登場する人物、団体、名称はすべて架空のものです。


この小説は


”Obsessed with you”、


”Forbidden Affection”との


連動小説となっています。


初めてごらんになる方、お読み直しなさりたい方は


→ 小説インデックス をご覧ください





「アネキだった。」




先生は携帯を


元あったコートのポケットに押し込みながら言った。


電話の相手は桧山先生のお姉さんだった。



桧山楓さん。


先生の4コ上。


まだお会いしたことはないけれど


付き合い始めたころに先生からそう教えてもらっていた。






「お姉さんが迎えに来てって?」



私が尋ねると


先生は


「酔っぱらって終電の中で寝過して


赤羽まで行っちゃったんだって。


まったく・・・」


と呆れるように言った。



「そうなんだ・・だったら、寒いから早く行ってあげた方がいいね…


私タクシー捕まえて帰るから、


お姉さんのこと、すぐに迎えに行って。」



私がそう言って足元のかばんに手を伸ばした時、


「ね、九条、一緒に行ってくれない?」


先生が突拍子のないことを言ったので


「えぇ??」


と思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。



「実はさ、アネキにだけは、話してあるんだ。


九条のこと。


いつか会ってもらいたいと思っていたから


いいタイミングかなと思ってね。


あ、でももしご両親が心配されるようなら


今すぐ家に送るよ。


自分が寝落ちしたんだし、少し待たせるくらい大丈夫だから」



ぽかんとする私に先生が次々と言う。



「両親は全然心配しないと思うけれど・・」


「ほんと?じゃ、きまり!!」


「え?でも・・


ちょっ・・ちょっと・・待って!!


私も心の準備が・・」


「準備?全然心配しなくていいよ。


あの人、なんも考えてねーから!!


それにアネキも九条に会ってみたいって


ずっと言ってたしな」


私が目を白黒させているのに


先生はまるでお構いなしに話を進めていく。



「俺さぁ。九条のこと、誰にもしゃべれないじゃん?


でも、唯一、九条の事知ってくれているのが


アネキなんだよな・・」



先生はそう言いながら


嬉しそうにしている。




そっか・・先生も私と同じなんだ…。


私も誰かに


『この人が私の彼です!!』


って紹介したい時あるもん。




「あ・・でも・・」


先生が急に真顔になって私の顔を見た。




「九条が嫌だったら


無理にとは言わないけれど。」


そういう先生の顔は


少し悲しそう。


まるで、「嫌だって言わないで」って言っているみたい。


私はその顔に吹き出しそうになった。




だって、そんな顔されたら嫌って言えない。




「うん・・・。そうだね・・


わたしもお姉さんにお会いしてみたいかも。」




そういうと先生の顔がぱぁっと明るくなる。


まるで遊園地に連れてあげると言われた子供みたい。



「え?ほんとに?ホントにいいの?」


ちょっとしつこい位に聞く先生に


私がうんと頷くと


「じゃ、決まり!!」


と無邪気にはしゃいで


先生は車を車線へ戻した。




「九条とドライブもできるし~」


なんてすごく浮かれてる。


こんなに嬉しそうな先生をあんまり見たことがない。



今まで会うのがほとんど学校だったからかな…?



そういえば今までこんな遅い時間に


ドライブなんてしたことなかったなぁ…。



そう思うとウキウキするけれど


今から先生のお姉さんに会うんだと思うと


ドキドキもした。



_________________



楽しい時間はあっという間に過ぎて


気づくともう東京の北辺りに来ていた。



もうすぐ赤羽駅。



私は車が赤信号で止まったところで


先生が携帯を取り出して

お姉さんに電話をかけた。


「アネキ?もうすぐ着くけど、


どこにいんの?


・・・了解。


じゃ、そのロータリーで待ってて」


先生が電話を切ったのを見て、


私はカチャリとシートベルトを外した。




「え!何しているの?」


ベルトが外れる音を聞いて先生が驚いたように聞いた。



「うん・・・。私、後ろに移動する・・」



そう言うと先生は


「そんなこと気にしなくていいのに」


って言ったけれど


でも・・


やっぱり初対面の小娘が自分の弟の隣に


当たり前のように座っているのって


何となく感じ悪いと思う。



「ん~・・


でも、やっぱり私、後ろに乗る。」



そう言って私は後部座席に移動した。







私が後部座席に移動してから


赤羽駅まではすぐだった。



先生は駅前のロータリーに入ると


車をゆっくりと走らせて


お姉さんを探した。




「あ、いた。」



先生の目線の先に、


黒い毛皮のコートを纏った女性が


こちらに向かって手を振っているのが見える。



あれがお姉さん??


