2月14日(木)にNHK「クローズアップ現代」で放送された『ハンターが絶滅する!?~見直される“狩猟文化”」は、最近、増えているシカ、イノシシ、クマなどの野生動物被害の背景の1つであるハンター(狩人)が減少していることを取り上げていた。
ハンター人口は35年間で3分の1近くに激減、そして進む高齢化
ハンターは激減する一方で、今や「絶滅危惧種」と自嘲する猟友会に集まるハンターは、ほとんどが60歳以上の高齢者だ。元サラリーマンや自営業者など。
番組の冒頭で、神奈川県の要請で丹沢山中でシカの「管理捕獲」という駆除のボランティアとして登場した県猟友会のメンバーも、全員が60歳以上。行動力がイマイチ劣るから、駆除したシカは、目標の半分の13頭だったという。
射殺したシカは、肉を利用する技術・手段がないので、地面に埋めていた(なんとももったいない話である)。はるかな祖先の縄文人が知ったら、激怒したろう。
番組によると、都道府県から狩猟免許を得たハンターは、確かに激減と高齢化が同時進行していることを明確に示した。
1975年のハンター人口51.8万人が、2010年には3分の1近い19万人にも減る一方、かつては3割近くいた「20歳代+30歳代」の層がほとんどゼロに近くに減り、60歳以上だけが倍増している。
つまり1975年の時代の「20歳代+30歳代」の層がそのまま高齢化しつつ、定年退職者などが細々と流入して(しかし若者の加入はゼロに近く)今日に至っていることになるわけだ。
地域生態系が壊れ、農業被害だけで年間200億円以上――なのに……
ハンターの減少で、前記野生動物が増え、各地の林や草地、畑が、食害に遭っている。
樹皮まで食われて落葉樹が枯れ、草も食べ尽くされて山肌が露出し、山の保水力が失われ、土壌流出で河川から海の汚染にもつながっている。生態系全体にとって憂うべき事態だ。
農業被害も、全国で200億円以上にのぼるという。
ただ、そこから番組は、おかしな方向に流れる。
番組のタイトルで予感されたが、講習会やイベントを開いて若者にハンターへ誘い、さらに各地で駆除したシカ、イノシシは、速やかに解体処理して商品化しようという試みを紹介している。
期待したオオカミ移入という意見は、全く紹介されなかった。
今や環境省が音頭をとって自然保護のために、シカ、イノシシなどを駆除しようとしている原因は、自然林を伐採して人工林を増やし(人工林はスギ、ヒノキなので、野生動物の食物になるドングリを実らさない)、山間僻地まで開墾されてその後に農業放棄地とされたことなど人為的原因もあるが、最大の原因は、日本には生態系の頂点に立つ捕食者であるオオカミがいないからだ。
ハンター増加は事故と犯罪を増やすことにつながる
人間というハンターが今まで野生動物のポピュレーションを調節していたのが、前記のハンター数そのものの減少と高齢化の二乗の作用で、この10数年以来、ポピュレーション調節が機能しなくなった。
であれば、前に本日記でも述べたように、アメリカのイエローストーン公園で成功したように、タイリクオオカミを移入して放つ「生態学的管理法」を採用すべきだし、それこそが生態系にベストな方法である。ハンターを無闇に増やすということは、銃器を増やすことになり、銃器事故と銃器犯罪を増やすことにつながる。
昨年、山中湖南の石割山ハイキングコースを歩いていた時、山道なのに立派なフェンスが設置されていて驚いたことがある。シカの食害防止フェンスであった。番組冒頭が丹沢山系で、石割山周辺と隣接する。なるほど深刻なわけだ。
オオカミに対する根深い偏見の克服を
ずっと前、奥日光の小田代原にもシカ食害を防ぐための柵を見て、なるほどと思ったが、なぜオオカミ移入の議論が出てこないのか、不思議である。というか、「赤ずきんちゃん」などの西欧童話で不当に凶悪視されたオオカミへの偏見が、根深いのだ。
