仙谷由人行政刷新担当相が18日、厚労省を文科省と合併させた上で、「子ども家庭省」、「教育雇用省」、「社会保険省」に3分割する再編案を検討する考えを明らかにした。実施時期は明らかにしなかったが、省庁の再編は民主党のマニフェストに載っていたものだ。
幅広すぎる守備範囲
厚労省の再編構想については、3分割の是非はさておき、どの政権でもいずれは取り組まねばならなかった問題だろうと思う。
橋本内閣のもとの中央省庁再編で、厚労省は、01年に厚生省と労働省が統合して誕生した(写真)。当時から、カバー領域の広い巨大官庁とされたが、統合厚労省は、福祉充実の名の下に、焼け太り的に巨大化していった。
09年度予算で、一般会計で25兆円以上、特別会計で80兆円もの予算規模をかかえる。
守備範囲も、広い。というか、広すぎる。年金、医療、介護、生活保護、障害者福祉、保育(保育園も厚労省の所管!)、労働政策、雇用政策、食品安全までを包含する。
あまりにも巨大化しすぎたため、前麻生政権でも、一時、厚生省と労働省とに分割・再整備する計画があった。エネルギッシュな舛添要一氏でも、厚労省行政は持て余し気味だった。
付いたあだ名は「ミスター検討中」
それが、ミスター年金こと、長妻昭が厚労相に就任して、欠陥が露わになった。
長妻は、年金問題には詳しいが、他の分野、医療や労働行政には、全く疎く、しかも熱意が乏しいせいか、飲み込みも遅いのだという。記者に質問されても、「検討中」という答えしか返ってこない、と評判が悪い。おかげで、付いたあだ名は「ミスター検討中」。前任者の桝添氏とは、かなりの能力差があるらしい。
そのためか、厚労省内外に、「長妻厚労相は機動的判断ができない」という声が渦巻いている。省内では、厚労相の長妻の指示すら仰げず、開店休業状態になっている部局も少なくないという。
だが民主党政権では官僚は、自在に動けない。何しろ、政治主導だから、よきにはからって事後承諾など、とうてい許されないのだ。
いずれ国家予算の半分を食う?
モンスターのように肥大化した厚労省の予算は、子ども手当新設や医療費などの社会福祉費の自然増が続くために、10年度には一般会計でさらに3兆円近く増える。この省だけが、突出して予算増を果たす。この増勢が続けば、数年内に国の予算の半分を独占するほどに肥大化するだろう。
それとともに許認可権限もさらに膨らむ。厚労官僚は高笑いで、民主党様々ではないのだろうか。
さてその巨大官庁を、アジテーターとしては一流だったが、統治能力にはそもそも疑問符が付く長妻に、舵取りを任せられるか。できないのは、就任以来の「ミスター検討中」の異名で明らかである。実際、後述するように、実務では分業に近いことが行われている。
分割論議に戻れば、2つか3つかはともかく分割再編は不可避だろう。
例えば、必要性が叫ばれながら、これまで縦割り行政で手つかずだった幼保一元化(幼稚園は文科省、保育園は厚労省)も、文科省を巻き込めば、うまくいく。待機児童の積み上がった保育園の隣に、少子化でがらがらになった小学校があるという不均衡も、是正されるだろう。
文科省は、むしろ「科学省」として独立させた方がいい。そして、科学技術立国にふさわしい目配りのきかれた省とする。
先輩が下僚として無能大臣を支える図式、はたしていつまで
現状の長妻の無能ぶりは予想外だったろうが、クロ鳩も、長妻の弱点は知っていたようだ。
彼の下に、副大臣として、細川律夫、長浜博行の両氏を配した人事から、それが読み取れる。
異色なのは、長妻の下僚に当たる細川・長浜両氏とも、長妻より先輩であることだ。長妻は、00年初当選で、現在4期目の中堅に過ぎない。ところが細川氏は、90年に衆院初当選、連続7期の労働問題に詳しい弁護士である。自公政権でも、当選7期は閣僚待望組に当たる。
一方の長浜氏は、93年に衆院初当選、後、参院議員に転じたので、通算すると5期に相当する。役割的には、長妻が全く役立たずのために、細川氏は旧労働省分野をほとんど引き受けている感じだ。
政務官の山井和則氏にいたって、やっと当選4回の同期になる。足立信也氏は、参院議員ながら、元医師だけに厚生行政を司る。
つまりこの布陣を見ると、細川氏がほとんど旧労働省を担当し、長浜氏が長妻を補佐する形になる。しかし、下に据えられた細川、長浜両氏にすれば、居心地がいいわけではない。一応は長妻が上司に当たるから、すべて長妻の決裁をあおぐ形になる。
すると、いずれは内輪揉めが起こると見た方がいい。
それによってクロ鳩内閣の人気低下を招くに違いない。
幅広すぎる守備範囲
厚労省の再編構想については、3分割の是非はさておき、どの政権でもいずれは取
橋本内閣のもとの中央省庁再編で、厚労省は、01年に厚生省と労働省が統合して
09年度予算で、一般会計で25兆円以上、特別会計で80兆円もの予算規模をか
守備範囲も、広い。というか、広すぎる。年金、医療、介護、生活保護、障害者福
あまりにも巨大化しすぎたため、前麻生政権でも、一時、厚生省と労働省とに分割
付いたあだ名は「ミスター検討中」
それが、ミスター年金こと、長妻昭が厚労相に就任して、欠陥が露わになった。
長妻は、年金問題には詳しいが、他の分野、医療や労働行政には、全く疎く、しか
そのためか、厚労省内外に、「長妻厚労相は機動的判断ができない」という声が渦
だが民主党政権では官僚は、自在に動けない。何しろ、政治主導だから、よきには
いずれ国家予算の半分を食う?
モンスターのように肥大化した厚労省の予算は、子ども手当新設や医療費などの社
それとともに許認可権限もさらに膨らむ。厚労官僚は高笑いで、民主党様々ではな
さてその巨大官庁を、アジテーターとしては一流だったが、統治能力にはそもそも
分割論議に戻れば、2つか3つかはともかく分割再編は不可避だろう。
例えば、必要性が叫ばれながら、これまで縦割り行政で手つかずだった幼保一元化
文科省は、むしろ「科学省」として独立させた方がいい。そして、科学技術立国に
先輩が下僚として無能大臣を支える図式、はたしていつまで
現状の長妻の無能ぶりは予想外だったろうが、クロ鳩も、長妻の弱点は知っていた
彼の下に、副大臣として、細川律夫、長浜博行の両氏を配した人事から、それが読
異色なのは、長妻の下僚に当たる細川・長浜両氏とも、長妻より先輩であることだ
一方の長浜氏は、93年に衆院初当選、後、参院議員に転じたので、通算すると5
政務官の山井和則氏にいたって、やっと当選4回の同期になる。足立信也氏は、参
つまりこの布陣を見ると、細川氏がほとんど旧労働省を担当し、長浜氏が長妻を補
すると、いずれは内輪揉めが起こると見た方がいい。
それによってクロ鳩内閣の人気低下を招くに違いない。