2005-07-31 11:44:18

スーパーサイズ、食いたくなっちゃったんだけど…

テーマ:映画
【スーパーサイズ・ミー(映画)】

<2004年・アメリカ>
●監督/モーガン・スパーロック
●出演/モーガン・スパーロック 


『ファーストフードを1日3食1ヶ月間
食べ続けると人間どうなる?』
そんなテーマのもと、監督自身が実験台となって
マクドナルドのハンバーガーをひたすら、
食べ続ける姿を追ったドキュメンタリー。

監督は映画を撮るにあたって、ルールを設定する。
それは店で「スーパーサイズ」を勧められたら、
必ず応じること。
この、日本にはないスーパーサイズというのが
ものすごい。ポテトもドリンクも、
まるでバケツかと思えるような大きさの
容器で出てくるのだ。
こんなものを日常的に食っていたら、そりゃ
肥満になるのも仕方ないわなとうなずかざるを
得ない。

いたって健康だった監督が、食べ続けることに
よってカラダに変調をきたし、20日を過ぎた
あたりには、血液や肝臓の状態を示す数値が
正常値とはかけ離れたものになり、
医者からは、このまま続ければ命の保証はない
と宣告されるまでになる。
それでも監督は食べるのをやめようとしない。
そこにあるのは、作品完成への執念か、
ひとりの男としてのプライドか。

もうひとつ驚いたのは、アメリカの学校の給食。
バイキング形式になっていて、そこには
ハンバーガーやピザなどはもちろん、
スナック菓子も置かれていて、毎日菓子と
コーラばかりを選んで、
ランチをすます子供も多いらしい。
そりゃ何のおとがめもなければ、子供は好きな
ものばかり食べるのは当然。
栄養価の計算に気を配る日本の給食事情から
すれば、信じられない状態だ。

1ヶ月の苦行を終えた監督がどうなったかは
見てのお楽しみだが、僕自身はこの映画を
見終わったあと、マクドナルドへ行きたくて
仕方なかった。普段は店の前を素通りする
だけなのに、なぜかあのハンバーガーの味が
恋しくなってしまった。
これをサブリミナル効果というのだろうか。
ファーストフードの弊害に警鐘を鳴らすのが
映画の目的のはずなのに、これは逆効果?(笑)

非常に興味深い内容で、発見も多い映画なのだが、
やや通り一遍で教育的なムードに偏って
しまったのは残念だ。
エンターテイメントの要素をもっとプラスすると、
さらにおもしろいものになったと思う。
それにしても日本でも期間限定でいいから
やってくれないかなあ。スーパーサイズ。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
レントラックジャパン
スーパーサイズ・ミー

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2005-07-30 09:33:44

スクール…ではなく、オフィスウォーズ。

テーマ:
【26歳、熱血社長、年商70億の男(本)】 

●著者 :杉本宏之
●出版社:経済界(2004.04 発行)
●価格 :¥1,470


最近、若くして成功した社長の自叙伝が本屋には
あふれているが、そのほとんどがいわゆるIT関連。
まあ、新しい業界は、必然的に起業しようとする
者にも若い人間が多くなるのだから、
それは当然とも言える。
だが、本書の社長のフィールドは不動産業界。
伝統と蓄積されたノウハウを持ったライバルが
うようよといる世界だ。
そこで、どうやって若社長は成功を勝ち得たのか?
本書に興味を持った一番の理由だ。

作者の生い立ちは、けっこうすさまじい。
父親の事業の失敗で各地を転々する少年時代。
8歳の時の交通事故で、左足が不随となる。
13歳で母を亡くし、19歳で父が蒸発。
就職した不動産会社で3年間、トップセールスを
続け、24歳で独立、
「エスグラントコーポレーション」を起業する。

