、議論の内容とは直接関係しない情報を突然紹介し、自説の正当性を視聴者に連想させています。これは、無意識のうちに視聴者の心理を操作する【併記による誘導 juxtaposition】という悪質なプロパガンダの手法です。

2015/06/11 ”違憲ショック”から1週間 安保法制”弁護士”議員が論戦

膳場キャスター
自民党の高村副総裁、弁護士でもありますけれども、憲法違反という専門家の意見に反論を強めていますね。

岸井キャスター
そうですね。ただ、聞いていて、国と国民を守るのは憲法学者ではなくて我々政治家だという言い方なんか、どうも傲慢な姿勢が気になるんですね。先の大戦で間違った戦争へ国民を引きずり込んだのは誰なんだ。軍部と政治家ですよ。その反省に立って、戦後の立憲主義というのは、憲法が権力と政治家を縛ると、この基本を忘れてもらったら困ると思いますね。

民意を根拠とする実務者である政治家の判断が、研究者の判断よりも優先するのは合理的であるとも言えます。少なくとも、政治家の意見を無視して傲慢と断じる岸井氏の方が傲慢です。そもそも日本を戦争に導いた最大の要因ともされる世論形成を行ったのは朝日新聞と毎日新聞を中心とするマスメディアです。その恐ろしさをマスメディアが忘れてもらっては困ります。

2015/06/15 広がる”疑問”の声 安倍・橋下会談 安保法案 協議か

膳場キャスター
安保法制を巡っては、国会でも憲法学者による「憲法違反である」というあの表明から疑問の声が広がっていますよね。

岸井キャスター
疑問の声とそれから反対も急速に広がっているところがありますよね。

膳場キャスター
こうなりますと、強行採決許されないという雰囲気もあるんですけれども

岸井キャスター
民主党としては、徹底的に反論すべきだと私は思いますし・・・

岸井氏は、自説の方が支持者が多いと宣伝することによって視聴者を同調させる【大衆に訴える論証/情勢に訴える論証 argumentum ad populum / appeal to the bandwagon / appeal to consensus】を行っています。日本社会に対しては、「同調」による心理操作が極めて効果的であることが、しばしばジョークにされるくらい(笑)世界中に知れわたっています。

2015/06/18 「政治家としての責任」強調 憲法解釈変更の必要性訴える

膳場キャスター
一方、国会の外では、反対の声が高まっています。(1)安保関連法案に反対する学者や研究者の署名は、今日午後3時時点で4809人。そして今日、病に倒れ今もリハビリを続ける93歳の瀬戸内寂聴さんが国会前で声をあげました。(中略)寂聴さんのあの「日本は本当に怖いことになっていると申し上げて死にたい」っておっしゃっていることって、(2)本当に重みがありますね

岸井キャスター
そうですね。そういう空気を感じるんでしょうね。(3)私の周りでも様々な分野の方たちが反対の声をあげて、それが拡がり始めているというのを非常に感じますよね。

(1)言説の内容を根拠にするのではなく、言説支持者の社会的地位を強調して言説を重視させています。これは【ステイタスに訴える論証 appeal to status】という誤謬です。なお、日本には、研究者と呼ばれる人が約80万人いる([文部科学省]参照)ことに留意すべきです。
(2)言説の内容ではなく、「病に倒れ今もリハビリを続ける93歳」の努力というコンテクストを根拠にしてその言説を視聴者に重視させています。これは【努力に訴える論証 notable effort】という誤謬です。加えて、言説の内容でなく、論者が年長者であることを根拠に言説を重視させる【年長者に訴える論証 argument from age / elderly bias】、あるいは論者が著名人であることを根拠に言説を重視させる【著名人の推薦状 testimonial】という誤謬を用いている可能性もあります。
(3)他人の言説を無批判に肯定して主張するのは【他人の言説に訴える論証 ipse dixit / he, himself, said it】という誤謬です。客観性を装いながらも、自説に有利な情報のみを収集する【確証バイアス confirmation bias】に他なりません。

