○●○●○●○●○● 2016.8.23.

表紙

応援団 NO.211


課題図書
  「ここで土になる」 感想文



◆題名   「写真が語る真実」   応援団長
 

◆本文


私は、この本を読んで、

文章以上に写真から伝わる作者の気持ちや思い、

そして主人公である尾方茂さん、チユキさん夫婦の

表情からみてとれる読み手の感情が

より強く感じるということに改めて気づかされました。

それは、作者であり写真家である著者の、思いを伝える

文と写真の二つの方法があるということに気づかされました。
 


物語は、熊本県の五木村頭地地区田口に

今も静かに立っている、

安心和尚が修行をしたという

「大イチョウ」の様子と村の変化について

淡々と語られていく。



子どもの頃のことを話す茂さんの

白黒写真の笑顔は、

思い出を語りながらうれしくなってくる喜びが

あふれでているようである。

たけのこをかかえて笑うチユキさんは、

まだまだお若いころの笑顔。

子どもたちの元気な姿や畑を耕す村人の写真は、

以前の村の活気ある生活を映し出しているようだ。
 

しかし、

そんな村にダムの建設の話が持ち上がる。

昭和30年代のころである。

ダムを造ったら、この村は水の底に沈んでしまうということから、

村人は次々と転居していってしまう。

そして、残ったのは「大イチョウ」と

尾方さん夫婦だけ。


家が取り壊され、墓地の移動も始まる。

そして、「大イチョウ」も

他の場所へ植えかえようと計画される。

枝がはらわれ、囲いでかこまれ

「檻(おり)」に入れられようになってしまう。
 

そんなある日、ダムの計画が止まる。

取り壊された家、移動させられた墓地跡が落ち着いた頃に。



そんなことがあっても尾方さん夫婦は、

いつもと変わらぬ生活を続けてゆく。



お墓も「大イチョウ」の根元に移し、

落ち葉を静かに掃除する茂さんの姿は、

「ふるさと」への愛情以外の何ものでもない。



「その写真は何を訴えているのか」

私は、自分の生き方や生活は自分たちで決めるものだ、と

叫んでいるように思えた。


ダムを造るといったり工事を中断したり、

そんな計画のない計画によってひとつの村が壊れてしまった。



これは、何が原因か。

誰のせいなのか。

こんなことが許されるのか。


「大イチョウ」の上を時代錯誤のように、

空をまたぐように通る県道の写真。


その不自然な異様な光景は、

見るものに怒りにも似た思いをいだかさせずにはいない。

私はそんな感情を抑えられなかった。



村人たちはどう思うのだろう。

そして、尾方さん夫妻はどう思うのだろう。


そう思ったとき、

先祖のお墓の前を掃除する茂さんの姿が、

静かにつぶやいているように思えた。



「わしらは、ここで、

 この大イチョウの木とご先祖さまといっしょに

 暮らしていくだけじゃ。

 ただそれだけのこと。」


「そして、この村とともに暮らし

 安心和尚のように、ここの大地になる。」



そんな尾方さん夫婦の思いを強く感じた後、

ふと気づいた。


多くの白黒写真とともに物語が語られるなか、

数少ないカラー写真は、

表紙、裏表紙、中表紙にだけ。

「緑の大イチョウ」と

「黄色の大イチョウ」が、

見事な美しさで表現されている。


一度枯れかけた大イチョウも

茂さんが肥料を与え続け、

少しずつ元気を取り戻していく。


そんな元気な大イチョウの姿から元気をもらう気がした。


ただ、それと同時に

全く変わってしまった村の様子と

梯のように通る県道の、1枚のカラー写真が、

「現実」という真実をたたきつけてくるような気がした。


私も、「自分のふるさと」について、

もう一度いろいろと深く考えてみたいと、

そう思わせてくれた一冊の本でした。


               (1346字)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 


この本の感想文、と聞いて、

「私ならどう書く」と問うた時、

頭をかかえました。

正直むつかしい題材だと思いました。


伝わってくるものは、短い文章からすぐにわかります。


しかし、一回読んだときの思いだけでは、

何か足りないような気がして、

何度も何度も読み返しました。


この2週間、

「どうやって書こうか?」と考え考え書き進めました。


私が一番気になったのは、

写真が訴えてくる圧倒的なものがあるということ。



そして、白黒写真とカラー写真の意味は

必ず筆者の意図があるだろうな、ということ。


なにより「大イチョウ」の美しさと生命力が

尾方さん夫妻の生き方・暮らし方と同じではないか、ということ。


そんなことを思ったとき、


自然の美しさと生命力、

人の思いの強さとたくましさを感じたのでした。
 

この夏、重く考えさせられる一冊になりました。


ありがとうございました。





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この本の「感想文」となると、

すべてを 書き尽くすことはできない・・・。



むつかしかった・・・!



それほどの 力強い「絵本」である、と思う・・・。



ここで土になる/大西 暢夫

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