エスグラントの特色はワンルームマンション
に絞った事業展開だ。しかしワンルームとはいえ、
有名デザイナーにデザインを依頼するなど、
外装、内装ともに、通常よりもワンランク上の
グレードを整え、常に100%の入居率なのだという。
入居者に人気が高くなれば、必然的にそれは
オーナーにとってのメリットになる。
なるほど、なかなかうまいやり方だと感心。

しかしこの会社が成功した真の理由は、他にある。
それは社長の強烈なリーダーシップ、カリスマ性だ。
とにかくこの社長、何かとよく泣く。
会社の決起集会で泣き、辞める社員を説得するのに
泣き、念願だったサイパンでの社員旅行のあいさつ
で泣き…。
だがそんな社長にとって、忘れられない涙がある。
起業したものの、物件は全く売れず、
銀行からの融資も下りない。倒産一歩手前まで
追いつめられた社長は、そこで気づく。
こんな状況になっても、自分はまだカッコつけてる。
全てをさらけだしていない…と。
そして、社長は社員を前に、会社の実情と自分の
ありのままの気持ちを、泣きながら告白する。
そこから何かが変わっていったのだ。

胸にハッとつきささる言葉が、いくつもあるのだが、
特につぎの言葉は印象的だ。

『心が変われば、行動が変わる。
 行動が変われば、習慣が変わる。
 習慣が変われば、人格が変わる。
 人格が変われば、運命が変わる』

組織とは結局、人である。
ひとりの人間の思い、情熱は、人を引き寄せ、
そしてそれは、さらに大きなうねりとなって、
企業を動かし、変えていく。
冷めていては、何も始まらない。
人間のパワー、可能性にあらためて
気づかされる。そんな本だ。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)


杉本 宏之

26歳、熱血社長、年商70億の男—倒産寸前から、劇的なV字回復を遂げた男達の闘い





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2005-07-27 06:22:51

ベン・ハーという精神。

テーマ:映画
【ベン・ハー(映画)】

<1959年・アメリカ>
●監督/ウィリアム・ワイラー
●出演/チャールトン・ヘストン、スティーブン・ボイド 他


これほどの名作の感想を書くのは、ほんとに
今さらで申し訳ないのだが、どうもこの手の
古代や中世の、いわゆるコスチューム物が苦手で、
3時間半という長さもあって敬遠していたのだ。
今回はじめて見てみて、やっぱり食わず嫌いは
ダメだなあと実感。

時はローマ帝国時代、名門の家に生まれた
ベン・ハーは、親友のメッサラに裏切られ、
母妹ともに囚われの身となる。
奴隷として戦いの場におもむいたベン・ハーは、
司令官を助けたことで、固い絆で結ばれる。
やがてローマに戻ったベン・ハーは、
戦車競技大会でメッサラを倒し、見事復讐を
果たすのだが…。

歴史大作というと、時代背景の描写に時間を
割いたり、数多くの登場人物の思惑が入り乱れ、
焦点がぼやけることも少なくないが、この映画に
関しては決してそんなことはない。
物語は常に主人公であるベン・ハーに沿って
描かれ、彼の視線で展開される。
最初から終わりまで、その視線にブレがないので、
シンプルでわかりやすく、
3時間を超える長丁場にも退屈はしない。
観客は映画が進むにつれて、どんどんベン・ハーに
感情移入していくのだ。

さんざん話には聞いていた戦車競技のシーンは、
ドギモを抜かれる迫力。
走る馬車の地響きが聞こえてくるようだ。
それにしても、人だけならまだしも、
あれだけの馬を使って、よく整然と撮影できた
ものだ。一体どれほどの訓練を積んだのだろうか。
この戦車大会で、ベン・ハーは宿敵メッサラに
打ち勝ち、復讐を遂げる。
てっきり、これで物語は終わりを迎えるのかと
思っていたら、さらなる試練がベン・ハーを襲う。
そして気づかされるのだ。実はここからこそが、
映画の真のテーマであることに。

