ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番とマクミランの『コンチェルト』 | WITH HOPE!!

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在英14年目、イギリスの生活を愛し、楽しんでいるMiyukiです。
イギリスで細々と演奏活動をしているので、クラシック音楽の話題、日常、イギリスの姿をお伝えしたいと思います。
バレエが好きで、ロイヤルバレエの公演を主に観ているので、その感想も。

 昨日辺りから暖かいです。 昨日は帰りが遅くなるからコートを持って出ましたが、昼間はコートはいりません。 今日は長袖にカーディガン、いちおうパシュミナだけ持って出かけましたが、街には半袖、素足にサンダル、真夏用のワンピース、など真夏の格好の人が結構いました。 それと同じくらいダウンコートを着ている人もいるのです。 こういうところが私はイギリスが好きなところ。 

 去年、4月に日本で私にとっては真夏のような気候だったから、ノースリープで馬喰町の問屋街をうろうろとしていたら、問屋さんのおばさんに、「あなたはもう夏なの!!」なんて驚かれましたから。


 2週間あけて、来週の水曜日と木曜日に再び上演するロイヤルバレエのマクミラン振付の『コンチェルト』。 使用局はショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番。 これが頭から離れません。 やっとCDを買ってきました。 楽譜を見る為に学校へ行こう、と思っていたのですがちょっと遅くなってしまったので断念。 

 

 エリザベス・レオンスカヤが弾いているものを買ってきました。 ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲は第1番の方が人気だからこちらの方は録音も多いですが、第2番は少なめ。 レオンスカヤはロシア出身のピアニスト。 亡きリヒテルとも交友があり、リヒテルがウィーンに滞在した時には彼女の家でピアノを練習していたはずです。 彼女の演奏は昨年だったか、一昨年だったか聴きました。 この録音でも、冴えのある指先。そしてフレージング。 私にとって聴いていてとっても心地よい演奏です。

 

 まず思うのは、こうして久々にこの曲を音楽鑑賞用として録音されたものを聴くと、先日バレエで観た時よりもずっとテンポが速め。 でも、バレエを観ていると、テンポが遅いとは全く気にならなかったのです。

 

 音楽だけを聴いていても、今ではあのバレエの振付が目に浮かびます。 別に音楽とバレエが完全に一体化していなくたってよいのです。 2月のドラフト・ワークスの時、ルドヴィックが振付けた作品は、メロディーの裏側にあるものを基本として振付けた作品。 あれはあれでとっても素敵だったのです。


 ですが、こうしてこの『コンチェルト』のように、ものすごくダンサーがまさに楽譜の上を動いているような作品が私の興味をより引き立てます。 これと同じような音楽性の作品は、バランシン振付のラヴェルの『ツィガーヌ』に振付けたもの。

 

 第1楽章、ほぼピアノのソロで始まります。 男性と女性、一人ずつが舞台にとなりに立ち、二人が同じ振りで踊る。 音楽が活発になったら、そのピアノソロの部分はユニゾン(右手と左手がオクターブ違いで同じ事を弾く)だから、そのまま男性も女性も同じ振付で、動きが大きくなっていく。

 オーケストラの部分が前に出てくる場面になると、コールドのダンサーが踊り始める。

 

 ピアノソロの部分で、穏やかなメロディーは女性ソロ、力強いメロディーの部分は男性のソロ。

 ピアノが同音連打をしているところで女性はバッチュ(片足の膝を軽く曲げた状態で、軸足に何度も細かくつま先を打ちつける)。 

 

 第2楽章は非常に美しい曲。 男性はほとんどリフトをしていますが、女性の身体の動きは音楽に忠実、というよりも、女性の身体が音楽そのもの。


 第3楽章は音楽が再び活発。 ソロの女性とそれにプラスして、第1楽章と第2楽章のソロの人たち、そしてコールドのダンサーたち。 ここでもピアノソロとソロのダンサーたちをうまく連鎖させています。


 このバレエ、そのうちDVDになったら、ぜひ楽譜とあわせながらアナリシスしてみたいものです。

 

 音楽家はバレエの人たちは音楽がわからない、と良く言っているけれど、決してそうではないと思うのです。

 もちろん、クラシック音楽がわからないと思われるダンサー、振付家もいるけれど、皆が皆そういうわけではありません。


 ショスタコーヴィチの音楽は重めが多いけれど、彼はジャズっぽいものとか、バレエ・スイートとか、『馬あぶ』とか、軽快でとってもわかりやすい曲もたくさん書いています。 もちろん、音楽の世界では彼の重厚な曲の方が研究の対象になっていますが。


 音楽とバレエ、2年前に修士論文を書いているのに、私の中ではあの論文はまだ終わっていないから、今でもこうして果てしない旅が続いているのです。 やっぱり夢はいつかニューヨークへ行って、バランシンとロビンズの作品をたくさん観て、リンカーンセンター内の芸術図書館へ行くこと。 この頃は私が読みたい文献が大英図書館でさえ保有していないのですから。 


 明日からは1週間、激怒のバレエウィークになります。