2015/06/25 ”自民批判”のアイドルグループ 市が出演イベントの「後援」取り消し

膳場キャスター
これは、今月13日、神奈川県の大和市が講演した市民団体のイベントの様子なんですが、出演したアイドルグループの言動を巡って、今日になって市が後援の取り消しを決定するという異例の事態となっています。

制服向上委員会
歌「おぉズサンナその態度 諸悪の根源 自民党」「(1)大きな態度の安倍総理 おじいさんと同じ エリート意識に眉間筋 お父さんと同じ

自民党小田博士大和市議
「やはり一番問題なのは本気で自民党倒しましょうと替え歌で歌っているということだと思いますね。これは政治運動、倒閣運動、反政府運動ですから。運動するのは構わないですけれど、それを市が、行政が後援するのはおかしいのではないかということになりますね」

岸井キャスター
この程度の批判で、それが受け止められないようでは国民政党とは言えませんからね。これはもう表現の自由とか言論の自由とか以前の問題でね。私が一番気になるのは、(2)自治体が過剰に神経をとがらせていて、事なかれ主義、責任逃れが横行していて、こういうことが前提にはならないでほしいなと思いますよね。

(1)この言説は「悪い人格の人物の子孫は悪い人格を持つ」とする【出自に訴える論証】によるヘイトスピーチです。このような差別発言を「この程度の批判」などと言っている岸井氏の見識のなさは絶望的です。
(2)特定の政党の主張を否定するような政治活動を行うイベントを行政機関が後援したとしたら、それは明らかに民主主義の危機であると言えます。小田氏が言うように、政治活動は自由ですが、行政がそれを後援するのは、三権分立の危機と言えます。この後援取りやめに怒りをぶつける岸井氏は、それこそ歯止めなく民主主義を危機に晒すことに発展しかねないとんでもない思い違いをしています。一方、もしも行政が与党の政治活動を後援していたとしたらそれは大問題になっている可能性があります。↓わずか4日後の次の報道がヒントになります。

2015/06/29 広がる批判に“幕引き”狙い…「マスコミ懲らしめる」で処分

ナレーション
百田氏は福岡市で開かれた講演会で会合での自らの発言をこう振り返った。

作家百田尚樹氏
「たまたま沖縄の新聞をふられたからね。「ははは」と笑いながら「あの新聞は厄介や。あれはつぶれてもらわんとな。ははは」って会場もどっと笑って、それで話は終わり。その一言

ナレーション
百田氏は講演後の取材に対し(1)「冗談の中の一言だった」と釈明したが・・・

(中略)
岸井キャスター
ちょっとこういうの過去に私も記憶がない。例がないと思うんですね。私も長い間、本当に自民党の中枢をずっと取材してきたんですけれども、こんなこと初めてですよね。(2)こうした議員たちが、これまでの国の形を、憲法違反かもしれないという法制を通すことで変えようとしているんですよ。こういう人たちがそれをやっていると思うと、本当に憤りをおぼえるんですよね。

(1)岸井氏は、大和市における民間人の公共の場での政治活動を行政が後援しなかったことに激怒したのとは対照的に、民間人の非公開会議での冗談発言を盗み聞きした一言に対しては、大批判キャンペインを繰り広げました。これこそまさに【ダブルスタンダード】であり、マスメディアによる言論の自由の弾圧です。自分に対する批判を【タブー taboo】として拒否することで、同業者に対する民間人の批判を回避しています。すなわち、民間人がマスメディアを批判する言論の自由を奪っています。三権が批判することができないマスメディアを民間人が批判できなければ、マスメディアは無敵となり、国民を支配する主権者となってしまいます。しかも密室での会話を盗み聞ぎするなど、まさに秘密警察の手法を用いています。これ以上ない言論の自由の危機と言えます。
(2)岸井氏は、本件とは全く関係がない安保法案を、議員の人格を根拠にして否定しようとしています。これは、言説の内容を根拠とするのではなく、言説の論者の人格を根拠にしてその言説を否定する【対人論証 ad hominem abusive】と言えます。

