「これは、長い間そなたを苦しめてしまった妾からの詫びじゃ… 妾が死んだ後、おそらく体から宝玉が取れるはず。 その宝玉と、王の体から取れた宝玉を、その双剣の柄に埋め込むがよい。 さすればきっと、その双剣がそなたを護ってくれる…」

「炎妃龍っ…!?」

「長い間、そなたに辛い思いをさせてしまって、すまなんだ… できればこれから先、依頼以外でナナ・テスカトリを討伐するのは、控えてくれると助かる…」

「約束する… もう、依頼以外では狩らない。」

「ありがとう… そなたの人生に… ひか… り… 」

最後まで言い終わらないうちに、炎妃龍の息は絶えた。

ツカサの瞳からは涙があふれていた。



ギルドから村長のもとへ、ツカサが帰ってくると連絡が入った。

村長は急いでネコートへ知らせ、二人で村の入口でツカサの帰りを待った。

やがて…

疲れ果てた顔をしたツカサが、ゆっくりと森の奥から姿を現した。

「おおお…! お帰り。 怪我はないか?」

村長が駆け寄ると、ツカサは座り込んで自分より小さな体の村長にしがみつき、声も立てずに泣いた。

村長もネコートも、そんなツカサをただ黙って見つめていた。

自分に殺される為だけに生きてきた…

体中切りつけられ、痛みがないはずはないのに、それでも炎妃龍は、穏やかな顔で逝った。

そんな炎妃龍を思うと、ツカサの胸は痛くてたまらない。

声も立てずに涙を流し続けるツカサを、ショットがおろおろしながら心配そうに見つめていた。



やがて時は流れ…

エンプレス一式に身を包み、流れるような動作で蒼穹双刃を扱うツカサは、その防具と剣の色から「藍の流星」と呼ばれるようになる。

一説には、炎妃龍を偲び、生涯、他の防具に袖を通さなかった、という説もあるが、定かではない。

そして…

卓越した双剣使いだったツカサが、密かに次代の黄龍に選ばれたことを、本人はおろか、村長やネコートも知らずにいた。

やがて…

黄龍となったツカサがタンジアのモガの森に姿を現すのは、それから数十年後のことである。