今日がマーケットは大納会。昨日こそ大幅安で終わったが、一時は最悪の年となりそうだった株式市場もトランプ相場のおかげで、長い下ひげの年間陽線を引いて終わりそうだ。

株価ほどではなかったが、浮き沈みの1年
 目立たないが、REIT指数も順調に回復した。
 年初にはスターリニスト中国発の株安の余波で市場が荒れ、指数も1600を割り込みそうになったが、その後は持ち直し、夏場には2000回復まで行ったが、そこが目先の天井となり、その後は金利上昇懸念で調整し、再び指数1700割れ寸前まで落ち込んだ。しかし、9月の日銀の債券指し値オペ導入の金融政策で、長期金利上昇の懸念が薄れ、再び上昇局面に入っている。
 昨日の終値は1838だったから、まずまずの戻し、ということになる。

今でも利回りは3.5%~4%も
 本日記で過去、何度か取り上げたREITは、不動産投資法人が投資家から集めた資金で実物不動産に投資し、その賃料を投資家に分配する仕組みだ。株式会社の不動産会社と異なり、ほぼ利益の全額を分配する。これによって投資法人は法人税を免除されている。
 その性質上、長期国債利回りとの見合いで、長期金利が上がれば投資妙味が薄れて値下がりし、逆に下がれば値上がりする。機関投資家は、だいたい長期金利と分配金の利差3%以上をめどに投資している。しかしその変動幅は、前述のように小さい。
 だから指数がかなり下がった時に購入すれば、値上がり期待ももてる上に6カ月ごとに分配金がもらえる。
 現在、だいたい年利回りは3.5%~4%もある。中には6%~7%以上なんてものもある。ただし、あまりにも高利回りは、後述するが避けた方が無難。

直近IPOの「みらい」のあまりにも暗い現在
 この1、2年でREIT投資家の僕が学習したことは、REITの新規公開(IPО)は買わない、ということだ。ほとんどが上場日に公募割れを起こしている。
 例えば直近で新規公開した投資法人みらいは、公募価格18万3000円のところ、12月16日の上場日には寄りつきから売り物を浴び、公募価格を6000円も下回る17万6000円での初値となった。その後も売りに押され、一時は16万3300円の安値をつけ、昨日の終値も上昇したとはいえ16万8900円と、公募価格に遠い。公募に応じた投資家は1度も利食いの機会がなかった。
 その他のIPO銘柄も、ほとんどが公募価格割れである。幸いに、僕は手出しをしていなかった。
 もっとも株と違い、半年後には分配金を受け取れるが、前記の投資法人みらいの場合、いったい何年たったら元がとれるだろうか。

テナント退去のリスク現実に
 最近のREITのIPO銘柄は、大手不動産、商社がスポンサーになっておらず、また組み入れ不動産の中身を見ても、地方の物件が多い。
 都心の一等地のマンション、オフィスビルならいざ知らず、地方や、都内でも非都心の物件は、2020年以降、値下がりしたり、テナントが退去したりする危惧がある。
 実は、このリスクを、この夏に現実に体験した。僕がポートフォリオに持っている「森トラスト総合リート投資法人」である(写真=直近の資産運用報告書)。

 



イトーヨーカ堂新浦安店退去で月額6300万円の家賃収入が消失
 資産規模は3281億円もある巨大REITだが、総資産のうち4.4%を占めるイトーヨーカ堂新浦安店の土地・建物の賃貸が解約されることが決まったのだ。イトーヨーカ堂のリストラで、同店舗は17年7月末に閉店され、退去になることが決まった(写真)。代わりのテナントを入れるか、売却しない限り、8月以降は月額6300万円の家賃収入がなくなる。

 


 それが明らかになると、中核に汐留や紀尾井町などの一等地にオフィスビルを保有するのに、森トラストは嫌気されて売られ、一時はかなり値下がりした。
 それでも僕は、手放さなかった。幸いにも早期の公募増資で買っていたので値下がりしても1度も購入価格を下回らず、しかも利回りは4%弱もあったからだ。

地方都市や非都心の不動産は将来は不良資産の恐れ
 上記のリスクは、この1、2年のIPO銘柄ではかなり高いと見るべきだ。理由は、地方や非都心地区物件が投資先の主体になっていることが多いからだ。
 イトーヨーカ堂新浦安店土地・建物の場合は、近くに年間来場者3100万人のディズニーランド・シーを控えているので、場合によってはホテルに再開発することも可能だ。ところが人口減少の地方都市の物件では、テナントが退去した場合、一挙に不良資産になる懸念がある。
 先に述べた6%~7%という高利回りは、それを織り込んでいる。
 ミドルリスク・ミドルリターンのREITも、これからは識別眼が必要になってくる。

昨年の今日の日記:「日韓外相会談、『慰安婦』問題の合意は、日本の勝利;現代史