朝鮮総連中央本部ビル(東京都千代田区)をマルナカホールディングスから山形県酒田市の不動産業者に転売した仲介者が分かった。
 日本人拉致を世界で初めて報じた栄光を持つ産経新聞が報じた。参議院香川選挙区で自民党公認で2期当選し、2010年の選挙に立候補せず引退した山内俊夫(68歳)である。


参院本会議で造反し、郵政民営化法案に反対
 山内は、産経の取材に対し、「拉致被害者が帰国するためには、総連本部問題の前進が必要と考えた。マルナカが売却を考えているという情報があり、『仲介させてほしい』と申し出た。昨年5月くらいのことだ」と、白々しい弁明をしている。
 この弁明をとうていまともに受け止められないのは、彼の経歴と若すぎる引退を見れば分かる。変節漢なのである。
 山内が改選に当たる2010年7月選挙に出ないと表明したのは、前年の9月。それより前の05年8月の参院本会議で郵政民営化法案に反対し、否決に追い込んだ。これにより当時の小泉首相が「郵政民営化は是か非か」を問う衆議院解散を行ったことは、よく知られている。


自民公認得られず、政党交付金目当てに離党・移籍
 この選挙で、小泉政権は、衆議院で郵政民営化法案に反対投票した自民党議員を公認せず、その選挙区に刺客を立てた。結果は、小泉自民党の大勝で、無所属で立たざるを得なかった重鎮以外は、刺客候補の前にほとんど落選した。
 これを見て山内は、次の改選期に自民党公認を得られないと観念したのであろう。それが、09年の引退表明である。時に61歳、政治家としては働き盛りである。
 ただし山内は、そのまま自民党に留まることはしなかった。


山内俊夫

 同年12月25日、自民党からの離党と、改革クラブへの入党意志を表明した。改革クラブが政党要件を喪失し、政党助成金を受け取れなくなるために、年末ギリギリの移籍であった(写真上)。


不動産会社の経営者に転身
 ところで政治家とは、どんな人種か。野心が人一倍強い者たち、というのは間違いなかろう。
 山内の場合、61歳の若さで政界から引退した。野心は、砕かれた。
 その後の長い余生は、「元参院議員」の肩書を活かして金儲けに専念することにしたのではなかろうか。不動産会社の経営者として、ブローカーとして暗躍する。
 今回、産経の記者に対して、「拉致被害者が帰国するためには、総連本部問題の前進が必要と考えた」と答えているが、山内が議員時代に拉致問題解決に奔走したという事実はない。とってつけた言い訳、に過ぎない。
 そして高松市に本社があり、選挙区の関係で同社の前社長とも親交のあった山内は、「金になる」と嗅覚を働かせたに違いない。


マルナカホールディングスは落札額の2倍で転売
 マルナカホールディングスも、22億円で本部ビル落札したはいいが、実のところは処置に困っていたに違いない。自ら再開発し、賃貸ビルを営もうにも、高松が本社で足場が弱い。それ以前に、名うての朝鮮総連をビルから退去させるという長い裁判闘争が待ち受ける。その間に、22億円は塩漬けになる。
 都内に本社を置き、全国展開する有名大手不動産会社や生保が入札に加わらなかったのも、トラブルのタネを抱え込みたくなかったからだ。
 だから、マルナカホールディングスは自ら再開発する意思は最初からなかった、と思う。
 山内とマルナカホールディングスの思惑は一致した。ほとんどペーパーカンパニーに等しい(資本金300万円、年商1900万円)、遠い山形県酒田市の不動産会社「グリーンフォーリスト」を介在させ、事実上、朝鮮総連に本部ビルの継続使用の途を開いた。グリーン社への売却額は、44億円という。


山内に巨額の仲介手数料
 マルナカホールディングスは、グリーン社への転売により、1年弱の短期間で2倍という売却益を得た。山内は、仲介で「適正な手数料」を得た、という。普通の不動産の仲介手数料は、双方から3%+6万年円をもらう。おそらく1~2億円の手数料を得たのであろう。
 年商1900万円のグリーン社が、44億円もの買い取り資金を調達できたとは思えない。金を出した人物・法人は、別にいるはずだ。
 グリーン社は朝鮮総連と関係が深い、とされる。購入資金は、総連が用意したのだろう。実際、これより数日前、都内文京区の「朝鮮出版会館」の土地・建物が、大阪市の不動産会社に売却されていた(売買は23日付)。出所の一部または全部は、この売却資金の可能性が高い。これは、もはや仮装売買である。
 これにより朝鮮総連が、現在の本部ビルに居座ることは決定的になった。


朝鮮総連は過去にも仮装売買
 朝鮮総連は、07年にも、本部ビルの土地・建物を元公安調査庁長官の緒方重威が代表取締役を務める「ハーベスト投資顧問株式会社」に仮装売買し、整理回収機構による資産の差押を逃れようと図った。
 今回も、整理回収機構の628億円の債務返還請求に応じられず、結果的に競売となったことで、朝鮮総連は巨額債務を免れ、わずか44億円(グリーン社の購入価格)で居座りに成功した。ちなみに整理回収機構には、1.4兆円もの公的資金が投入されていた。それは、我々の税金である。
 狡猾な手段と引き延ばし工作で目的を達した朝鮮総連と、それを手助けした山内、それにマルナカホールディングスに強い抗議の意思を示す。


安倍政権を疑った不明を謝罪
 こうした「裏工作」での落着が見えてきたから、北朝鮮ならず者集団は日朝政府間協議の前に主張していた朝鮮総連本部ビル問題を引っ込めたのだろう。
 リブパブリは1月30日付日記の日記、「な、なんと、朝鮮総連本部ビルに朝鮮総連が居座る!?、マルナカから極めて不明朗な転売が明るみに;社会」で、安倍政権が北朝鮮ならず者集団と裏取引したのでは、と疑いを表明したが、誤りであった。一瞬たりとも安倍政権を疑った不明を恥じ、安倍政権と本日記の読者に謝罪する。


昨年の今日の日記:「南部アフリカ周遊:ジンバブエのヴィクトリア・フォールズ空港の入国審査は時には2~3時間待ち」