2014/07/02 広がる”安保反対” ノーベル賞・益川氏が反対する理由

膳場キャスター
このところ(1)渋谷の街中で若者が大規模な反戦の集会、行進を行っていたり、急速に声をあげる動きが拡がっているのが実感しますね。

岸井キャスター
そうですね。本当に今出てた(2)物理学者の益川さんも、やっぱり戦争を知る世代として、ここで声をあげなければという非常に強い思いがあるんでしょうね。

膳場キャスター
政府与党は、当初採決までの審議時間の目途を80時間としていたのですけれども、これ振り返りますと、かつてPKOの審議では87時間、そして周辺事態法は94時間かけています。今の安保法制というのは、(3)これらを含む11もある法案をまとめて審議しているわけですので、1本分にあたる80時間で十分というのは、あまりに短い気がしますね

岸井キャスター
これ、明らかに短いですよね。(中略)驚くことに与党内では審議が尽くされたっていうんですよね。(4)とんでもないですよ。こういう話ってね。

(1)若者の素朴な一般的印象を根拠にしてその言説を肯定的に捉えるのは【素朴さに訴える論証 appeal to plain folks】という誤謬です。若者であろうが老人であろうが中年であろうが、法の下の平等は憲法14条で保障されています。
(2)番組では一人のノーベル賞受賞者の主張を長々と肯定的に報道しています。これは、論点とは異なる分野の権威者の言説を無批判に肯定する【偽の権威者に訴える論証 appeal to false authority】という誤謬です。
(3)一部マスメディアは、今回の安保法制において「無謀にも合計11本もの法案を一気に議論した」と主張していますが、今回の法案の論点が過去に制定されている国際平和協力法や周辺事態法の10倍あるかというと、けっしてそうではありません。今回の法制の目的は、過去に制定された法律体系におけるセキュリティーホールを潰していくことであり、このためには、有事法制・国際平和協力法・周辺事態法等の10本の法律の一部改正と1本の法律(国際平和支援法)の新規制定・挿入が必要であったということです。むしろ内容の革新性や重大性は、今回の安保法制よりも周辺事態法の制定にあった可能性があります。なぜなら、後方支援により敵対勢力に武力行使する周辺事態法は集団的自衛権の行使に他ならないからです(国際的認識では後方支援は武力行使と解釈される可能性があります)。
(4)岸井氏は「とんでもない」という認識を根拠にして主張しています。これは、常識に対する個人的見解を根拠にして主張する【常識・自明に訴える論証】という誤謬です。

2014/07/14 国会周辺に反対2万人超 「安保法案」あす採決強行へ

膳場キャスター
集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法案が明日衆議院の特別委員会で採決されることが正式に決まりました。

岸井キャスター
戦後日本のあり方を決める本当に重要な法案です。(1)国民多数の疑問と反対を押し切って本当に決めてしまうのか、驚きを禁じえませんね。(中略)今、ここに出ているミサイルの朝鮮有事的なものでも、(2)日米安保と周辺事態法で十分対応できるのではないのかなという疑問が一つありますし、それから何といっても今度の安保法制の狙いは、(3)米軍が関わっている紛争地や戦場にいつでもどこへでも自衛隊を派遣できるようにする。少なくとも、そこに道を開くというものだと。そこをはっきりさせていないんですよね。


(1)岸井氏は、「国民多数」という言葉を、憲法規定の「選挙における多数」ではなく、「デモ参加人数」や「一部の民間報道機関の世論調査結果の多数」と混同しています。これは【言葉曖昧の虚偽 verbal ambiguity】という誤謬です。そればかりか、憲法規定の「選挙における多数」を軽視する発言です。まさに憲法軽視、間接民主主義の危機であると言えます。
(2)岸井氏は、個人的見解を事実と混同する【意見・憶測・推測と事実の混同 confusing opinion, speculation, inference with fact】を犯しています。岸井氏は客観的な根拠を示すべきです。一人の素人の憶測が世論となって国の安全が危機に晒されることは回避すべきです
(3)【誤情報の繰り返し】です。

