「伝わるのは愛しかないから」

というタイトルの本を図書館で借りた。


びっくりしたのなんの。


私がほぼ4半世紀かけて辿り着いた結論が、

ここに凝縮されていたからだ。


書いたのは、当時9才の少年。

しかも、脳障害児で、文字盤を指で差し、

母親がそれを読み取って、

父親がパソコンに入力するという形の本だった。


相手が(肉体年齢が)9才だからとか、

(身体的に)脳障害だから、という話を抜きにして、

それでもやっぱりくやしい気持ちはあった。


なんていうか、自分の発明はノーベル賞間違いない、

と頑張ってやってきたことだったのに、

先に誰かが発表してたと知ったような感じで・・・。


でも、すぐ思い直した。

私たち人間が向かうゴールは同じなので、

遅かれ早かれ同じ結論に辿り着くのは、

至極当たり前のことなのだ。

だから、くやしがることは、まったくないんだ。


それに、私が、苦労して

それこそ心の血を吐きつつここまで辿り着いた事自体、

すごく意味があったのだと思う。

たとえ回り道だったにせよ、私はまさに実感として

その大切なことをここまで手に入れたのだから。


早いか遅いかの差はあっても、そこへはいつか行くんだ。

そして、自分なりに私はちゃんと行きたい方向へ歩いている。

はるか前方に自分より先に進む人がいても、

気にしなくてもいいんだ、と思った。

自分のスピードで、これからも進もう。


著者の日木流奈くんの文章を読んでいると、

男の子が書いたというより、

頭も性格もいいお姉さんが書いた感じがする。


だから読んでいて、心がほんわかし、

「ありがとう、お姉さん」とか思ってしまう私なのだった。


*****


話は変わるが、ずいぶん前に

新聞の投書欄でこんな記事を発見した。


たしか高校生が書いた記事だった気がするのだが、

「今まで自分は、人が動かないでいると、

 その人は思考停止しているんだと思っていた。

 けれど、考え事をしている人もいると知って、

 すごく驚いた。」というような内容だった。


そんなこと言われたら、

ほとんど体を動かさない私なんて

傍から見たらほとんど「死んだ人」みたいだよ。^^;


立ち止まって手順を考えている人もいるのに、

見た目が動いていないから

「何をぼやっとしているんだ、手を動かせ!」

と怒鳴る人もいるが、

そういう人って、「一見動いていない人=役立たず」に

見えてしまうんだろうね。

(でも、闇雲に動いたって、しょうがない気もする。)


日木流奈くんも、脳障害で、

体を動かすことは得意じゃない。

けれど、心の中の宇宙は大きい。

ただ、アウトプットが人より難しいだけだ。


なのに、脳障害という見た目だけで、

その人は思考力も体の動きと同程度、と

捉える人のなんと多いことか。


赤ん坊だから、子どもだから、若造だから、

女だから、病気だから、年寄りだから、無名だから、

田舎者だから、外国人だから・・・などと、

何かしらのいちゃもんをつけて、

相手を自分よりも見下そうとする人がいる。


何事も、見た目だけで判断したら、いかんよねぇ。

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