遠目だけどすごくきれい・・。



先生がお姉さんの前で車を止めると


お姉さんは助手席のドアを勢いよく開けて



「恭ちゃ~ん!!ありがとー!!」



とハイテンションで車の中に乗り込んだ。


恭ちゃん・・


私は聞きなれないその先生の呼び方に


先生の家族の様子を垣間見ているみたいで


少しドキドキする。






「ったく・・寝落ちすんなよ~。」



「ごめんごめん!!ちょっと飲みすぎちゃって…。


で、赤羽着いてみたらタクシー待ちの行列がすごくてさぁ・・



これは恭ちゃんしかいないって思ったわけ。


タクシーの列、まだすごいわよ。


あぁ~。恭ちゃんが来てくれて助かったー。」



そういうお姉さんは確かに少しアルコールのにおいがする。




「そう言えば、外に出てたって?


もしかして、恭ちゃんがかわいくてたまらなーい


スウィートちゃんと一緒にいたの?


もしかしてあたし、デートの邪魔しちゃった?」



スウィートちゃんて…私??



そんな風に呼ばれているなんて知らなくて


恥ずかしくなる。



「・・・・アネキ、後ろ。


九条が乗ってる」




そういうとお姉さんが慌てて後ろを振り向いて


私は慌てて「はじめまして」と頭を下げた。



「やだ・・・


気づかなくてごめんなさい!!


はじめまして。



恭祐の姉の楓です。」


お姉さんはやさしい笑顔で私にそう言うと


前を向き直って




「やっだーーー!!


もう、この馬鹿弟!!早く言いなさいよ!!」




と先生の肩をバシバシと大げさに叩いた。




「んだよ・・・そっちが入るなり



のべつ幕なしでしゃべったんだろ・・・」



先生がぶつぶつと漏らす。





「えっと・・九条・・美桜さんよね。


こんばんはー。ごめんなさいね。


こんなところまで付き合わせてー。」



と言った後、



「もぉー。恭祐、いくら自分の彼女だからって


こんな遅くまで女の子をひっぱりまわしたらだめよー。」



と先生に注意したのを聞いて




「あ、私が桧山先生に


お姉さんにお会いしたいって言ったんです。」



と言うと、



楓さんは目をキラキラさせて



「ホントーーーーーーーー??


私も美桜ちゃんにずーっと会いたかったのよ~。


すっごく嬉しいわ!!


ねぇ、恭ちゃん!!ちょっとどこかで止まって。


わたし、美桜ちゃんの隣に座りたい!!」



と言った。



え?隣に?


私はその言葉で一気に緊張してしまう。



「ったく、注文が多いなー。


後ろのるくのはいいけど


九条をいじめんなよ。」



先生がそういって車を路肩に止めると


お姉さんは


「恭祐ったら、どうしてこんなに後ろが狭い


ISなんて買ったのかしら。



まったく・・・


30代なんだから結婚を考えて


ファミリーカーにすればいいのに!!」



とぶつぶつ文句を言いながら


後ろに乗り込んだと思ったら



私の隣に座って


「狭いのにごめんね~


でも、お姉さん、美桜ちゃんとお話ししたくって~」



と明るい声で言ってくれた。



そこに空かさず先生が



「あの~。アラフォ~のそこのおばさん、


今自分のことお姉さんって言ったように聞こえたんですけど~


気のせいですか?」



とふざけて言った。



お姉さんと先生のその会話は


まるで漫才みたいで


私は思わず笑いそうになる。



「もう・・笑っちゃうでしょ~。


私たち、いつもこんなバカな会話ばっかりしてるのよ~。」



楓さんがそう言って苦笑いする。




楓さんは私に気を遣わせまいとしているのだろうか


とても楽しい会話で私を楽しませてくれた。



そして先生が小さい時の話や


家族の話をしてくれた。



そんな会話の合間合間で



先生が時々ルームミラーで後ろを覗いて


「そういうことをばらすなよ~」


とか


「いらないこと言わなくてもいいぞ~」


とかチャチャを入れる。



でも・・


私は・・・


先生の今まで知らなかった部分を


知ることができて


なんだか嬉しい。




そんな感じで会話が弾んでいた最中だった。



「ねぇ、美桜ちゃん、今度うちに遊びにいらっしゃいよ!!」




お姉さんがおもむろに切り出した。

続く



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