映画の終盤は、ベン・ハーの苦悩に、キリスト教の
理念が絡まり、画面からは崇高な空気が漂う。
ベン・ハーの内に、人間のあらゆる感情が
入り乱れ、変化していく様が生々しく描かれる。
このあたりが、本作をただの歴史大作だけに
終わらせず、特別な一本にしている所以だろう。
何かベン・ハーとともに時代を生きたような、
たしかな充実感とともに、エンドマークを
見届けることができた。
名作は時代を超える。うなずくしかない。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)


ワーナー・ホーム・ビデオ

ベン・ハー 特別版



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2005-07-23 11:39:04

「松本人志監督作品」の評価は?

テーマ:
【シネマ坊主2】 

●著者 :松本人志
●出版社:日経BP出版センター(2005.06 発行)
●価格 :¥1,365


日経エンタテインメントの連載をまとめた
映画評の第2弾。
ダウンタウンの松っちゃんによる、ある意味
独断と偏見に満ちた映画の見方が満載だ。
まな板に上げられた映画は、ハリウッドは
もちろん、日本、韓国、中国、ヨーロッパ
など80本。松っちゃんはそれらを10点満点の
採点とともに、バッサバッサと切っていく。

笑いにおいて、あれだけのオリジナリティを
発揮する彼である。映画評においても、
ひとすじなわでいくわけはない。
イメージからは予想すらできないものが
高い評価だったり、反対に名作の誉れ高い
作品が最低評価だったり。
参考までに最高と最低の評価作品を記すと、

●10点
「鬼が来た」
「モンスターズ・インク」
「ペーパー・ムーン」
「ディープ・ブルー」
●0点
「モンスーン・ウェディング」
「千と千尋の神隠し」
「トリプルX」
「ロスト・イン・ラ・マンチャ」
「パンチドランク・ラブ」
「いかレスラー」

あの「千と千尋の神隠し」に0点をつけられる
とは、映画業界とのしがらみのない彼だから
できることかもしれない。
低評価の理由の一節に「子供は楽しいものを
自分で見つけ出す動物、与えてやる必要はない」
と言っている。宮崎作品のメッセージ性の強さが
肌に合わないのだろうか。
一方、同じアニメで最高評価の「モンスターズ・
インク」には、「笑いが一番素敵ということを
うたってくれたのが、すごくうれしかった」と
これまたイメージとは違う、えらく素直な
賛辞を送っている。

10人いれば10の見方があるのが映画だ。
だから、これをもとに映画を見たり見なかったり
というのは、やめた方がいいだろう。
それよりも「松本人志の映画評」という
ひとつの芸として楽しめば、その独自の視点も
十分におもしろく感じられると思う。

さて、長年のファンとしては映画評もいいけど、
そろそろ見たいんだけど、松本人志監督の姿を。
ねえ、松っちゃん。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)


松本 人志

シネマ坊主2


松っちゃん関連で、僕が最近はまってるメルマガを
ひとつ紹介します。松っちゃんのボケの実例から、
その発想を学ぼうというテーマで、笑える上に
センスも磨けるってことで、大人気です。
松っちゃんファンはもちろん、それ以外の方も
見る価値ありですよ。

【実例で見るダウンタウン松本人志のこの発想】
http://www.mag2.com/m/0000152903.html


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2005-07-20 01:50:48

戦わなきゃ!現実と。

テーマ:
【現実入門】 

●著者 :穂村弘
●出版社:光文社(2005.03 発行)
●価格 :¥1,470


著者は歌人にしてエッセイスト。
この人の本は初めて読んだが、ちょっと冷めた
ようでいて、ほのぼのとした空気も漂う
独特の文体が印象的だ。歌人らしく、
短いセンテンスの中に、心地いいリズムが波打つ。
本書は、42歳にして人生の経験値が著しく乏しい
著者が、さまざまな「初体験」に挑んだ記録だ。

