ツカサは一度大きく深呼吸をすると、オトモのショットを見下ろした。

「行くぞ」

「はいニャ!」

重そうな鉄の扉に手をかけ、手前に引いた。



ギギギ…



扉を開けると、その奥にははるか彼方まで続く大きく広大な石作りの広場があった。

「どこにいる…?」

ツカサが目を細めて広場を見渡していると、足元のショットがツンツンとツカサのブーツを突っついた。

「ご主人さま、左の奥に何かいるニャ」

言われた方向をよく見ると…



「いたっ…!」



左の奥の方に、崩れた柱のそばから、下界を見下ろす蒼い獣がいた。

気付かれないように慎重に近寄りながら、自分強化の薬を飲む。

背中からそっと二振りの細身の剣を抜くと、目の前で交差させた。

「ショット、行くぞ!」

「はいニャ!」

「はぁぁぁっ…」

ツカサは気合いを入れて鬼人化し、蒼い獣に切りかかった。

ツカサの殺気を感じたのか、蒼い獣が振り返った。


「ギャアアア…!」


「くっ…」

蒼い獣の咆哮をまともにくらい、ツカサは耐えきれずに耳をふさいだ。

「ご主人さま、危ないニャっ…!」

「……………!?」

ハッとしたツカサが顔を上げた時、巨大な手のひらが眼前まで迫っていた。

間一髪で回転回避でよけ、改めて目の前の蒼い獣を見上げた。

「で、でかい…
さすがにいつものナナとは違う…」

一瞬、どう攻撃しようか迷ったツカサの懐から、コロコロと落ちたモノがあった。

ツカサが落としたモノをふと見た蒼い獣の動きが、一瞬止まった。

それは、ワンがツカサに貸してくれた古龍の大宝玉だった。

石作りの床に落ちた大宝玉が、淡い紫色の燐光を放ち始めた。

「やはりお前が炎妃龍かっ…」

ツカサが双剣を構えると、蒼い獣も片足を前に出し、首を少し下げると、グルルと低い唸り声を上げた。

その瞳には強い光が宿っている。

ともすれば気遅れしそうになる自分を叱りつけ、ツカサは大地を蹴った。


「ショット、お前は角を狙え! 私は横から切り込む」

「お任せニャ!」

ナナ・テスカトリは角を破壊しないと、炎の塵粉を撒き散らし、あたりに爆発を起こすのだ。

いくらG級の装備も混ぜてあるとはいえ、その爆発をまともに喰らったら、さすがにダメージは大きい。

閃光玉で炎妃龍の目をくらませ、ショットは角を、ツカサは横から乱舞を混ぜつつ、攻撃していった。