ロイヤルバレエ、 New Works | WITH HOPE!!

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在英14年目、イギリスの生活を愛し、楽しんでいるMiyukiです。
イギリスで細々と演奏活動をしているので、クラシック音楽の話題、日常、イギリスの姿をお伝えしたいと思います。
バレエが好きで、ロイヤルバレエの公演を主に観ているので、その感想も。

昨夜は1週間ぶりのオペラハウスでした。


 メインハウスではなくて、地下のリンバリー・スタディオ・シアターにて、ロイヤルバレエのNew Worksの公演。

 これは2月に上のクロア・スタディオで行われたDraft Worksを発展させたもの。

 今回は6人のロイヤルバレエのダンサーたちが振付けた作品を発表しました。


 『Trip Trac』 スラーヴァ・サモドゥーロフ振付 (プリンシパル、ですがもう退団したのでしょうか?)

  音楽: ショスタコーヴィチ作曲

       プレリュードとフーガ 第2番 イ短調 (プレリュードを4回繰り返し、その後フーガ)

       プレリュードとフーガ 第22番 ト短調

       プレリュードとフーガ 第15番 変ニ長調 より、 フーガ

         (プログラムに印刷されているのと若干違います。 楽譜を確認したところ、プログラムがエラーのはずです)


 マーラ・ガレアッツィ、ヴァレリー・フリストフ、メリッサ・ハミルトン、トーマス・ホワイトヘッド


 オリヴィア・コウリー、ダーウィッド・トーツェンシミエック、シャーン・マーフィー、トリスタン・ダイヤー、高田茜、ケヴィン・エマートン


 まず、ヴァレリーが舞台に立っていて、ショスタコーヴィチのプレリュードとフーガのフーガの部分で踊ります。 続いて、メリッサ、マーラ、トーマスも同じ音楽で違う振付でソロを踊りました。 同じ音楽で違う人が違う振りで踊る、ロビンズの『アザー・ダンシーズ』でも使われている方法です。

 

 マーラとメリッサはゴミ袋のようなボリュームのあるスカートをつけて出てきて、そのスカートを男性が踏んだりしながらの踊り。 ちなみに、女性は全員濃いサーモンピンクのレオタード。 その上にベージュのノースリーブを着ています。 


 アイディアとしてはおもしろい。 ただ、段々だらだらしてくる。 最初の4人のソロは興味深かったです。


 

 『Duplicity』 ルドヴィック・オンディヴィエーラ振付 (ファースト・アーティスト)

   音楽: Giulio Caccini作曲 アヴェ・マリア

ラフマニノフ作曲 エレジー Op.3-1

        Dustin O'Halloran作曲 OPUS 17


クレア・カルヴェート、平野亮一、ユフィ・チョイ、ポール・ケイ、レティシア・ストック、ベンジャミン・エラ


 これは、2月のドラフトの時、最後の、クレアと亮一さんのパ・ド・ドゥを発表しました。 今回の作品はそれの前に色々と付け足した感じ。

 男性も女性も、白のTシャツに白のパンツ。 


 最初、全員白のお面をつけてでてきます。 途中でそれを外したりしながら進みます。

 ルドの振付の言葉があるのは、最後のクレアと亮一さんのパ・ド・ドゥ。 他の部分と完成度が違いました。

 

 プログラム・ノートは無いので、勝手にいろいろと解釈をしながら観ていましたが、仮面を外した時と仮面をつけた時、人間の中身を現しているのでしょうか。


 『One Shade the More』 ヴァネッサ・フェントン振付 (ファースト・アーティスト)

   音楽: マックス・ブルック コル・ニドレイ Op.47  ピアノとチェロ版)


  ロベルタ・マルケス、スティーブン・マックレー

  リヤーン・コープ、アイオーナ・ルーツ、ヤスミン・ナグーディ、フェルナンド・モンターニョ、マイケル・ストーイコ


 舞台が明るくなると、真ん中にはいつくばって脚を高く上げたちょっとユニークな格好をしたマイケルがいます。

 全員衣裳は黒のパンツにグレー(人によりちょっとずつ色味が違う)の長袖。

 

 基本的にクラシックの振付。 いつもはもっと変わった作品を作っていたヴァネッサなので、ちょっと驚きました。

 