ざっとその初物ずくしのメニューを並べると、
「献血」「モデルルーム見学」「占い」
「結婚パーティ」「合コン」「ハトバスツアー」
「ブライダルフェスタ」「健康ランド」
「一日お父さん」「競馬」「相撲観戦」
「部屋さがし」  などなど。

女性編集者のサポートを受けながら、
時に勇気をふりしぼり、時に意外と大胆に、
著者は未体験の世界へと足を踏み入れる。
文章はあくまでクールで、一定のトーンを
保っているのだが、それが心の動揺を
悟られまいとする著者のプライドのようで、
かえってリアリティがあったりするのだ。

さまざまな局面に出会い、乗り越える事で
経験値を高めた著者は、最後に驚くべき
行動に打って出る。
何の前ぶれもなかっただけに、
これには、ホントにびっくりさせられた!
でも、あとで見返したら、何としっかり
本の帯でネタバレされてる。
おいおい、ここはどう考えても、前もって
知らない方が楽しめるポイントだろ!

本書に興味もたれた方は、本屋で見かけても
帯を隠して手に取ってほしい。
で、カバーをかけるか、
帯は外した上で読んでほしい。
(僕は最初に帯を見たはずだが、読む時は
カバーも含めて取ってしまってるので、
帯の件は忘れていたのだ)

「初めて」は、こわいけど、どこか心ときめく。
自分も何か始めてみるかな。
そんなきまぐれを、後押ししてくれる本だ。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)


穂村 弘

現実入門



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2005-07-17 04:33:21

プロデューサーは、クリエイター。

テーマ:
【映画道楽】 

●著者 :鈴木敏夫
●出版社:ぴあ(2005.04 発行)
●価格 :¥1,575


いまやスタジオジブリの社長にして、宮崎駿作品の
すべてをプロデュースする鈴木敏夫氏が、
その生い立ちにはじまり、映画への思い、
宮崎駿との出会い、そしてプロデューサーの仕事
まで、幅広く語りおろしている。

鈴木さんといえば、映画の記者会見などで、
宮崎監督の隣で、眼鏡に口ひげをたくわえ、
親しみやすい笑顔でいる姿が思い浮かぶ。
口ベタで気難しい宮崎監督に変わって、
弁説もさわやかに、映画のコンセプトやねらいを
語るその様子は、まさに有能なプロデューサー
そのものに見える。

本書を読むと、そのことがまちがいでなく
それ以上に、彼が本物のプロデューサーである
ことに気づかされる。
中に鈴木さん手書きの映画の制作スケジュール表が
掲載されているのだが、細部の細部まで漏れが
ないよう、入念に計算されたその一覧を
目にすると、プロデューサーがやらねばならない
膨大な仕事量が想像でき、思わずうなってしまう。

しかし鈴木さんが行うのは、そのような制作管理面
だけではない。パンフレットの構成を練り、
宣伝コピーを考え、予告編の絵コンテまで
切ってしまう。(これがけっこううまい!)
なんと「ハウルの動く城」のタイトルロゴは、
鈴木さんの手によるものだとか。
もともと「アニメージュ」の編集長出身という事も
あるのだろう。プロデューサー業の全てのベースに
あるのは、多分にクリエイティブな視点なのだ。

印象深い言葉があった。
宮崎監督が再三口にするのが、
「今の若いアニメーターは
動きがかけなくなった」。
例えば、ごはんを口にかき込むシーンが描けない。
理由は、そんな経験がないから。
肉体が動く記憶や経験を持たない人間が増えてる
ことは、アニメの未来にも深刻な影響を
与えるだろうと鈴木さんは述べている。

単なるアニメ、映画の世界だけにとどまらず、
世界から見た日本文化、そして日本人とは?という
点についても考えさせられる内容になっていて、
読みごたえがある。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)


