俺は小春の事が好きや。

俺には小春しかおらん…そう思っとった。




「来る…来ない…来る…来ない…」


「ユウジ先輩…何してんスか?」


振り返ると、財前が立っていた。


「見ればわかるやろ?花占いや。小春が俺んとこ戻って来るか占ってたんや」

「花占いて…笑。まだ小春先輩の事、引きずってたんスか?諦め悪いっスね」

「うっさいわ。お前には関係ないやろ!!」


小春にフラれて一ヶ月。


俺は抜け殻のようだった。


「元気出してくださいよ。ユウジ先輩が元気ないと、こっちまで調子狂うんスわ」


財前はそう言いながら俺の横に座った。


「なんや…慰めに来てくれたんか?」


「まあ…そんなとこっスわ…」


意外にエエ奴やな…。


「なぁ…財前、俺のどこがアカンのやろ?」


「全部ちゃいます?」


めっちゃ真顔で言われた。


こいつに聞いたのが間違いやった。


「もうエエわ…」


「アハハ、冗談っすよ。俺はユウジ先輩の事好きっすよ?」


傷心の俺には浸みる台詞やな。


「せやろ?優しいし、オモロイし、男前やし…」


「いや…そこまでは言うてませんけど…」


「そか…」


アカン…普通の返ししてもうた。


やっぱ小春がおらんと調子出えへんな…。


俺は、はぁ…っとため息をついた。


「ユウジ先輩…そんな小春先輩にこだわらんくてもエエんちゃいます?」


肩にポンとのせられた財前の手を振り払うと、俺は奴を睨んだ。


「俺には小春しかおらへんのや!お前みたいにモテる奴にはわからんやろな!」


俺の言葉を聞いた財前が少し悲しそうな顔をした。


「先輩…俺、自分の好きな人には好かれんのですわ…。」


「そ…そうなんか…?」


悪いこと言うてしもたな…。


「その人、いっつも俺の前で好きな人の話ばっかするんすわ…」


「そら辛いな…」


なんや、財前も苦労してるんやな…。


「その人、フラれたくせに、相手の事ずっと引きずってるんすわ」


「そいつフラれたんか?チャンスやん!!」


そう言うと、財前は呆れたような顔で俺を見て、ため息をついた。


「なっ…なんやねん、その顔は!?」


「先輩…ホンマ鈍感っすね」


はぁ?俺が鈍感?


「ユウジ先輩…ここに来たんは、ホンマは慰める為ちゃうんスわ」


そう言うと財前は俺の顔を覗き込んだ。


「なっ…近いわっ!」


思わずのけ反ってしまった。


「ホンマはユウジ先輩の悲しみに付け込みに来たんス…」


「はぁ?何言うてん…」


と、財前の顔が近付いてきたと思ったら、唇に柔らかい感触が…


「なっ…何しとんねんっ!!」


俺は制服の袖で唇をゴシゴシと擦った。


俺のファーストキスが…


「ユウジ先輩…ホンマは俺の気持ち、わかってはるんやろ?」


「お…お前の気持ちなんてわかるわけないやろ!!俺の事、からかって楽しいんかっ!?」


財前は悲しそうに笑った。

なんやねん…。


「ユウジ先輩は、小春先輩の事しか見てへんもんな…」


財前はそう言うと立ち上がり俺の前に立った。


「俺、ユウジ先輩の事好きなんスわ。ホンマに…好きで好きでたまらんのですわ。」



その日から、俺は財前を避けるようになった。


いきなりあんなん言われても、どうしてエエかわからん。


でも、気付くと財前の事ばかり考えていた。


常に財前を目で追っていた。


せっかく小春と仲直り出来た言うのに、小春とおっても財前の事考えてた。


俺…おかしなってしもたんか…。


財前の事が気になってしゃーない…。


「ユウくん、他に好きな人出来たんちゃう?アタシの事は気にせんでエエんやで?」


ある日、小春に言われた。


「ユウくんのアタシに対しての気持ちは、LOVEやなくてLIKEやと思うわ。ホンマに好きな人が出来たんなら、アタシ応援しちゃう♪」


ちゃうんや小春…俺が好きなんは…


俺が好きなんは…


俺が好きなんは誰や?


俺は財前の教室へ走った。


「財前!ちょお来いやっ!!」


「ユ…ユウジ先輩!?」


俺は財前の腕をつかみ、そのまま屋上まで引っ張っていった。


「先輩…痛いっす…」


「お前のせぇや…お前のせぇでおかしなったんや!」

俺は財前の胸をドンっと叩いた。


「よかった…」


「何がよかったやねんっ!!」


「久しぶりにユウジ先輩と話せたから…」


「なっ…」


俺は財前の胸倉をつかんだ。


「お前がそんなん言うから…キスなんてするから…」

「先輩…?」


「お前のことばっか考えてまうやろ!めっちゃ苦しいねん、めっちゃ辛いねん!どうしてくれるんやっ!!」


いつの間にか、涙がボロボロこぼれていた。


「先輩…泣いてんすか?」


「うっさいわ!アホ!ボケ!カス!」


もうホンマ訳わからん。


なんやねん、これ…


「ユウジ先輩…それ多分、恋っすわ。先輩、俺の事好きなんすよ」


「なっ…なんでそうなんねん!!」


「ほらっ、こうするとめっちゃドキドキしません?」

財前はそう言って俺をギュウっと抱きしめた。


「なっ…!?離せやっ!」


そう言ったものの、ホンマはめっちゃドキドキしていた。


全然嫌やなかった。


財前の腕の中は居心地がよかった。


これが恋なんか?


そうやとしても…


「…百歩譲って俺が財前の事好きやとしよう…したら、俺どないしたらエエんや?」


「何がですか?」


「最近まで小春小春、言うてたのに…」


「なんや、そんな事か」


財前は俺から腕を離し笑った。


「待ちますよ、俺。ユウジ先輩がエエようになるまでいくらでも待てますわ」

「財前…」


「ずっと、先輩達がイチャついてんの目の前で見てきたんスよ?そっちの方が辛いわ。やから、先輩が俺の事めっちゃ好きになるのを待つなんて全然余裕っすわ」


財前の言葉を聞いてまた涙か溢れてきた。


俺の涙腺、どないなっとんねん。


「先輩、泣きすぎっすわ…笑」


俺はまた財前に抱きしめられていた。


「ユウジ先輩…キスしてエエ?」


「なっ…」


財前の顔が近付いてきて、俺はギュウっと目を閉じた。


「…やっぱやめときますわ」


そう言うと財前は俺からパッと離れた。


「なっ…なんでやねん!」


胸がギュウってなった。


もう、冷めてしもたんか?


「ユウジ先輩が、俺の事めっちゃ好きになって、泣いてキスしてぇてなるまでお預けにしときますわ…笑」


なっ…!?


「そんなんなる訳ないやろ!アホかっちゅうねん!!」


「アハハww」


なんや…気持ち冷めたんやなかったんか…。


俺は財前の笑顔を見てホッとしていた。


こらアカンな…。


泣いてキスしてぇ…か…。


そうなるのもそう遠くない気がした。


☆おしまい☆


ギャグ系の短めの話にしようとしたら、めっちゃ長くなった(>_<)

途中で嫌になったでしょ?(^_^;)

最後まで読んでくれてありがとうごさいました☆

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