『いのちの代償』 | 本がともだち

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いのちの代償 (ポプラ文庫)/川嶋 康男

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50年近く前の大学山岳部パーティの遭難。
ただ1人生還したリーダーへのインタビューによりまとめられた、その全貌とは。



内容 「BOOK」データベースより

1962年12月、北海道学芸大学函館分校山岳部のパーティ11名は、冬山合宿に入った大雪山で遭難した。
部員10名全員死亡。
生還したのはリーダーの野呂幸司だけだった。
かたくなに沈黙を通す野呂に非難が浴びせられた。
45年の沈黙を破り、遭難事故の全貌がいま明らかにされる。





購入してからずいぶん積んでおいてしまった本ですが、読み始めると一気でした。




現在では大学生の山岳部・ワンダーフォーゲル部といった活動はあまり聞かないし、存在しているのかも謎ですが、30年以上昔には登山と言ったら大学生、というくらい大学生の登山活動が盛んだったそうです。
そういった人たちが今、中高年となって再び山に戻り、学生の頃と同じ体力があるつもりで無理をして遭難を引き起こしているという事情もあるようですが……。

この遭難と時を同じくして、愛知大学山岳部の薬師岳遭難が起こっており、そちらでは13人全員が死亡しています。
「太郎小屋に人影なし」という一報が有名な事件で、北海道の地元以外のマスコミはそちらに集中したとか。




著者はただ1人生還した野呂氏の生い立ち、ピクニックサークルとなっていた北学大山岳部を先輩方と反目してまで強く鍛え上げ、遭難により両足のショパール関節から先を失って障碍者となった後もスキーでパラリンピック出場・入賞を果たし、そこでみた全盲者のスキーに感動して盲導犬の普及活動に尽力、保険会社の優秀な営業マンから起業家への転身といった、超人的な人生をも描き出しています。


野呂氏の超人的な精神力と不屈の精神には、感動とか感心というよりも凄すぎて言葉を失うとでも言うのでしょうか、10人の仲間を死なせてしまったという負い目を逆にエネルギーに変えていることを不快に思う遺族もいるだろうなぁ……などと余計な心配をしてしまいました。

ただ、この時代の大学生がいかに精神的に大人だったか、そしていかに友情に厚かったかは強く伝わってきました。
そして野呂氏の親友・佐々木典夫氏の友情とその死に感銘を受けました。




何故もっと早く読まなかったのか、反省しています。