のび太「あ、えっと、別になんでもないよママ」
ドラえもん「あれ?どうしたんですか、ママさん?そんなオサレな格好して」
ママ「さっき、パパから連絡あって、昇進が決まったそうなの。今夜はステーキでもなんでも、好きなもの食べに行きましょう♪」
ドラえもん「ステーキ!うわーい!ステーキ!」
ドラえもんは、食べかけのどら焼きを放り投げて、飛び上がって喜んだ。
ママ「じゃあ、ママ、どこでもドアで先に行ってるわね」
ドラえもん「え?ど、どこでもドア使うんですか?ママさん」
ママ「ええ、そえよ。歩いて行くにはちょっと遠いし。」
ドラえもん「、、、、えっと、アイタタタ。急にお腹が痛くなってきた。僕のことはかまわず、外食してきてください」
のび太「え?ドラえもんいかないの?ステーキだよ?」
ドラえもん「いや、お腹痛いし」
ママ「あら、そう?じゃあ、お留守番よろしくね」
バタン
ママはどこでもドアの中に入っていった。
ゴトッ、ゴトッ!ゴトゴトゴトゴトッ!
ママが入ったどこでもドアは、不気味な振動を繰り返していた。
のび太「ねぇ、ドラえもん、なんでどこでもドアって、使った後、5分も待たないといけないの?」
ドラえもん「それは、完全に溶け、、、ゲフン!ゲフン!
あ、いや、転送に時間がかかるんだよ」
のび太「ふーん」
チーン!
どこでもドアの転送が終了したことを告げる、まるで電子レンジのような音が鳴った。
ドラえもん「さだ、次はのび太くんの番だよ。話の続きは帰ってから、またにしようよ」
のび太「うん、じゃあ行くね。ドラえもんは本当に行かないの?」
ドラえもん「ボクのことは気にしないでよ」
のび太「うん、わかった。じゃあ」
何故だろうか?のび太は、自分を見送るドラえもんの無機質な笑顔を見ていると、急に、黒々としたものが胸に湧き上がってきた。
のび太「えいっ!!」
のび太は、ドラえもんの後ろに回り込み、思い切り突き飛ばした。
ドンッ!!
ドラえもん「うわぁああああ!」
何をするんだよ、のび太くん
といって起き上がったドラえもんは自分がいる場所が、どこでもドアの中だと気付いて、ただでさえ青い顔が、さらに真っ青になった。
大慌てで、ドアから出ようとするドラえもん。のび太はドラえもんを外に出さないように、体全体でドアを押さえつけた。
のび太「いいじゃないか、ドラえもんも行こうよ!」
ドラえもん「いやだ!いやだ!絶対に嫌だ!開けるんだ、のび太!」
最初は、ちょっとイタズラのつもりだったが、ドラえもんのあまりの慌てぶりに、何故かのび太は、許しがたい怒りがこみ上げてきた。
ドラえもん「出せー!のび、、、」
バタン
ドアからは、もうドラえもんの声は聞こえなかった。
ゴトッ、ゴトッ、、、ゴトッ、、、。
不気味に揺れるどこでもドア。
のび太は、膝を抱えて座り込み、自分の順番が来るのを待っていた。