エチオピアの航空便は、本当に当てにならない。
 成田空港からのアジスアベバへの出発便の予定が唐突に1時間繰り上がり、しかしバスの時間の関係で1時間半も前に空港に着いたのに、結局の出発が当初のほぼ予定どおりとなったことは、本紀行の第1回で述べた。


メケレからアジスへの飛行機、全く来ず
 帰国に際し、メケレからアジスアベバ空港に向かう便が、僕たちのバスが空港に予定どおりに到着したのに、折り返しの飛行機が全く来ず、しかも情報すらない、という事態となった。
 こんな時は、空港やエチオピア航空機の職員に何を聞いても、はかばかしくない。添乗員氏が知らせてくれたのは、「アフリカ連合(AU)」の重要会議が明日に控えているため、エチオピアの空港網は大混乱だ、ということだけだ。


飛んだのは3時間以上も遅れて
 僕たちは、この日、アジスアベバで最も重要な国立博物館見学の予定があった。それがキャンセルならまだいいが、夜に出発予定の日本への帰国便に間に合わないのではないか、という想像だにしたくない懸念だった。
 待つこと、約2時間、やっと折り返しの飛行機が着陸すると、待合室で拍手が起こった。
 機内清掃などの後で僕たちが搭乗したのは、結局、12時過ぎ(写真=大遅れの飛行機のタラップまで歩いて搭乗)。予定だと8時55分出発だから、3時間以上の遅れだった。


やっと来た飛行機に搭乗

 それなのに何の説明も、お詫びの言葉もない。


ホテルの部屋の鍵穴がない!
 それ以上に、僕にとってもっとヒヤッとしたのは、ゴンダールの「フロリダ・ホテル」だった(写真)。


フロリダホテル

 添乗員氏がレセプションでホテル職員から部屋と鍵の割りふりを受け、首尾よく鍵を受け取って部屋に向かった。
 ところが、ドアの前で棒立ちになった。鍵穴がない!
 鍵の差し込み口が根元から除去されているのだ。当然、入れないし、入れたところで鍵はかからないので、安心して眠れない。
 慌ててレセプションに戻り、レセプションの職員を引っ張って部屋の前に立たせた。
 その職員、無い鍵穴の部分に鍵を差し込んで押し引きしている。鍵穴が無いのだから、ドアが開くはずもない。2、3度、試して、彼もやっと無理だと分かって、レセプションに戻り、新たな部屋の割り当てを受けた。


もし満室だったら……
 そんなすったもんだがあったから、部屋に落ちくのに、他の人より10分近く遅れた。やれやれ、と思って、バスルームのシャワー詮を捻ったら、出てきたのはお湯ではなく、水だった。
 ところで前夜に宿泊したバハルダールのホテルは、満室だと言われた(この時、添乗員氏と現地ガイド氏の2人でレセプションで長い時間がかかっていたので、たぶんダブルブッキングだったのだと推察する)。もしこのホテルが満室だったら、僕には部屋が無いことになったわけだ。水しか出ないシャワーにも、我慢するしかない、か。
 それにしても鍵穴が無く、中に入れない部屋をよくも宿泊客に割り当てた、と思うのだ。これも、アフリカ的接遇なのだろう。


お釣りの計算ができないレストランのチェック係の女性
 別のホテル――たぶんラリベラのホテル――のレストランで、食事が終わり、僕たちはそれぞれの飲み代の支払いでお開き、の段になった。
 ところがやってきたチェック係の若い女性ウエイターが、釣りの計算ができない。ぴったりと支払った人が別に何人もいて、その支払った小銭で釣りが出るはずなのに、彼女には分からない。
 ついに業を煮やした添乗員氏が計算をして、待っている僕たちにそれぞれお釣りを払った。それでも払えない段になって、フロントで両替をして来い、と命令したのである。自分から、フロントに両替に行こうともしない若い女性。ただ棒立ちのままだった。
 計算ができないのは、教育を受けていないからだろうが、そんな女性に飲み代の清算に来させるフロントもフロント、である。


間違えても詫びの言葉の1つなく
 最後に、アジスアベバ国際空港の帰国便待ちの後、ビジネスシート利用の僕と他に3人の女性が、ラウンドで一呼吸し、さあ、出発ゲートへ、という時に、ラウンジ真ん前のビジネスシート利用者専用の受付の女性パーサーが、ろくにチケットを見ることもなく、あっちへ行け、とはるか遠くのエコノミークラスの出発ゲートを指し示した。
 僕は、そうなのか、と深く疑いもせず、歩き出すと、残り3人が「○○さん、○○さん」と僕の名を呼ぶ。他のパーサーから出発ゲート入りを許されたので、慌てて僕を呼んでくれたのだ。
 僕は最前のパーサーに、もう1度、チケットを示した。彼女はニコリともせず、そして悪びれることもなく、OKと僕を通した。「ソーリー」というお詫びの言葉は、一言なく。
 これも、アフリカ的接遇なのか。


観光立国図るべきなのに道遠し
 地下資源は何1つ産出せず、あるのはコーヒー豆だけの国である(写真=伝統的なコーヒーセレモニー。まさに日本の茶道に通じる作法に則り行われる)。


コーヒーセレモニー

 観光は、将来のエチオピアの重要産業になるはずなのに、外国人観光客へのこのアフリカ的接遇は何なのか――前途の遼遠さを感じた。


昨年の今日の日記:「シリア、イラクで古文化財の盗掘と子供たちを少年兵に仕立てる『イスラム国』らテロリスト集団」