登場する人物、団体、名称はすべて架空のものです。


この小説は


”Obsessed with you”、


”Forbidden Affection”との


連動小説となっています。


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日曜日の朝がやってきた。


昨日は一日中、


あることを考えていた。


先生の実家にお呼ばれしたこと。


一昨日の夜、先生のお姉さんに誘われた。



ドラマでしか見たことがないけれど


交際している相手の実家に行くってことは・・・


つまりは結婚に繋がっていくということなのかな…





今まで結婚なんて言葉は自分には無縁で


考えたことすらなかったけれど


急に目の前に現実味を帯びた言葉になって、


私は想像以上にドキドキしてる。



先生と結婚。



先生のお父さんやお母さんやお姉さんが


私の家族になって、


私は先生と一生を共にして


先生と子供を育てる。



そう考えるだけで


なにか今まで開けたことのないドアの前に立っている気分だった。



自分の知らない世界。


うーん。


実際の結婚って何が待っているんだろう。




でも、先生と一緒だったら


やっていけるかもしれない。





先生からまだ結婚のけの字も聞いていないのに


わたしはそんな事を考えて、ニヤニヤしていた。




その時だった。



携帯の電話着信音が鳴った。




日曜日の朝にかけてくる人と言えば


先生くらいかな?




ベッドに置いた携帯を拾い上げてみると


知らない電話番号が表示されてる。




・・・誰だろう??・・・



応答するかどうしようか悩んでいるうちに


携帯が鳴りやんだ。




間違い電話かなぁ・・・・


大事な用件なら


もう一度かかってくるよね・・・。



そう思った直後


さっきの電話番号から


再び電話がかかってきた。



少し迷った後、


私は通話ボタンを押した




「・・・はい。」




「・・あの・・・九条美桜さんですか?


急にお電話さし上げちゃってごめんなさい。」



その声に聞き覚えが全くないけれど、


電話の相手は私の名前を知っていた。



声の感じだと年上の女性。


初めて聞いた声にもかかわらず


何故か冷たい感じがする。





「・・・どなたですか?」



一瞬躊躇した後相手が誰なのか尋ねると




「私、恭祐…桧山恭祐さんの友人の


南雲って言います。」





そう言った。



桧山先生の友人…?




しかもこの人


先生のことを「恭祐」って呼び捨てにしてる。


なんか、


「彼のことをよく知ってるんですよ」


とでも言いたげなその口調。






「突然、申し訳ないのだけれど」



彼女はそう断った後で


「あなた、恭祐とお付き合いしているんですって?」



電話の相手は


ドキッとすることを聞いた。




私と先生が付き合っているのを知っているのは


先生の家族くらいのはずなのに…。




「・・・・あの・・・


南雲さん?のこと、私、どなたか知らないので、


お答えし兼ねるんですが・・・」




ドキドキしながらそう言うと




「そうですよね。


恭祐がだれかとお付き合いしていることは知っていたので・・


それで実は、私、その相手を調べたんです。




そうしたら・・・びっくりしたわ。


お相手が教え子の女子高生だなんて・・」




この人の話し方はいちいち険があるなぁ・・


それにしても


この人、一体何のために電話してきたんだろう・・?





「・・結局、お電話の目的は何なんですか?」



少しツッケンドンに尋ねると



その南雲と言う女性は



「じゃ、単刀直入に言いますけれど」


と言った後





「恭祐さんと別れてほしいんです。」





その人は


ばっさりと切り捨てるような言い方をした。






その本当に単刀直入すぎる物の言い方に


私は一瞬言葉が詰まってしまった。




ゴクリと息を飲み込んで



「・・・なんで・・・


あなたにそんなこと言われないといけないんですか?」



私がやっとのことで聞き返すと



「やっぱりお付き合いしているのね・・」




と彼女はまるで、


私が誘導訊問に引っかかったとでも


言わんばかりの言い方をした。




「・・・・九条さん?あなた、


恭祐の夢をご存じですか?」




そう聞かれて


彼女が何を言わんとしているのか分からず


黙っていると




「恭祐、あなたには何も言っていないみたいね・・


彼の夢は大学で英文学を教えることなのよ。


そして、私の父はね、東都大学で教授をしているの。」



さっきから彼女が何を言いたいのか


全くわからない。





「・・・それが何ですか?」



私がそう尋ねると



「ほんっとに・・若いと何も考えないのね・・」




彼女が「嫌みを言っています」と言わんばかりに言った。




「あのね、、教師が教え子と交際しているなんて


世間に知れたらどうなると思う?


職がなくなるだけじゃないわ。


それ以降、教育者としてもう仕事が


できなくなるっていうことなのよ。




将来機会が開ければ


私の父に恭祐のことを推薦してもらうつもりだけれど


あなたとの交際が世間にばれたり


結婚したりなんてことになったら


教え子と関係を持っていた教師を推薦するなんて


いくら父でもできないわ・・。」



関係…?




