果糖は危険な糖? | かずのつぶやき

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 果糖は危険な糖?

 果糖のさまざまな悪影響

 果物や清涼飲料水に多く含まれる果糖(フルクトース)に関してアメリカを中心にして大論争が起こっていることをご存知でしょうか。
 それは果糖の過剰摂取によって糖尿病や高尿酸血症(痛風)、高トリグリセライド(TG)血症、高血圧などを悪化させる可能性を示す報告がある一方、悪影響に否定的な意見もあるからです。日本ではアメリカを後追いする形で果糖の摂取量が急増していますが、健康への影響に対する関心は低く、むしろ「健康のため果物を食べましょう」の風潮が強いようです。

 今回、京都で開かれた第12回日本病態栄養学会のシンポジウム「フルクトースをめぐる諸問題」で最新の研究結果が討議されました。

 果糖を含むコーンシロップ

 アメリカでは1980年代から甘味糖類の消費量が急速に増えてきましたがそれはおもに果糖を多量に含むコーンシロップの消費量増加によるものです。コーンシロップは字のごとくトウモロコシから作られる甘味料で、米国で最も多く生産、消費されていますがそのおもな輸出先の1つが日本で、コーンシロップを用いた清涼飲料水が大量に飲まれており、肥満や生活習慣病などへの影響が懸念されています。

かずのつぶやき-果糖


 果物やジュース摂取の聞き取りを

 帝京大学内科学の山内俊一教授は、果糖やその中間代謝物が強い毒性を持ち、肥満や痛風、非アルコール性脂肪肝などをもたらす可能性があるとして、生活習慣病の診療において、果物や清涼飲料水の摂取状況の聞き取りを行う必要性を強調しました。

 果糖(フルクトース)はブドウ糖(グルコース)とともに代表的な単糖類でいずれも自然界に広く存在します。しかし教授はその性質は大きく異なり全く別の糖と考えるべきだと指摘しています。

 生体に対する糖の障害作用グリケーション(糖化)ポリオール経路などで認められますが、こうした障害を及ぼすのは開環状態という状態にある糖です。果糖の開環率はブドウ糖の約300倍で、「危険な糖」と考えられています。

 肥満リスクを高める

 健康への影響に関しては、ブドウ糖と異なり、血糖のコントロールをするインスリンや食欲と代謝の調節をするレプチンの分泌を高めたり、食欲を抑えるホルモン、グレリンを抑えるといった作用を持ちません。そのため、いわゆる満腹中枢を刺激せず摂食抑制が起こりにくいためエネルギー過剰摂取、肥満リスクを高める可能性が指摘されています。

 脂肪の合成を促進

 果糖の過剰摂取は脂質の合成を促進します。滋賀医科大学代謝内科の西尾善彦先生らはマウスに果糖が多く含まれる餌を与える実験で、肝臓で脂肪の合成に関わる遺伝子の働きを大幅に亢進させ、脂肪の分解に関わる遺伝子の働きを抑えることを明らかにしました。

 尿酸値を上昇させる

 果糖の過剰摂取は血清尿酸値を上げ、高尿酸血症や痛風のリスクを高めることが報告されています。兵庫医科大学内分泌代謝内科の山本徹也教授は果糖の過剰摂取による高尿酸血症は、インスリン抵抗性により腎臓における尿酸排泄が低下し、血液中の尿酸値が上昇すること、また体内で果糖が変化する過程で急激にエネルギーの単位であるATPを消費するため、ヌクレオチド分解やピリミジン分解が進み尿酸値を上昇させる
としました。
 血清尿酸値は果糖摂取と同様にATPを消費する“運動”を負荷した場合も上昇し、運動後に果糖を摂取した場合はさらに上昇しました。
 ジョギングのあとにコーラをグビグビ飲むことは痛風の原因になります!

 肝臓にも障害

 また、動物実験(ラット)で果糖を多く含む餌を長期に食べさせると肝臓に非アルコール性脂肪肝炎(NASH)様変化が認められました。

 果糖(フルクトース)の測定法はまだ確立していないため、生活習慣病などの診療で医師や栄養士が果糖を多く含む食品、果物や清涼飲料水などをどのくらい摂っているかの聞き取りを行うことが重要であり、少なくとも生活習慣病の患者さんは果糖の過摂取は控えた方がよいでしょう。

                        果物も食べ過ぎはよろしくないようです。