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 自称・障害者団体「凛の会」(現・白山会)による郵便割引制度の不正利用は、どうやら政界にも波及しそうな雲行きになってきた。これが明るみに出ると、鳩山代表体制で支持率を盛り返してきた民主党にまた新たな痛撃となる。

やはりあった議員からの口利き
 すでに郵便割引制度の適用団体と認める証明書を偽造した厚労省の係長は逮捕されているが、同時に再逮捕された白山会代表の倉沢邦夫(73)は、某民主党有力者の私設秘書をしていた。厚労省への適用団体への依頼にも、また旧郵政公社(現・郵便事業会社)への「低料第3種郵便物」の制度利用申請にも、秘書をほのめかす名刺を出し、また「政治案件だ」、「厚労省への働きかけを議員に頼んだ」と口にしていたという。
 実際に郵政公社への申請に際しては、全国的障害者団体でも通常は承認に10カ月はかかるのに、1カ月でスピード認可が下りていた。障害者団体幹部は「(よほどの有力者の口利きがなければ)ありえないこと」と指摘している。
 その政治家は、秘書を通じて、口利きしたことなどない、倉沢は勝手に名刺を持ち歩いたので迷惑している、と弁明している。
 しかし元私設秘書のごときの面会で、お役所の中のお役所である厚労省の役人が、職と地位を危うくしかねない、郵便割引制度の適用団体と認める文書の偽造に手を染めるだろうか。しかも、相手は素性の怪しい自称・障害者団体と来ている。
 郵政公社は郵政公社で、これまた素性の怪しい私設団体に、明らかな広告ダイレクトメールを低料金第3種郵便物にスピード認可をした。
 ここに政治家の何らかの口利きがあったと推定するのは、当然である。
 はたしてそのとおりだった。
 逮捕された厚労省係長は、前任者から「議員紹介案件だ」と引き継ぎを受け、また係長の上司だった元障害保健福祉部長(すでに退職し、某福祉団体に天下っている)が大阪地検特捜部の任意聴取で、白山会への対応について「国会議員から直接頼まれ、部下らに伝えた」という趣旨の証言をしたことが判明したのだ。

小沢と同列の「古い自民党」的体質のポリティッシャン
 その国会議員とは、民主党副代表の石井一・参院議員だろう。倉沢は、長く石井議員の私設秘書を務めていたのだから。
 この石井副代表は、今回の小沢騒動でも、小沢の親密な同僚として、常に代表辞職をする必要なしと助言してきた人物である。小沢一郎とは、自民党竹下派(経世会)以来の盟友であり(当時は衆院議員だった)、93年に宮沢内閣不信任に当たっては、羽田派のメンバーとして、小沢とともに内閣不信任案に賛成し、自民党を離党して新生党結成に参画した経歴を持つ。
民主党内には、以前にネットワークビジネス推進連盟を作って悪質なマルチ商法業者から金を受け取り、支援していた議員たちもいたが、石井副代表は03年にマルチ商法業界を支援する議員連盟を立ち上げ、名誉会長に就任していた。同じ年、マルチ業者らで作る政治団体など業界側から計450万円の献金を受けていたことも判明している。ちなみに最近は沈黙しているようだが、もともとは親北朝鮮派であり、自民党衆院議員時代の91年、全国日朝友好促進議員連盟訪朝団の総団長として北朝鮮を訪問している。
 小沢とともに、古い自民党的体質を濃厚に持つポリティッシャンである。
 1通たった8円という低料金で発送できたダイレクトメールにより、広告主や代理店から戻された利益は莫大な額にのぼったが、倉沢が懐に入れたカネの一部が石井副代表の側に流れなかったと信ずべき理由はない。議員は、決してタダでは動かないからだ。
 この推定が正しければ、時効にかからなければ受託収賄罪が成立する余地がある(時効は5年)。時効にかかっても、道義的に許されないだろう。
 小沢といい、今回の石井といい、こんな連中を党内の要職に抱える民主党は、本当に「国民目線」の党と言えるのか問いたい。