この番組は、NHKの「BS 世界のドキュメンタリー」で時々取り上げるシリーズ物です。


音楽に関わっている方や、合唱をやっておられる方々はよくご存じでしょうが、私は「ギャレス・マローン」という人物は知りませんでした。


正確に言えば、数年前この番組が取り上げた第1回目のシリーズで一度見たことはありましたが、合唱団の爽やかな好青年のリーダーだなあという程度の印象でした。






先月28日から「ギャレス・マローンの職場で歌おう」の第2回シリーズが放映されています。


28日の夜遅く、風呂上りにたまたまNHK・BSを見ていて、番組にというより彼に惹きつけられ、とうとう夜中の1時まで見てしまいました。


その時は、 英国のドーバーとフランスのカレー間を航行する最大のフェリー会社で、混声合唱団をいちから組成し、数か月後に開催されるコンテストに出場するまでのドキュメントでした。



ちょうど、「EU離脱」の国民投票の結果が出て、英国が混乱している最中の放映だったので、少し異なった視点でも興味深く見てしまいました。



「ユニオンジャッ...」の画像検索結果




このコンテストは、NHKの番組HPによると、英国のカリスマ合唱団指揮者であるギャレス・マローンが、五つの会社や役所の従業員に呼びかけて、25人程度の合唱団を作り、2か月くらいの練習でコンテストを実施するという企画です。



今回の放映で参加している会社・役所は、上記のフェリー会社のほか、バーミンガム市役所、大手スーパー、消防救助局、そしてグローバル投資銀行の五つである。


それぞれの業種や社風の違いからくる、従業員の気質や思い、人間関係等の壁を乗り越えていくところも見どころである。


彼の合唱団員の選抜コンセプトは、歌唱技術や合唱団経験があるという「ものさし」ではなく、その会社や役所の全職員に、「職場の代表である」と認めてもらうことが第1。だから、彼は様々な職場に出掛けて、自ら、社員に「合唱団に入りませんか」と呼び掛けることから始める。


そして、参加希望者を集めた簡単なオーディションで、皆が知っている歌を歌ってもらい、25名前後のメンバーを選ぶ。大手スーパーでは、販売員として働く社会復帰したばかりの元受刑者もメンバーとして選ばれる。


そしてギャレス・マローンは、メンバーに選ばれた一人一人にその旨を伝えるために、また各職場を訪ね、「一緒に頑張ろう」と声をかける。


そして部署や地位、年齢、性別、肌の色、歌唱経験の有無などを超えて、ギャレス・マーロンの指導のもと、25名前後の即席の素人合唱団は、変貌していく・・・いや、彼らの中にあったものが引き出されていく・・・・



メンバーの選抜基準も、ソロシンガーの選抜も、歌唱の指導も、その基本にある考え方は、彼の次の言葉に凝縮されている。



『彼らの合唱は洗練されているとはいえません。でも語りかけるように歌うことができれば、その欠点を補える。物語を語り、しっかりと意味を伝えなくてはなりません。これは歌の経験が少なくてもできます。声の美しさも呼吸法も経験も関係ない。こういう意味なんだと、しっかり伝えることが肝心なんです』



彼は、練習曲を選ぶのにも、そのメンバーが語りかけるように歌える歌を提案します。フェリー会社の合唱団には「愛の航海」、大手スーパーの合唱団には「バーゲン・ストア」、消防救助局のメンバーには「ザ・ライジング」・・・


この「ザ・ライジング」は、「9・11」の時、救助のためにあの高層ビルに黙々と登っていき、崩れ落ちたあのビルとともに亡くなった消防隊員たちを歌った歌です。


消防救助局のメンバーは当初、「自分は歌えない」といった表情を見せましたが、最後には見事な合唱で聞かせてくれました。



「9.11同時多発テ...」の画像検索結果



その「ザ・ライジング」の歌詞の一部です。



俺の前には何も見えない

俺の後ろにも何も近付いてこない

この暗闇の中を俺は進んでいく

何も感じない

俺を縛るこの鎖以外は


どのくらい遠くに来たかわからない

どのくらい遠くに来たか

どのくらい高く登ったのか

俺の背中には60ポンドの石があり

俺の肩には半マイルの綱がある





私は、7月1日の第4回まで見ましたが、もちろん合唱団の指導者としてのギャレス・マローンの卓越した指導力には、音楽には全く素人の私に、心地よささえ感じさせるものがありました。





この要素は何だろうなと考えるうちに、「彼は人と人とのコミュニケーションで、一番大事なものを教えているんだ」と確信しました。


・相手と真摯に向き合い信頼する

・相手の話を真剣に聞く

・仲間を信じあう

・自分で気づいていない相手の素晴らしさをはっきり示してあげる

・一方、相手の間違いや努力すべき弱い部分は、はっきり伝えてあげる

・相手を知るために、相手の視線に立ち、相手と同じ靴を履いて同じ場所に立つ

・相手の家族や友人知人、職場の上司や部下との絆をさらに深める手伝いをする


などなど・・・・・最後には、見終わって、「この番組シリーズは企業の人事研修にも十分役立つ内容だなあ」と思いつつベッドに入った。




ネットでギャレス・マローンについて読んでいくと、彼は自らのことを「合唱の音頭取りで司会者で伝道者」と言っている。


2008年、彼は英国で貧困地区と言われているサウスオキシーのワイズ牧師から、自分たちの街に誇りを持てない住民たちが、お互いを知ってこの街を愛し、誇れるよりどころを築いてほしいと依頼を受ける。


彼は8か月の約束で、苦しく厳しかった歴史的背景を持つこの街に合唱団を作り、最初の公演を、街の商店街で行い、「サウスオキシー・コミュニティ合唱団は街の誇りである」と観客に知らしめたとあった。






今後のNHK・BS1の放送予定は以下の通り。ご関心のある方はぜひご覧ください。



7月5日(火)午前0時より・・・・4日(月)の24時より 

「マネーの街から心を込めて~グローバル投資銀行~」


7月6日(水)午前0時より・・・・5日(火)の24時より

「準々決勝 クラシックで競う」


7月7日(木)午前0時より・・・・6日(水)の24時より

「準決勝 ゴスペルに挑め!」


7月8日(金)午前0時より・・・・7日(木)の24時より

「優勝は誰の手に?」


~なお、7月12日(火)夕方5時より、この第2回シリーズの再放送もあるようです。