スターリニスト中国から富裕層から小金持ちたちが静かにカネを海外に逃避させている。
 トランプ氏の大統領当選後、インフラ投資増、金融への規制緩和、原油・天然ガス開発の規制緩和によってアメリカの景気上昇を期待する世界のマネーが、アメリカに一極集中的に奔流のように流入している。

 

1人年5万ドルの外貨両替制限は空文に
 売られている通貨は新興国だが、中でも人民元が大きく、トランプ次期大統領に目を付けられることを恐れる中銀の中国人民銀行は人民元防衛に躍起になっているが、下げ止まりの気配を見せない。
 資本規制の厳しいスターリニスト中国では、中国人は外貨両替を1人年5万ドルに制限されているが、そこは「上に政策あれば、下に対策あり」の中国である。富裕層から小金持ちまで、自分の資産(当然のことながら元建て)を守るために、争ってドルを買い、海外に逃避させている。

 

 

11月に急増したビットコイン売買、両替制限の抜け道となっているビットコイン
 その「対策」の1つが分かった。18日付日経新聞によると、11月になってネット上の仮想通貨ビットコインの取引が前月比50%増と急増しているという。11月のビットコイン売買高は、円換算で15兆円強となっている。売買全体の9割を占めるのは、中国だという。
 11月の売買高は、これまでの最高の3月を2割も上回り、1億7471万ビットコインだった。
 中国人が、なぜビットコインを買うか。それも11月になって急に。
 それは、資産防衛である。前述のように人民元から米ドルへの両替には、1人年5万ドルの制限がある。しかし元でビットコインを買うのは、基本的に制限がない。購入したビットコインを次にドルで売却すれば、実質的に元をドルに交換できる。
 資産を海外に逃避させる手段の1つに、ビットコインに目が付けられたわけだ。

 

香港で貯蓄性保険の購入も
 資産逃避は、他にもある。もっとも単純なのは、バッグに入れて香港に持ち出すこと。ここで人民元をドルに換えて、預金する。
 さらに香港で貯蓄性保険に加入する。保険を買う形なので、外貨交換制限がない。
 まさにあの手、この手の総動員だ。
 人民元が対ドルで年間6%も安くなっているのは、こうした資産逃避策が庶民レベルにまで広がっていることを推測させる。

 

17カ月連続の海外への海外への流出で累計流出額は5000億ドル超
 トランプ氏の当選前から、スターリニスト中国からの資金逃避は続いていた。中国の統計に表れるのは、銀行を介しての両替だが、それでも11月まで17カ月連続で資金が海外に流出している。累計流出額は、5000億ドルを超えている。まさに奔流のような、資金逃避である。
 放置すれば、国内の株価がさらに下がり、物価高で成長にもブレーキをかけるので、人民銀行は、元買い・ドル売りの為替介入を余儀なくされている。売るドルの原資は、外貨準備で、その大半はアメリカ国債で運用されている。

 

3兆ドルすれすれに減った外貨準備高
 そのためスターリニスト中国の外貨準備高は、このところ急減している。
 中国人民銀行の7日の発表によると、11月末の外貨準備高は前月末より691億ドル少ない3兆516億ドルとなった。2011年3月以来、5年8カ月ぶりの低水準となった。減少幅も、人民元が急落した今年1月以来の大きさだ。
 スターリニスト中国の外貨準備高のピークは2014年で、一時は4兆ドル寸前まで積み上がっていた。それが3兆ドル割れ寸前にまで減っているのだ。この間、1兆ドルもの外貨が流出した。その中に富裕層の資産逃避がかなり含まれているのだろう。
 外貨準備高の激減は、スターリニスト中国の保有する、世界一安全な運用先であるアメリカ国債の保有高の減少となって現れている。

 

人民元防衛にアメリカ国債を売る当局
 アメリカ財務省の15日の発表では、10月の中国の米国債保有額は1兆1150億ドルと6年余りぶりの低水準になった。減少は5カ月連続で、10月までの1年間の減少規模は1392億ドルと、12カ月ベースで過去3番目の大きさを記録した。トランプ氏の大統領当選は11月なので、来月の発表ではさらに米国債保有高は減っているはずだ。
 おかげでこれまで国別保有高でトップだった地位を滑り落ち、日本の保有高の1兆1320億ドルに久々に抜かれ、2位に転落した。
 これまでスターリニスト中国は、豊富な外貨準備と米国債保有高を基に、弱腰オバマ政権に陰に陽に「国債を売るぞ」と脅しをかけていた。しかしこれほど減ると、もう脅しも通用しない。トランプ次期大統領は、経済面からもスターリニスト中国からフリーハンドを手にすることになる。

 

偽装数字で取り繕っても信用されず
 さて、こうした現象の物語るのは、スターリニスト中国の共産党幹部を含めた富裕層は、自国の将来を信用せず、不安をつのらせているということだ。小金持ちは、自分の金の目減りを心配している。
 今年1月、スターリニスト中国は大幅な人民元安と株暴落に見舞われたが、習近平らの必死のテコ入れと数字偽装で6.5%成長を成し遂げた(と称している)。
 だが膨張する一方の不透明な地方融資平台、積み上がる民間負債と不良債権など、スターリニスト中国の経済を取り巻く闇は深まるばかりだ。
 カネがスターリニスト中国から逃げ去っていくのも、当然かもしれない。
 15日には国債先物がストップ安になっている。

 

昨年の今日の日記:「フィンランド(超短期)紀行1;タリン港からフェリーで約2時間でヘルシンキへ」
昨年の昨日の日記:「フランス地方選で躍進した右派、国民戦線(FN)の示した欧州政治風土の変化」