 ここで休憩。

 前半は、皆同じような衣裳。 昨年、一昨年に比べ、クラシックを基本とする振り付けが多いのが特徴。 ちょっと懲りすぎてしまったかな?と思うのがほとんどでした。

 出演していないダンサーたちも結構たくさん見かけました。


『Lieder』 アラスター・マリオット振付 (プリンシパル・キャラクター・アーティスト)

  音楽: ブラームス作曲 Meerfahrt Op.96-4, Verzagan Op.72-4, Die Mainacht Op.43-2


マーラ・ガレアッツィ、ギャリー・エイヴィス 


 これはバリトンの歌曲にあわせて踊られます。 衣裳は上はベルベットの黒で下はサテンっぽいもの。

 2月のサドラーズ・ウェルズでのマーラ主催のガラで上演されたものに、最初の一曲を加えています。

 

 アラスターはメインハウスでの作品も既にいくつか発表していますから、今回の6つの作品の中では極めて完成度が高い作品でした。


 リフトが多用されていますが、抑揚がある作品なので、観ていて疲れません。

プリンシパル・キャラクター・アーティストですが、今でも踊る作品で出ることもあるギャリー、リフトのホールドが観ている者に不安を与えません。


 『Don't Hate the Player, Hate the Game』 クリスティン・マクナリー振付 (ソロイスト)

  音楽: Michael Buble, Thirty Seconds to Mars, Jean Michel Jarre, Ennio Morricone


トーマス・ホワイトヘッド

 クリスティーナ・アレスティス、シャーン・マーフィー、ラーラ・ターク


 毎回ユニークな作品を発表しているクリスティン。 彼女はドラフトの時とは違うものを発表しました。

 トーマスが、スーツ姿でちっとマッツ・エック風な踊りをしていきます。 純クラシックからは離れたものです。

 

 途中、3人の女性がハイヒール姿で舞台を歩き、最後、トーマスが腹ばいになって舞台で寝た(倒れる?)後にこの3人の女性が、アップにしていた髪の毛を振りほどき、ハイヒールを脱いで、はだしで踊り、終わります。

 これは、この男性の夢の中、それとも妄想の女性たち?


 トーマスはこういうのを踊ると非常に魅力的です。


 『Hallelijah Junction』 エリーコ・モンテス振付 (アーティスト)

  音楽: ジョン・アダムス作曲 ハレルヤ・ジャンクション


 ヘレン・クロウフォード、ベネット・ガートサイド

 セルゲイ・ポルーニン、蔵健太、ジョナサン・ワトキンズ


 エリーコの作品がリンバリーで上演されるのは初めてでしょうか。 ドラフトの時にはモシュレスのピアノ曲に振付けた素敵な作品を発表したのですが、今回はこのために振り付けした作品の発表でした。


 ブルーの上下(男性のタイツというかズボンの裾がブーツカット)に、シルバーのラインが入った衣裳。 女性は同じブルーで、ホルターネックの膝丈ワンピース。 一昔前のアイドルのような衣裳。


 これは16分かかるピアノのミニマリズムの曲(録音を使用)。 終わった後、会場からは非常に複雑な拍手。

背が高めのダンサーを集め、狭い舞台でとにかく踊りまくる。 きっと、振り付けをしている最中にわからなくなってしまったのかな?というような振付。

 ダンサーの人たちは本当にハードな踊りで、観ていて変な言い方ですが、気の毒になってしまいました。

 常に動き回り、観ている方も息をつく暇が無い。 


 今までのエリーコのドラフトでの作品は結構印象に残っているものが多く、繊細な作品を作る人、というイメージがあったので、今回のは度肝を抜かれました。

 

 というわけで、昨日が初日で、明日までの3公演。 チケットがまだ残っていたから、良かったら明日の夜も観ようかな、と思っていたのですが、私は1度の鑑賞にしておきます。


 昨年は今年メインハウスでの作品を発表した、ジョナサン、リアムの作品もあったりして、かなり自分の言葉がある振り付けを観ることができたのですが、今回はクリスティンが自分の言葉がありましたが、前半は特にそれほどでもありませんでした。


 でも、普段立ち役が多いようなアーティストのダンサーが踊るのをたくさん観られたり、こうしてダンサーたちが造る新しい作品を観ることができるのは貴重です。


 振付の難しさを今回はかなり感じました。