「親のこころ おむすびの味」を読む。
これは、親がしてくれたことに対して子が感謝する、
という投書がたくさん載っている。

泣けるかな~、と思って、半分読んだが、

今のところ、涙の一粒も出てこないので、

「私って人でなしだろうか・・・」とちょっとドギマギする。


それにしても、これらの話で、

両親に感謝するのは良いことだと思う。

たった一人で成長したのではない。

周りのサポートあってこそ、という、感謝の気持ちは大切だ。


が、その締めくくりとして、その両親に恩返し出来なかったことを

反省したり悔やむ文章が多いのは、とても残念だ。


私からすれば、親に恩返しを考える必要はないと思う。


子どもで親が苦労するのは当たり前のことだから。


子どもを授かって、親が子と同居することって、

お互いに学び合うことなのだから、

本当なら、親としては、

「こちらを成長させてくれてありがとう」と感謝するべきだ。


なのに、「親の心子知らずで、私の苦労がちっとも報われない」

などと不平不満をこぼすのなら、それは真の子育てではない。


そういう考えに至ったときに、

私は実際、すごく親不孝だったと、今更になって思う。


とにかく、親に苦労をかけまいとばかり考えていたので、

欲しい物も欲しいと言わず、親にも甘えないようにして、

親の負担を減らす努力ばかりして疲れていた。


でもそれは、親がするべき苦労を、私がさせなかった訳であり、

親の成長を阻んだことになったのかもしれないからだ。


その点、私のすぐ下の弟は、

結婚も仕事もしないで家でゴロゴロし、

父母を未だに心配させているが、これこそ、真の親孝行。

そういう長男の姿を見て、親としてどう接したらよいのか、

親に学びの機会を与えている。本当にすごいと思う。

弟を尊敬のまなざしで見られるようになってきた。

・・・否、尊敬というのは言い過ぎた。

「尊重」だ。

弟の生き方を尊重出来るようになった。


親に心配をかけさせてこそ、子ども。

親を成長させてこそ、子ども。

そんな気がする。


さて、私には娘が二人いるが、最初は心配事が山ほどあった。


彼女らが起こす些細な事件でも右往左往し、

「どうして私がこんな目に遭わなきゃならないのだ」と

育児への不平不満が爆発していた時もあった。


けれども、ある日、

「子どもの苦労を通して、私は成長させてもらってる。

何でも引き受けてやるから、どんどん苦労させてくれ」と

思った途端、なにやら逆に、全然手がかからなくなってきた。

引き受ける気構えを教えてくれる。それが育児なのかも。

娘達が、私に対して感謝してくれなくても全然OKだ。


私こそ学ばせてもらっているので、感謝の気持ちで一杯だから。


そして、娘達も、自分たちの子どもに悪戦苦闘するのだろう。


それでいい。そうやって、引き継がれていくのだろう。


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