もう、どれくらいの時間が過ぎたのだろうか…

双剣使いには不可欠な強走薬Gは底を尽き、回復薬系も残りわずかとなっている。


ショットの奮闘で炎妃龍の角は破壊され、尻尾も切断されている。

閃光玉も使い切った為、炎妃龍を足止めできるものは何もない。

ツカサが今まで倒してきたナナ・テスカトリよりもはるかに大きい炎妃龍を相手に、ツカサはもはや何も考えずに、ただ隙を見ては切りつけていった。



そして、永遠とも思える時間が流れ…



「目的を達成しました」



腰につけた鈴から、クエスト達成を知らせる音が流れた。



「終わった… のか…!?」



ツカサが息を切らしながら立ち上がった時、炎妃龍のカラダが音を立てて崩れ落ちた。


慌ててツカサが近寄ると、炎妃龍はうっすらと目を開けた。



「ようやく会えたな、人の子よ…」


頭に響いてきた声に、ツカサは驚いてあたりを見回した。


「そなたに会える日を、妾は長きに渡り待ち続けた…」


ツカサがあたりを見回しても、声の主と思われる相手はどこにもいない。


「人の世では古龍種と呼ばれ、その中でも名前に「王」を冠する存在だけが人語を解するとは、世の中に伝えられてはおらぬ」


その言葉を聞いたツカサがハッとして炎妃龍を見下ろすと、炎妃龍はかすかに首を動かした。


「そうじゃ。 そなたに話しかけておるのは、妾じゃ」

「な、なぜ…?」

「妾は… そなたにいくら詫びても足りぬほどの仕打ちをしてしまった…」

「仕打ち…?」

「それゆえ、古龍観測隊と呼ばれる輩を使い、そなたが妾のところへ来るように仕向けた」

「仕向けた…?」

「そうじゃ。 そなたに… 両親の仇を取らせる為に…」



ポッケ村に滞在中のワンは、どんよりと曇った空を見上げた。

「今頃、ツカサさんは炎妃龍から全てを聞いているんでしょうね~」

自分の両親を殺した相手から真実の全てを聞かされる…

ある意味、これほど残酷なことはないだろう。

「ミナガルデにおわす全ての神よ… どうか、彼女を護りたまえ… 我々はまだ、彼女を失う訳にはいかないのです」

ワンは、そっと祈りの言葉をつぶやいた。





「願わくば、彼女の心が壊れてしまわぬように…」