鈴木 敏夫

映画道楽



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2005-07-13 10:03:36

バーチャルの中の、リアル。

テーマ:
【女子アナ失格】 

●著者 :薮本雅子
●出版社:新潮社(2005.05 発行)
●価格 :¥1,365


少々過激なタイトルにつられて読んでみた。
著者は元日テレの女子アナ。
そういえばそんな名前のアナウンサーいたなあと
いう程度の認識で、顔写真を見ても、
入社数年目に、他の女子アナ2名と「DORA」
というユニットを組んでCDデビューも果たして
いたというくだりを読んでも、ああ、あったな…
という感じで、この人個人の特長などは、
まるで出てこない。
何だかその事が「女子アナ」というものを象徴
してるみたいで、おかしくなった。
テレビ画面に映っているのは、薮本雅子という
個のパーソナリティではなく、あくまで
女子アナという鎧をかぶった仮の姿なのだ。

前半はまさに女子アナとしてのピークを
迎えるまでの、彼女の生い立ちが書かれている。
驚いたのは、アナウンサーになる以前、
中学時代にアミューズと契約し、アイドルとして
デビューしていることだ。
しかしストレスから拒食と過食をくり返し、
夢やぶれて帰郷する。
その後、女優の夢を捨て切れず、
再び東京を目指し、早稲田大学に合格。
プロダクションに入って、
リポーターの仕事をしながら、方向転換し
今度は女子アナを目指す。
すると、すんなりと日本テレビに内定。
「DORA」を結成し、あっという間に
アイドルアナとして人気者に!
と、なんだかんだいって、この人、
やりたいことは全部実現しているのだ。
運がいいのか、
本人のパワーが道を引き寄せるのか。
一応「当時、そんな自分の姿に迷っていた」という
記述もあるのだが、やっかみもあって、
「ほんとかよ?」とひとり毒づいていた。(笑)

しかし後半は、ガラリと空気が変わる。
アナウンサーから報道局に異動した作者は、
ハンセン病と出会い、
その報道にのめり込んでいく。
忙しい合間をぬって、
施設を訪ね、患者に話を聞き、
局へその報道の必要性を訴えていく。
やがてハンセン病をめぐる訴訟は、世論を巻き込み
国を動かす大事件へと広がっていく。
そして、裁判は国の敗訴の形で幕を閉じる。
と、ここで作者はまたしても驚きの行動に出る。
仕事先で知り合った自衛官と交際わずか
2ヶ月で結婚、日テレを退職したのだ。
現在は2児の母として育児に追われながら、
次の目標を探しているのだという。

うーん、読み通してみて、
そのジェットコースターのような道のりは
十分おもしろかったのだが、
この人がどういう人なのかについては、
やっぱりよくわからなかった。
もしかすると、画面の中の彼女ら女子アナに漂う、
正体不明のフワフワとしたバーチャル感の
中にこそ、案外ほんとのリアルが潜んで
いるのかもしれない。


■個人的ハマリ度  ★★★(★5つが最高)


藪本 雅子

女子アナ失格



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2005-07-11 12:02:15

おきなわ or OKINAWA?

テーマ:
【沖縄論】 

●著者 :小林よしのり
●出版社:小学館(2005.06 発行)
●価格 :¥1,680


「戦争論」「台湾論」に続く、
新ゴ-マニズム宣言スペシャルの第3弾。

まず総407ページのボリュームに圧倒される。
もちろん、中身もものすごく濃い、
ひとコマひとコマにまで、作者の思いが
ぬりこめられているような感じで、
読み終わると、ぐったりと疲れる。
読むのにこれほどエネルギーが必要なのは
この人の本ぐらいかもしれない。
しかしそれは決してイヤなものではない、
脳に、そして心に心地いい疲れだ。

