実験考古学の手法で、描き方はある程度、推定がついている。まず地上に小型のひな形の絵を描き、それぞれの基点間を等しく拡大することによって差し渡し数十メートルにも及ぶ絵を描いたのだろうと推定されている。地上絵の端に杭の跡も見つかっているので、まず間違いない推定だろう。


農耕儀礼が行われたのか
 空に向けて描いたように思えるのは、神に見てもらいたいという意識があったのに違いない。
 ナスカ文明は、砂漠の文明だったが、水がなかったわけではない。すぐ東方には雪をいただくアンデス山脈が聳える。そこから枯れることのない小河川が、砂漠を潤している。
 地上絵を作った人たちは、その水を畑に引き入れ、灌漑した畑でジャガイモやトウモロコシ、カボチャ、インゲン豆などを栽培していた。
 農耕民にとって、水は命に次いで必要なものだ。灌漑するにも、水が豊富な時、少ない時の波動はあっただろう。農耕にとって死活的に重要な水を乞う儀式が行われていたことは想像にかたくない。祈る対象は、アンデスに雪と雨をもたらしてくれる神、である。
 ならば地上の人間に見えなくとも、精一杯大きな絵を描くのも、合理的なのではなかろうか。


首長が農民に富を再分配した公共事業の側面も
 一方で、地上絵制作には、先史時代の「公共事業」の意味合いもあったことも確実である。ピラミッドも、ウルのジッグラッドも、またストーンヘンジも、それぞれ墓や神殿などの性格を備えるが、建設には先史「公共事業」の意味も含まれていた。
 つまり一般農民から王や首長が穀物を税として徴収したが、それは大規模モニュメントの建設に一般農民を動員して、彼らに食物や日当を払う再分配機能で再び農民に一部が環流されたのだ。ナスカの神官を兼ねた首長も、地上絵制作に農民を動員することで、再分配を行ったのだと考えられる。


観望できただけでも幸いだったと思うしかない
 指定された座席には不満があったが、それでも有名な地上絵を見られ、しかもそれがカンバスとされた環境がいかに荒涼としていたかを観察できたのは収穫だった。
 実は、いつも晴れるナスカでも、日によっては曇ったり、砂嵐だったりで、観望に適さない日もあるのだという。そうでなかったのは、幸いだった。
 遊覧飛行の会社から、朝を指定されたのも、斜光線の方が見やすいから、に違いない。お昼頃では、日光は真上から射し、それでなくとも見難い線画は、さらに見えにくくなっていたに違いない。
 滑走路に帰着後、残りの4人は、我々が乗ってきた2機の1機に、他のツアー客と一緒に乗り込んでいった。
 我々24人は、4人が帰ってくるまで待つ。


観望後は爆睡
 幸い、バスがエアコンを運転して、開放してくれた。砂漠のど真ん中で、周りに見るものは何もない。バスに戻って、前夜の少ない睡眠を補うために、眠るしかない。
 実はリブパブリも含めて、ツアー一行のほとんどは、酔い止め薬を飲んでいた。地上絵を観望するために、セスナ機は幾度も旋回するので酔いやすい、と事前に旅行社から警告されていたからだ。
 かつてリブパブリはヘリコプターに乗り、それが何度も旋回を繰り返したために胸にムカムカする激しい吐き気を催したことがある。その時の気分は、一刻も早く地上に降りたい、というものであった。せっかくのナスカの地上絵観望で、気分が悪くなったのではしかたがないので、1錠だけ飲んでいた。そのおかげで飛行機酔いはせずに済んだが、降りたら未明の睡眠不足もあいまって激しい眠気が襲ってきた。
 バスに乗り込んだら、正体もなく眠り込んでしまったのである。
 写真は比較的よく撮れた地上絵だけ選んだ。上からサル、ハチドリ、海藻と手。マリア・ライヘの建てたミラドールも見える。キツネ、宇宙飛行士(山の中腹に描かれている)、トンボ(翼の支持板に邪魔されている)。


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