スターリニスト中国の空母「遼寧」が、随伴する駆逐艦などとともに、25日、初めて「第1列島線」を超えて西太平洋に出た(写真)。

 

 

スクラップから再生した旧式の「空母」だが
 その後、進路を西に変え、「内海」とする南シナ海に入り、海南島の海軍基地に寄港した。
 「遼寧」は、旧ソ連の「ヴァリャーク」が、ソ連崩壊でロシア海軍がもてあまし、ウクライナ海軍に引き渡されたが、完成せず、廃艦となったものだ。
 それをスターリニスト中国が、スクラップとしてダミー会社を通じて購入したもの。中国海軍が改装して、空母「遼寧」に仕上げたが、そもそも弱体の旧ソ連で建造されたしろもので、艦載機の射出用カタパルトも装備しておらず、アメリカ海軍のニミッツ級原子力空母とは性能差で月とスッポンである。
 今年4月には訓練機が着艦に失敗し、パイロットが死亡する事故も起こしている。

 

張り子の虎でも弱小国にはそれなりの意味
 しかし性能は、アメリカの空母の比でないとしても、そこは「空母」である。
 張り子の虎でも、弱小国海軍に対しては威嚇効果は大きい。例えば、民進党・蔡英文総統の台湾の近海での演習なら、大きな意味を持つだろう。
 それが、第1列島線を初めて越えたのは、トランプ次期大統領への牽制であろう。ただ牽制なら、それなりの効果を持つ物でなければならない。
 スターリニスト中国にとって、それはやっと「遼寧」だったということだ。今頃、アメリカ海軍は笑い物にしているだろう。

 

1996年の台湾への威嚇で米海軍に空母を派遣されて中止した苦い経験
 中国海軍の最終目的は、台湾有事の際、アメリカ海軍を第1列島線以西に寄せ付けない「接近阻止・領域拒否」戦略である。
 1996年、台湾で初めての総統直接選挙で台湾独立派の李登輝氏の当選を阻もうと、「海峡九六一」と称される軍事演習を実施、ミサイル発射実験で台湾民衆を威嚇した。
 この危機に、アメリカは「インディペンデンス」と「ニミッツ」の2隻の空母を台湾海峡に急派してスターリニスト中国に強い警告を発した。
 この時、空母も持たず、台湾海峡の制海権も持たなかったスターリニスト中国は、ミサイル発射実験をやめざるをえなかった。

 

台湾併呑を狙うには空母の充実が不可欠
 つまりスターリニスト中国が軍事力による台湾の「解放」、すなわち併呑を狙うのであれば、少なくともその選択肢を持つことを誇示するのであれば、「接近阻止・領域拒否」は不可欠であり、その切り札が空母である。
 それには「遼寧」程度の空母では全く心許ないので、2隻目を大連で建造中だが、これも型式は旧式とされる。アメリカのニミッツ級原子力空母9番艦の「ロナルド・レーガン」と比べれば、大人と子どもである。
 2015年3月から上海で建造が始まったと明らかにされている3隻目の空母は、果たしてどの程度のものなのか、そこは注目であるが。

 

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