2015/07/15 問われる平和国家のあり方

膳場キャスター
安全保障関連法案が衆議院の特別委員会で可決されました。

岸井キャスター
(1)憲法と国民を軽視した数による暴挙です(2)私も50年近く日本の政治を取材してきましたけれども、これまでにない戦後憲政史上の汚点と言わざるを得ないと思います。(中略)今日の採決というのは、権力の暴走と言えるのではないかなという。(3)これは古今東西歴史で権力というのは必ず腐敗し、ときに暴走するという、こういう言い伝えがあるわけですよね。そういう中で一番心配なのは、(4)本当のことを、本当に国民が思っていないこと、あるいは、いずれ総合的に判断するとして、何も決めていない非常に曖昧な、そういう言葉が氾濫していて、とても国民の耳には届かない、そういうことが多いんですよね。その中で唯一、だんだんわかってきたことは、「(5)アメリカから要請があれば、自衛隊をいつでもどこへでも出しますよ。自衛隊を派遣しますよ。」ということだけは、非常にはっきりしてきた。やっぱりこういうことで、(6)憲法学者や国民の声を、耳を傾けないという、そういう自由な言論を認めないということは、本当に。権力の暴走ではないかと言わざるを得ないと私は思いますね。


(1)政権公約の法案を与党がルールに則って議決したことに対して「強制採決」なる【レッテル貼】を行い、「数による暴挙」という【標語】で批判するのは憲法軽視そのものです。まさに憲法と国民を軽視したマスメディアの暴挙です。
(2)岸井氏の報道パターンとして、「長い記者生活において、こんなことは初めて」を連発する特徴があります。これは、「ど根性ガエル」の町田先生の「教師生活25年」と似ています(笑)。時空連続体で構成されているこの世の中においては、常に新しい事象が発生するわけですから、「こんなこと初めて」というのは特に珍しいことでないことに留意する必要があります。
(3)岸井氏は、「権力というのは必ず腐敗し、ときに暴走する」という言説を提示し、今回の与党の採決がこれにあたるとしています。与党が今回行ったのは、岸井氏が衆議院の選挙前に断言していた「政権公約は断行されなければならない」という目的の一つのステップをルールに則って実行したにすぎません。このことを批判することは、ある事物は悪くあるべきなので悪いとする【道徳主義的虚偽 moralistic fallacy】という根拠なき詭弁です。岸井氏は「メディアが暴走して国民世論が形成され、戦争に進んだ過去」を無視しています。安保法案不成立による抑止力不足で戦争が起こる可能性も十分にあります。両論併記なしに、テレビキャスターが一方的な個人的見解を視聴者に押し付けるのは、国民からリスクヘッジの選択の自由を奪いかねない極めて危険な暴走行為です。岸井氏は、マスメディアという第4の権力が無責任に暴走していることを自覚する必要があります。
(4)何を言っているのか、さっぱりわかりません。
(5)【誤情報の繰り返し】です。これほど繰り返されると、もはや、信じるまで嘘をつき続けることで自説に導く【大嘘テクニック big lie technigue】である可能性もあります。
(6)自分の主張と異なる結果となったことを根拠に「憲法学者や国民の声に耳を傾けない」「自由な言論を認めない」とするのは、あまりにも公平性を欠く発言であると同時に、憲法が規定する間接民主主義のシステムを軽視しています。与党は、一部憲法学者や声の大きい一部国民の声に耳を傾けながらも、採決ではその主張とは逆の投票をした可能性もあります。もし事実を受け入れられないのであれば、一般意思が反映される直接民主制を日本が採用するように憲法を改正する運動を行った方が良いと思います。なお、与党は言論の自由については完全に認めています。言論の自由が保障されている中で言論の自由を声高に叫ぶことで論敵に言論抑圧者の印象を植え付けるのは【言論の自由の主張 I'm entitled to my opinion】と呼ばれるプロパガンダの手法です。



以上が、衆院選挙後から安保法制の衆議院可決までの流れです。このステージにおいても、岸井氏の報道が極めて自分勝手なものであり、公平性と一貫性に欠けるものであることが示されたと思います。次回の第4回は、安保法制の衆議院可決から参議院可決に至るプロセスを中心に検証を行っていきます。