沖縄と言うと、すぐに浮かぶのはやはり
リゾートとしてのきらびやかな顔である。
もちろん沖縄にアジア最大の米軍基地があり、
そのことが度々物議をかもしてきたことも
知ってはいるが、そのことが最初にこないのは、
現実に日本が国際紛争に巻き込まれている
今においても、どこか平和ボケの状態が
続いているからかもしれない。

現在の沖縄から始まった物語は、
琉球王朝の成り立ちへとさかのぼり、
沖縄の戦後史へと帰ってくる。
印象深かったのは、
沖縄が抱えるふたつの矛盾だ。
ひとつは、米軍基地の存在を忌み嫌いながらも、
基地に経済的に依存せざるをえない状況。
もうひとつは、本土との一体化を望みながらも、
かつて見捨てられたという疎外感からくる、
じくじたる思い。
この感情は沖縄が日本に返還されて数十年経つ
現在でも残っており、本土からの移住者には
素直に歓迎の手をあげられない者も多いという。
お年寄りの中には、日本政府よりも、
長年接してきたアメリカに親しみを感じている
人もいるとか。
沖縄の過去と現在、問題点など、これまで
知っているようで知らなかった、さまざまな側面を
理解するには、格好の一冊だろう。

しかし不満点もないではない。
作者自身も余裕がなかったと言っているが、
沖縄を語るに避けては通れない「沖縄戦」の描写が
なかったのは、片手落ちと言われても
仕方ないのではないか。
それと「戦争論」「台湾論」に比べて、
漫画的なカタルシスという点では弱い。
全体の構成に一貫したものがあまり感じられず、
一本の線ではなく、
テーマが点在しているような印象なのだ。
もちろん本書は、世間一般の漫画とは種類の違う
ものだが、漫画という表現手段を用いている以上、
その中に入りこみ、胸の高鳴りを抑えられない。
そんな瞬間が欲しいものだ。
これは、沖縄戦が描かれていないという事とも
つながっているのかもしれない。

いずれにしろ、日本を巡る安全保障が揺らいでいる
今だからこそ、読む価値がある本であることは
まちがいない。


■個人的ハマリ度  ★★★(★5つが最高)


小林 よしのり

新ゴーマニズム宣言SPECIAL沖縄論



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2005-07-07 15:15:27

誰もが、自分のドラマを生きている。

テーマ:
【友がみな我よりえらく見える日は】 

●著者 :上原隆
●出版社:幻冬社アウトロ-文庫(1999.12 発行)
●価格 :¥520


アパートから転落して、
両目を失明した市役所職員。
ホームレス同然の暮らしを送る、芥川賞作家。
容姿にコンプレックスを持ち、45年間一度も
男性とつきあったことのない女性…。
本書は、そんなさまざまな人物の日常生活を
つづったノンフィクションだ。

無理矢理にドラマチックに描こうというところが
全くないのが、読んでいて気持ちいい。
作者の目線は、常に対象とする
人物と同じ高さにある。
何かを教え諭すでもなく、同情するわけでもない。
ただ一人の人間として、その人と向かい合い、
話を聞き、暮らしを追う。
この一見傍観者のような
視点でつづられたドラマは、あたかも自分自身が
登場人物のすぐ横にいるような、
読んでいて不思議な感覚を覚える。

何気なく過ぎてゆく暮らしの中にも、
キラリとアクセントのように光る瞬間はある。
例えば、上記の45年間、男とつきあったことのない
女性は、45歳の誕生日の記念に
ヌード写真を撮ろうと思いつき、
自宅でカメラマンに撮影してもらう。
できあがった写真を見て「きれいだ」と思い、
以来、仕事中でもふと写真のことを思い出すと、
小さな幸せを感じると語っている。

誰もが悩み、傷つき、それでも毎日を生きている。
特に語ることのないように思える自分の人生も、
これはこれで、案外おもしろい
ものなのかもしれない。
読み終えて、周りの人、そして自分が
ちょっとだけ愛しくなるような、そんな本だ。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)


上原 隆

友がみな我よりえらく見える日は



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