おきなわ or OKINAWA? | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

おきなわ or OKINAWA?

【沖縄論】 

●著者 :小林よしのり
●出版社:小学館(2005.06 発行)
●価格 :¥1,680


「戦争論」「台湾論」に続く、
新ゴ-マニズム宣言スペシャルの第3弾。

まず総407ページのボリュームに圧倒される。
もちろん、中身もものすごく濃い、
ひとコマひとコマにまで、作者の思いが
ぬりこめられているような感じで、
読み終わると、ぐったりと疲れる。
読むのにこれほどエネルギーが必要なのは
この人の本ぐらいかもしれない。
しかしそれは決してイヤなものではない、
脳に、そして心に心地いい疲れだ。

沖縄と言うと、すぐに浮かぶのはやはり
リゾートとしてのきらびやかな顔である。
もちろん沖縄にアジア最大の米軍基地があり、
そのことが度々物議をかもしてきたことも
知ってはいるが、そのことが最初にこないのは、
現実に日本が国際紛争に巻き込まれている
今においても、どこか平和ボケの状態が
続いているからかもしれない。

現在の沖縄から始まった物語は、
琉球王朝の成り立ちへとさかのぼり、
沖縄の戦後史へと帰ってくる。
印象深かったのは、
沖縄が抱えるふたつの矛盾だ。
ひとつは、米軍基地の存在を忌み嫌いながらも、
基地に経済的に依存せざるをえない状況。
もうひとつは、本土との一体化を望みながらも、
かつて見捨てられたという疎外感からくる、
じくじたる思い。
この感情は沖縄が日本に返還されて数十年経つ
現在でも残っており、本土からの移住者には
素直に歓迎の手をあげられない者も多いという。
お年寄りの中には、日本政府よりも、
長年接してきたアメリカに親しみを感じている
人もいるとか。
沖縄の過去と現在、問題点など、これまで
知っているようで知らなかった、さまざまな側面を
理解するには、格好の一冊だろう。

しかし不満点もないではない。
作者自身も余裕がなかったと言っているが、
沖縄を語るに避けては通れない「沖縄戦」の描写が
なかったのは、片手落ちと言われても
仕方ないのではないか。
それと「戦争論」「台湾論」に比べて、
漫画的なカタルシスという点では弱い。
全体の構成に一貫したものがあまり感じられず、
一本の線ではなく、
テーマが点在しているような印象なのだ。
もちろん本書は、世間一般の漫画とは種類の違う
ものだが、漫画という表現手段を用いている以上、
その中に入りこみ、胸の高鳴りを抑えられない。
そんな瞬間が欲しいものだ。
これは、沖縄戦が描かれていないという事とも
つながっているのかもしれない。

いずれにしろ、日本を巡る安全保障が揺らいでいる
今だからこそ、読む価値がある本であることは
まちがいない。


■個人的ハマリ度  ★★★(★5つが最高)


小林 よしのり

新ゴーマニズム宣言SPECIAL沖縄論