トランプ氏が大統領に就任した後の対中国の関係が予見されるような小事件だった。15日、南シナ海のフィリピン沖の公海上でアメリカ海軍の調査船「バウディッチ」(下の写真の上)が運用していた小型無人潜水機(下の下の写真=中国に強奪されたものと同型機)が、スターリニスト中国海軍の艦船に盗まれた事件である。

 

 

 

公海上での調査に強奪の海賊行為
 アメリカ海軍が調査を行っていたのは、フィリピン、スービック湾から約90キロの公海上で、スターリニスト中国が不法に主張している「九段戦」よりも外側だった。
 つまり中国海軍は、いかなる理由があろうとも、無人潜水機を拿捕する根拠がない。海賊行為、そのものである。
 「バウディッチ」は、同海域で2機の無人潜水機を使って、海流などの通常の調査を行っていたが、そこに数日間、中国艦船がしつこくつきまとっていたという。そして無人潜水機を回収しようと近づくと、バウディッチを追尾していた中国海軍の艦船が強引に割り込み、小型艇を投入して、中国人乗員が2機のうち1機を奪っていった。

 

スターリニスト中国には計算外?
 スターリニスト中国にすれば、「自国の内海」と称している南シナ海で軍事データを取得しようとしていると睨み、データを盗もうとしたのだろう。
 ところが、媚中派オバマを心よしとしない国防総省が、これを公にして、「違法に奪った。返せ」と明らかにしてしまった。
 軍事機密でも何でも無い無人潜水機を奪った海賊行為が世界に公になってしまったことは、スターリニスト中国にも計算外だったに違いない。オバマだったら何も言わない、とたかをくくっていたのだろう。
 そこで、慌てて「返還」を表明した。ただこれも計算外だったろうが、そこにトランプ次期大統領からの非難が飛んできた。

 

「奴らにくれてやれ!」
 「中国はアメリカ海軍の潜水機を国際水域で盗んだ。前代未聞の振る舞いだ」と、自身のツイッターで批判、さらにその後で、「彼らが盗んだ無人潜水機など要らない、と中国に言うべきだ――奴らにくれてやれ!」ともツイートした。
 これより前の17日夜、中国国防省は「適切な方法を通じてアメリカに潜水機を引き渡す」と発表していた。もしアメリカ側が受け取らなければ、スターリニスト中国は海賊行為をずっと引きずることになる。
 それにしても海賊は、ただ返すだけでは足りず、捨て台詞もさすがである。彼らは「アメリカ側が一方的に騒ぎ立てたのは不適切であり、問題解決の助けにならなかった」とアメリカを非難したのだ。盗まれた被害者が「返せ」と主張するのは正当なのに、奴らは「黙っていろ」、と逆ねじをくわせたのだ。

 

一方的な海賊行為に次は反撃
 さらに「中国沖(この文言に注意。スターリニスト中国の海岸線からはるか離れたフィリピン沖である)で、偵察活動や軍事的調査を繰り返していることに断固として反対し、停止を求める」とも凄んでいる。
 彼らの言い分を聞いてしまえば、まさに南シナ海がスターリニスト中国の内海であることを認めることになるから、トランプ次期政権は絶対に認めないだろう。
 アメリカ海軍調査船の「バウディッチ」は、武装していた。スターリニスト中国が次も海賊行為を行えば、攻撃を命じるだろう。
 彼らは、媚中派オバマのもとで、何をやっても許される、と思っていたようだが、危険な火遊びはここまで、次はないことを知るべきだ。

 

重要性は高まるアメリカ海軍の「航行の自由」作戦
 そしてこのことは、南シナ海を航行する日本のタンカーなどの商船へも教訓となる。彼らは、些細な行為で、いつでも積み荷を盗むかもしれない、と。
 しかし真に危惧すべきは、「自国の内海」視する彼らの行状である。南シナ海を航行する日本商船を臨検し、いつでも自国領海内まで連れ去ることもありえる。口実は、いくらでも付けられるのだ。
 アメリカ海軍による「航行の自由」作戦の重要性は、ますます高まるのである。
 
昨年の今日の日記:「北朝鮮劇団の北京公演、ドタキャン帰国に見られる独裁国家間の相克と命をかけた抵抗の悲哀」