本を読んで 、イメージする力 のことなど書いてきましたが、今日は音楽の時間に取り扱う歌について、少しお話し致しましょう。
たいがいの人は歌を歌うとき、その歌詞から情景を想像しながら歌っていると思います。
時には、それが自分自身の何らかの思い出と重なったりするんですよね。
ところで、音楽の教科書に登場するいろいろな歌ですが、時代の流れと共に、世の中にマッチしなくなったものは、いつの間にか消えていきます。
例えば、大正時代にすでに「尋常小学唱歌」に発表され、少しずつ歌詞が書きかえられながらも、「文部省唱歌」として歌い継がれてきた「村の鍛冶屋」。
昭和30年代頃からは、農作業も機械化され、鋤(すき)や鍬(くわ)を製作する鍛冶屋という職業も衰退してしまいました。
「しばしも休まず槌打つ響き。飛び散る火花に、走る湯玉。」(作詞・作曲共に不詳)
その歌詞に歌われている情景を想像することすらできなくなってしまった現代社会。
鋤や鍬という道具はありますが、「そういうものを生産する工場で作られるんだろうなあ。」と、きっと子どもたちも思うでしょう。
そんな中で、今でもしっかりと歌い継がれている「文部省唱歌」が、いくつかあります。
そして、これらは「共通教材」として、どの会社の教科書を使っていても、日本の子どもたちは、その学年でかならず学習することになっているんです。
これまでの指導要領では、例えば、「この4曲のうち3曲を」といった選択制でしたが、新しい指導要領に変わってからは、「この4曲すべて」に変わりました。
では、どんな曲が今でも歌われるのでしょうか?
1年生では、「うみ」、「かたつむり」、「日のまる」、「ひらいたひらいた」(わらべうた)。
2年生では、「かくれんぼ」、「春がきた」、「虫のこえ」、「夕やけこやけ」。
3年生では、「うさぎ」(日本古謡)、「茶つみ」、「春の小川」、「ふじ山」。
4年生では、「さくらさくら」(日本古謡)、「とんび」、「まきばの朝」、「もみじ」。
5年生では、「こいのぼり」、「子もり歌」(日本古謡)、「スキーの歌」、「冬げしき」。
6年生では、「越天楽今様」(日本古謡)、「おぼろ月夜」、「ふるさと」、「われは海の子」。
が、採り上げられています。
これらは、まだ、その情景をなんとか思い浮かべることができますね。
例えば、「おぼろ月夜」。
春の田園風景がイメージとして浮かびますが、この歌の作詞者、高野辰之が生まれ育った奥信濃の情景だったそうです。
そのあたりの当時の千曲川畔は、菜種油をとるための菜の花の栽培がさかんで、菜の花畑で、黄色一色に染まっていたとのこと。
現代では、電灯が普及して、菜種油の需要はぐっと少なくなってしまいましたので、菜の花畑(畠)に、入り日が薄れるというような風景は、あまり見られなくなってしまいましたね。