オオカミが人間を襲った確実な例は、聞いたことがない。群居性なので、オオカミは人を襲うより、シカやイノシシを襲うからだ。
一方で素人ハンターが、山歩きの人を誤射した例の方がはるかに多い。
あらためて日本の山野へのオオカミ移入の議論の開始が急がれると感じたのである。
日本の深山に精悍なオオカミが走り回っていると想像しただけで、ワクワクしてしまうのである。
写真は上2枚がアラスカのタイリクオオカミ、下がイエローストーンに移入されて増えたオオカミのパック(群れ)。
◎過去に述べたオオカミ移入論の日記――参考までに
・12年10月2日付日記:「短命確定の第3次野田改造内閣とイエローストーン国立公園のオオカミ導入の成功」
・11年2月5日付日記:「再論『日本の山野に野生オオカミの復活を願う』、はたして生態系を壊すのか」
・10年11月1日付日記「日本の山野に野生オオカミの復活を願う;オオカミと出会う日を待ち望む」
昨年の今日の日記:「IMFが中国経済に警告、成長率4%台に急減速の可能性」
ハンター人口は35年間で3分の1近くに激減、そして進む高齢化
ハンターは激減する一方で、今や「絶滅危惧種」と自嘲する猟友会に集まるハンタ
番組の冒頭で、神奈川県の要請で丹沢山中でシカの「管理捕獲」という駆除のボラ
射殺したシカは、肉を利用する技術・手段がないので、地面に埋めていた(なんと
番組によると、都道府県から狩猟免許を得たハンターは、確かに激減と高齢化が同
1975年のハンター人口51.8万人が、2010年には3分の1近い19万人
つまり1975年の時代の「20歳代+30歳代」の層がそのまま高齢化しつつ、
地域生態系が壊れ、農業被害だけで年間200億円以上――なのに……
ハンターの減少で、前記野生動物が増え、各地の林や草地、畑が、食害に遭ってい
樹皮まで食われて落葉樹が枯れ、草も食べ尽くされて山肌が露出し、山の保水力が
農業被害も、全国で200億円以上にのぼるという。
ただ、そこから番組は、おかしな方向に流れる。
番組のタイトルで予感されたが、講習会やイベントを開いて若者にハンターへ誘い
期待したオオカミ移入という意見は、全く紹介されなかった。
今や環境省が音頭をとって自然保護のために、シカ、イノシシなどを駆除しようと
ハンター増加は事故と犯罪を増やすことにつながる
人間というハンターが今まで野生動物のポピュレーションを調節していたのが、前
であれば、前に本日記でも述べたように、アメリカのイエローストーン公園で成功
昨年、山中湖南の石割山ハイキングコースを歩いていた時、山道なのに立派なフェ
オオカミに対する根深い偏見の克服を
ずっと前、奥日光の小田代原にもシカ食害を防ぐための柵を見て、なるほどと思っ
オオカミが人間を襲った確実な例は、聞いたことがない。群居性なので、オオカミ
一方で素人ハンターが、山歩きの人を誤射した例の方がはるかに多い。
あらためて日本の山野へのオオカミ移入の議論の開始が急がれると感じたのである
日本の深山に精悍なオオカミが走り回っていると想像しただけで、ワクワクしてし
写真は上2枚がアラスカのタイリクオオカミ、下がイエローストーンに移入されて
◎過去に述べたオオカミ移入論の日記――参考までに
・12年10月2日付日記:「短命確定の第3次野田改造内閣とイエローストーン国
・11年2月5日付日記:「再論『日本の山野に野生オオカミの復活を願う』、はた
・10年11月1日付日記「日本の山野に野生オオカミの復活を願う;オオカミと出
昨年の今日の日記:「IMFが中国経済に警告、成長率4%台に急減速の可能性」