「か・・関係なんて、私、もってません!!」




「あら・・・そうなの?!。


恭祐、私とは何度も体を重ねたのに


あなたとはまだなのね。」



その女性はわざとらしく驚いて見せる。


その言葉を聞いて


体がカァっと熱くなった。


この人は友人じゃなくて


先生の元彼女なんだ・・。





彼女は言わなくてもいいことを言った後に



「でもね、そうだったとしても、


教師が生徒と交際していると聞いて


体の関係がないなんて、


世間はそうは思わないわ。


あなた達ががいくらそうじゃないと否定したとしても、


交際しているイコール


『肉体関係も含んでいる』としか見ない。」


「ま、あなたが卒業してるか、どうかに関わらず、


教師と教え子が結婚するなんて


教育界では評判はあまり良くないわよね。


ずっと後ろ指を指されることになると思うわ…」








あまりにも用意周到なそのコメントに


私は言い返す言葉がなかった。


言えたのは


「・・結婚するかどうかなんて決まってません」


と言うことだけだった。




その言葉に彼女は



「でも、あなた、彼の実家に誘われたんでしょう?」



とまるで空かさず攻め込むような言い方をした。



それは一昨日先生と楓さんだけしか知らないであろう話題だった。



この人にどこまで情報が伝わっているんだろう。




驚いて何も言えずにいると、




「あのね、恭祐のお母さんと私の母は仲がいいのよ


恭祐のお母さんが私の母に言ったらしいわ。


恭祐が交際相手を連れて来るって。


それを聞いて、私、今すぐ電話しないとと思ったのよ。


今、恭祐は人生の分岐点に立っていると言っても過言じゃないわ。


でも、本人はそれに気づいていない。


あなたがもし本当に恭祐のことを好きなんだったら


恭祐のことを一番に考えてほしい。


私も恭祐が大好きなの。


恭祐に夢を叶えさせてあげたいのよ。


だから、あなたにも協力してほしい。




言いたかったのはそれだけよ。


じゃぁ・・・いきなり電話をしてごめんなさいね。」



彼女は言いたいことを言い終えたらしく


その電話はすぐに切れた。




私はその後しばらく何も考えられなかった。


ただあの女性が言った言葉が頭の中に渦巻いていて


今までの楽しかった時間が一気に色褪せていくように感じた。



悔しいけれど・・・


確かに


あの人の言っていたことは正しい。





私だって他の先生が教え子と結婚したと聞いたら


その先生、何を考えて授業をしていたんだろう、


とか、


あの時、その生徒を依怙贔屓してたんじゃないかとか


とっても複雑な気持ちになると思うし、


何より先生は生徒を恋愛対象として見ていたのと思うと


気味悪く感じるかもしれない。




わたし・・


お気楽にしていたけれど


先生と付き合うって


先生の未来を揺るがしてしまうかもしれない


重大なことだったんだ。




今までの浮かれていた気持ちが


吹き飛ばされたようだった。





その日から、私の先生に対する気持ちは


複雑になって行った。



先生には夢がある。


その夢を私が潰してしまうのかもしれない、


そう思うと罪悪感さえ感じる。


だからと言って


決断を下せない。大好きだから別れたくない。







どうしたらいいんだろう。




私はあの電話があった日から


毎日毎日そればかりを考えていた。




______________



悩み続けていたある日、


先生から連絡があった。



今日家に遊びに来ない?


というお誘いだった。




こんな気持ちで、先生のところになんて


遊びに行けないなんて思いながらも、


でも・・・大好きな先生に会いたい。




私は結局先生のところに遊びに行った。





私が日曜日に


先生の元彼女と電話で話をしたなんて


先生は全然知らないみたいで、いつものように穏やかだった。



先生のその笑顔がいつもよりずっと眩しく見えて


先生はいつもこんなに楽しそうな顔で笑ってくれたっけ?


と不思議にさえ思う。



あの電話があった日から初めて会う先生は


今まで見てきた先生とは違って見えた。



私の気持ちが複雑になっているからなのかな?


何も知らないってなんて幸福なことだったんだろう?


先生と交際すると言うことが


どれだけのことなのか知ってしまった今、


私はそんなに無邪気には笑えなかった。



先生がそんな私に


今日は元気ないね


と心配してくれたけれど


私はそう?そんなことないよとしか答えることしかできなかった。



今日は全然話が弾まない。


いつも見たことがない部分に目が及んだ。



そう言えば先生の家の本棚には


難しそうな本ばかりが並んでいる。



私は


一番目立たない端の部分に


「大学教授になる方法」という本を見つけてどきりとした。



「先生・・大学教授になりたいの?」





「あぁ・・その本ね・・


うん・・・。今はまだ考えていないけれど


行く行くは大学で英文学を教えたいと思っているんだ」



そう答える先生の目は


キラキラしていた。





そんな先生の輝くような表情を見て


私の胸はチクンと痛んだ。





あの女の人の言ったとおりだった。





「どうして急にそんなこと聞いたの?」


先生がそう聞いてくれたけれど


「う・・うぅん・・


なんていうか・・先生が高校の先生じゃなくなっちゃうのは


寂しいなと思って・・・。




なんだか・・・この間学校行かなくなったばかりなのに


先生の授業が懐かしいな…」



そう答えて先生に嘘をついた。



なのに


先生はそんな私をぎゅっと抱きしめて


「九条の先生じゃなくなっちゃうけれど


俺はずっと九条のそばにいるよ」


と甘く囁いてくれた。



その言葉はなんだかプロポーズのように聞こえる。



こんな甘い事を言ってもらえるなんて


本当は嬉しいはずなのに


私の心はギュッと痛くなった。




先生…わたし、どうしたらいい?






結局その後、私は上の空で


先生と何を話したのか


全く覚えていない。




ぼぉっとしたまま


先生に家まで送ってもらった。




先生に会ってみたけれど


結局余計につらくなるだけだった。




先生の笑顔が眩しければ眩しいほど辛い。




自分の中で半分答えが出かけていた。




続く


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