kawanobu日記/漂流してどこへ行く? 東京電力の行方 ②:終わりなき補償債務の奴隷化;ジャンル=経済 画像1

 バラマキスト民主党政府が、経済界の助言も参考にまとめつつある東京電力処理案は、事実上、東電を避難民と農漁民への補償機関化するものと言える(写真=東京・内幸町の本社)。

社債の信用維持のためにも公的資金注入は不可欠
 名称は決まっていないが、東電支援の新機構を立ち上げる。いわば「原発賠償保険機構」のようなもので、銀行の預金保護を行う預金保険機構と似た仕組みだ。
 東電と、他にも原発を持つ9電力会社(北から北電、東北電、北陸電、中部電、関電、中国電、四国電、九電、Jパワー)や原子力事業者から、新機構は毎年、一定額の保険料(か負担金)を徴収し、事故や廃炉に備える。また被災者などへ支払う補償金にも充てる。
 これを速やかに支払うために、機構は民間金融機関から政府保証付きで低利の融資を受けるほか、国からいつでも現金化できる「公布国債」を受け取る。融資金と交付国債の返済原資として、東電は機構に優先株を発行し、配当を支払う――というスキームだ。機構が優先株受け取りの代わりに東電に注入する資金は、事実上の公的資金となる。
 一時期、低級メディアに溢れた、事故を起こした東電を救済するのはけしからん、という論は、いわば私怨に過ぎない。こういう形でも東電を救済しなければ、巨額の社債がデフォルトに陥る恐れがある。すでに東電社債と国債利回りとの差であるスプレッドは、かつてない2%強も開いており、市場はデフォルトを真剣に懸念しているのだ。

金融危機を起こしてはならないのは自明
 また今回の危機にあたり、東電はメガバンクなどから2兆円超の緊急融資も受けている。東電社債がデフォルトになり、融資金の利払いが滞れば、不良資産・不良債権になる。つまりリーマン・ショック時のような金融危機の再来である。
 今回の大震災と原発事故で、東京株式市場は3月14日、15日に大暴落を起こしたが、3年前のリーマン・ショック時よりはるかに暴落幅は軽度に収まり、しかもすぐに9000円台へと急激に戻した。これは、金融危機を伴っていなかったからで、日銀が絶対に金融危機を起こさないという不動の決意で、市場にジャブジャブになるほど資金を流し続けたおかげである。今回の日銀の決断は、その意味で素晴らしかった。
 なぜなら1度、金融危機を起こすと、その後の処理の資金が巨額にのぼり、国家の破綻にも結びつきかねないからだ。そのコストの大きさと危機の広がりは、ギリシャやアイルランド、ポルトガルのEU諸国の財政支援でも明らかである。この3国の救済のためのコストは、数千億ユーロというとうてい信じられない額に達しているのだ

世界最高の社会インフラ=発送電技術と設備
 さらに東電には、世界一の停電率の低さを誇る配電技術と高効率の発電技術、そして高度技術の粋である発電所・変電所などの施設がある。経営がおかしくなれば、発電所の修繕もできず、配電網の維持管理もできなくなる。設備の維持管理ができなくなると、アメリカのように停電が頻発し、生活と産業のインフラの腐朽が進む。そうなれば製造業が日本から逃げ出し、失業が増え、国家的損失につながるのも明らかだ
 つまり、東電を破綻させるわけにはいかないのだ。「けしからん」とほざく輩は、愚かな私怨に基づくという所以である。
 しかしこの救済のツケは、消費者、社員、株主に確実に回ってくる。
 まず消費者の負担増は、避けられない。東電管内はもちろんだが、それ以外の西日本の消費者の電気料金も上げられることになろう。東電の電気料金値上げは、燃料費の割安な原発が停止し、割高な化石燃料を大量購入することになるから、これだけでも自明な理屈だ。さらに被災者たちへの補償金も、間接的に加わる。

福島の被災者の土地は自らが使わない首都圏民のための電気の供給地だった
 一部低級メディアが煽るように、電気料金値上げに目くじらを立てるのは筋違いも甚だしい。
 考えてもみよう。福島第1原発と福島第2原発のある福島県は、東北電力管内なのである。つまり福島県の被災者は、自分たちが使う電気ではなく、主に首都圏の消費者が使う電気のために原発を受け入れていて被災したのだ。むろん原発受け入れの埋め合わせのために東電は、地元自治体に多額の負担金を税金として出してきた。
 しかしこの関係を考えれば、福島県民の被災者・農漁民のために、首都圏に住む我々が補償金の一部を支払うのは当然であろう。一部のアホは、自分がジャブジャブに福島第1原発で発電した電気を使っていたことを忘れはて、東電の料金値上げを攻撃しているようだが、エゴイズムもいいところだ。

平社員も年収20%減、そして就活生には超優良職場が消えた
 東電社員・役員は、人件費削減の負担を受け入れている。25日発表の東電の人件費削減策は、これがエクセレントカンパニーなのか、と疑うほどの大きなものだった
 まず常務以上の役員は総報酬の50%削減だ。執行役員はちょっと緩和されるが、それでも40%の削減となる。役員でも、年収は2000万円を割ることになろう。
 管理職も哀れだ。年俸の25%がカット。教育費と住宅ローンを抱える世代が多いだろうから、これはきつい。
 さらに平社員約3万2000人は、年収の約20%をカットする。
 これらは一時的措置ではなく、補償が終わるまで恒久的なものになる。
 来春に予定されていた新卒1100人採用の予定も見送りだ。すでにエントリーシートを提出していた入社志望者は、取り消しとなる。新卒採用見送りは、1951年に東電が発足して以来初めてのことという。
 氷河期の続く就活戦線に、突然、超優良の就職口が消えたのは、現4年生には気の毒でならない。アホな政権のために、こうやって日本から、どんどん「仕事の場」が失われていくのだ。

さらに早期希望退職募集も
 もっともこれほどの人件費削減でも、節約できるのは年約540億円にすぎない。つまりは、頭を丸めて謹慎しますという対外的アピールであろう。
 人件費削減は、これでは終わらない。今後、早期希望退職募集などの踏み込んだ措置もとられるだろう。
 原発の事故現場の最前線で働く東電の従業員の士気が低下しないか、いささか心配である。
 最後は、株主の負担であるが、これもまた哀話に近い。これについては、次回に。

昨年の今日の日記:「クロ鳩内閣支持率最低の24%、レームダックへ;最新の日経世論調査を読む」

追記 我々は、知らず知らずして拉致被害者のことを忘却しつつあるのではないか、と反省させられた。
 解凍されることのない凍土の牢獄国家、北朝鮮に拉致・抑留されている同胞を、我々は決して忘れない。そして必ず取り戻すことの決意を新たに、下記の国民大集会にご参集下さることを願います。

 家族会・救う会・拉致議連は、平成23年5月8日(日)に、日比谷公会堂で、「生きているのになぜ助けられない! すべての拉致被害者を救出するぞ! 国民大集会」を開催します。奮ってご参加ください。総合司会は櫻井よしこさんです。
 趣旨等は救う会ホームページ(http://www.sukuukai.jp/ )をご参照ください。

と き 平成23年5月8日(日)午後2時から5時まで
開 場 午後1時(先着順)
ところ 日比谷公会堂(〒100-001 千代田区日比谷公園1-3 ℡03-3591-6388) 地下鉄霞が関駅B2・C4口、内幸町駅A7口、日比谷駅徒歩3分
訴 え 家族会・救う会役員・拉致議連役員・政府関係者・韓国拉致被害者家族会代表等
参加費 無料(会場カンパはすべて東日本大震災の被災者募金とします)