エチオピア、アファール三角地帯中部のウォラナソ=ミレ地域で、新たな猿人種が発見された、とクリーブランド自然史博物館のヨハネス・ハイレ=セラシエらのグループがイギリスの科学誌『ネイチャー』5月28日号に発表した。
 2011年3月に発見されていた顎骨化石などである。


年代と地理的分布域はアファレンシスと重なる
 年代は、地層の火山灰から350万~330万年前と推定されている。
 報告されたのは、上顎骨破片(写真下の上=2011年3月に上顎骨化石)1個体分、下顎骨やその他の破片の2個体分の計3個体分の顎骨と臼歯などで、1974年のルーシーの発見された地点からわずか35キロしか離れていない(写真下の下=「新種」猿人の化石が発見された地点を調べる研究チーム)。


アウストラロピテクス・デイレメダ上顎骨


2011年の調査風景

 ルーシーの年代は318万年前で、ルーシーの属するアウストラロピテクス・アファレンシスは390万~290万年前なので、新発見化石は、アウストラロピテクス・アファレンシスと時間的にも空間的にも重なり合う。
 それでもハイレ=セラシエらは、上顎骨の頬に近い部分の形状などに違いがあることなどから新種と判断、「近い」という意味の現地語「deyi」と、「親戚」という意味の現地語「remeda」を組み合わせた種小名の「アウストラロピテクス・デイレメダ(Australopitecus deyiremeda)」と種名を与えた。


アファレンシスと食性の違い?
 アウストラロピテクス・デイレメダは、発見・報告者らも指摘するように、アウストラロピテクス・アファレンシスとケニアントロプス・プラティオプスと同時代者になり、「同時期に少なくとも2種が共存しており、アフリカ東部における初期人類の多様性を裏付けた」ことになる。この約180万年後にトゥルカナ湖東岸でホモ・ハビリス、ホモ・ルドルフェンシス、ホモ・エレクトス、パラントロプス・ボイセイの4種が共存していたことを思えば、不思議はない(ホモ3種を大きくホモ・エレクトスと包括すれば2種)。
 デイレメダの歯は歯根の構造がアファレンシスと違っていて、全体に小さいため、両者に食性の違いがあり、共存していたとも想定される。
 ただかつてハイレ=セラシエとアファールで調査活動を共にしていた諏訪元・東大総合研究博物館教授は、「今回の顎と歯はアファレンシスと別種とされるほど大きな違いはないと考える。集団差によるものではないか」とし、彼らの見解と一線を画している。


デイレメダ?の足の骨は、把握能力に富む
 さらにもう1つ興味深いのは、今回デイレメダの発見された場所から非常に近い所で09年に見つかった340万年前頃の謎めいたホミニンの足の骨だ。この骨の持ち主は、440万年前のアルディピテクス・ラミダスのように、物を掴むことができる柔軟な足と親指を持っていたと考えられる。
 この足の骨がデイレメダと同種とすれば、彼らは常習的な樹上生活者だったとも言えるだろう。


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