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“三次喫煙”が発がん性物質を形成

 みなさん“三次喫煙”という言葉をご存知ですか。

 タバコの煙の残留物が日常接するものの表面に残ることで、三次喫煙(third-hand smoke)として、2009年1月、米国小児科学会誌に掲載された米マサチューセッツ総合病院の小児科医らが執筆した論文で初めて用いられた最近の考え方で、日本のメディアはまだあまり取り上げていません。

$かずのつぶやき-タバコ部屋


 今回、三次喫煙が空気中の物質と結合して強力な発がん性のある物質に変化することをローレンスバークレー米国立研究所室内環境部のHugo Destaillats博士たちがProceeding of the National Academy of Sciences,USA(PNAS,2010;オンライン版)に発表しました。

 博士たちは室内空気内に含まれる大気汚染物質の亜硝酸(HNO2)に曝されたニコチンの変化を調べ、亜硝酸とニコチンの化学反応が健康に重大な悪影響を及ぼす可能性があることを指摘しました。

 博士たちは吸着剤に吸着されたニコチンをモデルとして調べ、喫煙者が運転する車内のインテリアの表面を調べました。この車内では3日間に34本のタバコが吸われました。

 その結果、ニコチンの残留物はただちに亜硝酸と反応し、タバコに特異的なニトロソアミンが形成されました。
 このようなニトロソアミンのうちのいくつかは、突然変異をすることが動物実験で確かめられており、知られている発がん物質として同定されたものこあります。

 ニトロソアミンの室内での安定性を検討した結果、タバコの煙が消えてから2時間以上経過しても完全に分解されるのは50%未満であることがわかりました。

 ニトロソアミンに曝される経路として最も考えられるのは、衣類、皮膚、家具などの表面やホコリとの接触を介してであり、乳児や幼児は成人よりもニトロソアミンに接する量が多い可能性があるといいます。

 米国癌協会(ACS)によると、三次喫煙は比較的新しい研究分野であり、その曝露と癌リスクにどのような関連があるのかは不明ですが、二次喫煙(受動喫 煙)に比べればリスクは小さいと考えられます。しかし博士たちは、非喫煙者(特に乳幼児)が汚染された壁面やほこりに接触して、タバコの残留物を吸入すれば、健康にリスクが生じる可能性もあると指摘しています。

 ACSのThomas J. Glynn氏は「三次喫煙の危険性について調べることは、タバコの影響を研究する上で理論的な次のステップである」と述べるとともに、煙の残留物と室内の 化学物質から発がん物質が作られるとの考えは生物学的に妥当なものだと指摘しており、「ACSとしては、最終的な健康への害の可能性を調べる研究はどのようなもので も称賛する」と述べています。

 やっぱり、あのタバコ臭い部屋はタバコの煙がなくても健康に有害なのですね。三次喫煙の概念が広く知られれば、完璧に愛煙家の居場所はなくなってしまいそうですね。